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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

医療安全のピアレビュー、抗菌薬の適正使用推進を評価する加算を新設―疑義解釈1【2018年度診療報酬改定】(2)

2018.3.30.(金)

 お伝えしているように、厚生労働省は3月30日に2018年度診療報酬改定の疑義解釈(その1)を公表しましたす(厚労省のサイトはこちら)。

 今回は、医療現場で極めて注目度の高い【医療安全対策加算】と【感染症対策加算】に関するQ&Aに焦点を合わせてみます。

 【急性期一般入院基本料】【入退院支援加算】のQ&Aに関する記事は、こちら

複数医療機関で連携し、相互に「医療安全の取り組み」を積極的に評価せよ

 2018年度改定では、A234【医療安全対策加算】に、上乗せの加算として【医療安全対策地域連携加算1】(50点)と【医療安全対策地域連携加算2】(20点)が新設されました。【医療安全対策加算】を算定する複数の医療機関が連携し、少なくとも年1回以上、相互に「医療安全対策に関する評価を行う」ことを経済的に評価するものです。

 【医療安全対策地域連携加算1】の医療機関は、1施設以上の別の【医療安全対策加算1】医療機関と、1施設以上の【医療安全対策2】医療機関と連携することが必要で、「【医療安全対策加算1】のA病院、【医療安全対策加算2】のB病院のみの連携」という組み合わせでは、前者のA病院は【医療安全対策地域連携加算1】を届け出ることはできません(もう1つ【医療安全対策加算1】のC病院の連携参加が必要)。また、連携相手は「特別の関係」にあってもよく、「医療安全対策加算1また2を届け出ている特定機能病院」であっても構いません(なお、特定機能病院は【医療安全対策地域連携加算】の届け出は不可)。

医療安全対策加算における医療安全対策地域連携加算の概要

医療安全対策加算における医療安全対策地域連携加算の概要

 【医療安全対策地域連携加算1】を届け出るためには、▼医療安全対策に3年以上の経験をもつ▼「医療安全対策に係る適切な研修」を修了した—のいずれかの専任医師を医療安全管理部門に配置することも求められます。この専任医師は、ベースとなる【医療安全対策加算1】で求められる「専従の医療安全管理者として配置された医師」と兼任が可能であることが今般の疑義解釈で明らかにされています。

 さらに、【医療安全対策加算1】を既に算定し、医療安全管理者として「専従の看護師、薬剤師その他の医療有資格者」を配置している医療機関が、新たに【医療安全対策地域連携加算1】を届け出るために、3年以上の医療安全対策経験を持つ専任医師を配置したとします。この場合、「専従の看護師、薬剤師その他の医療有資格者」が医療安全管理部門に配置されていれば、これらに代えて専任医師を医療安全管理者としたとしても、引き続き【医療安全対策加算1】の施設基準を満たす、ことが明確にされています。

 
 【医療安全対策加算2】は、2018年度改定で「5点の引き下げ」が行われており、積極的に【医療安全対策加算1】医療機関と連携して、より医療安全の質を高めるとともに、経営の安定を図る必要がありそうです。

感染防止対策加算の「抗菌薬適正使用支援加算」、ハードルは比較的低め

 我が国は、諸外国に比べて抗菌薬全体の使用量はさほど多くないものの、▼経口セファロスポリン▼フルオロキノロン▼マクロライド—といった広域抗菌薬(幅広い細菌に有効な抗菌薬)の使用量が極めて多いことが分かっています。漫然とした抗菌剤使用は薬剤耐性菌の発生につながるため、「抗菌剤の適正使用」が重要課題の1つに位置付けられています(関連記事はこちら)。

我が国では、セファロスポリンなどの広域抗菌剤の使用量が諸外国に比べて極めて多い

我が国では、セファロスポリンなどの広域抗菌剤の使用量が諸外国に比べて極めて多い

 
 このため、2018年度改定では、A234-2【感染防止対策加算】の上乗せ加算として、【抗菌薬適正使用支援加算】(100点)が新設されました。

 院内感染防止対策・感染防止対策に関して他の医療機関と連携した上で、院内に「抗菌薬適正使用支援チーム」を設置し、▼感染症治療の早期モニタリングと主治医へのフィードバック▼微生物検査・臨床検査の利用の適正化▼抗菌薬適正使用に係る評価▼抗菌薬適正使用の教育・啓発▼院内で使用可能な抗菌薬の見直し―などを行うことを評価するものです。

「抗菌薬適正使用支援チーム」の構成メンバーは、▼3年以上の感染症診療経験をもつ専任の常勤医師▼5年以上の感染管理従事経験をもち、感染管理に係る適切な研修を修了した専任の看護師▼3年以上の病院勤務経験をもつ、感染症診療にかかわる専任の薬剤師▼3年以上の病院勤務経験をもつ、微生物検査にかかわる専任の臨床検査技師—で、いずれか1人は「専従」であることが求められます。

もっとも、これらのメンバーは、ベースとなる【感染防止対策加算】で求められる「感染制御チーム」を兼任することが可能ですが、一方のチームの専従者は、当該チームの業務のみを行わなければいけません(専従ゆえ)。

感染防止対策加算における抗菌薬適正使用支援加算の概要

感染防止対策加算における抗菌薬適正使用支援加算の概要

 
「抗菌薬適正使用支援チーム」は、次のように幅広い業務を行うことが求められます。
(1)▼広域抗菌薬等の特定の抗菌薬を使用する患者▼菌血症等の特定の感染症兆候のある患者▼免疫不全状態等の特定の患者集団—など「感染症早期からのモニタリングを実施する患者」を施設の状況に応じて設定する
(2)感染症治療の早期モニタリングにおいて、(1)で設定した対象患者を把握後、▼適切な微生物検査・血液検査・画像検査等の実施状況▼初期選択抗菌薬の選択・用法・用量の適切性▼必要に応じた治療薬物モニタリングの実施▼微生物検査等の治療方針への活用状況―などを経時的に評価し、必要に応じて主治医にフィードバックし、その旨を診療録に記載する
(3)「適切な検体採取と培養検査の提出」(血液培養の複数セット採取など)、「施設内のアンチバイオグラム作成」など、微生物・臨床検査が適正に利用可能な体制を整備する
(4)▼抗菌薬使用状況▼血液培養複数セット提出率—などの「プロセス指標」、▼耐性菌発生率▼抗菌薬使用量—などの「アウトカム指標」を定期的に評価する
(5)抗菌薬適正使用を目的とした院内研修を少なくとも年2回程度実施し、院内の抗菌薬使用マニュアルを作成する
(6)医療機関内で使用可能な抗菌薬の種類、用量等を定期的に見直し、必要性の低い抗菌薬について医療機関内での使用中止を提案する

また、ベースとなる【感染防止対策加算】の「感染制御チーム」には、「院内の抗菌薬適正使用を監視体制」が求められていますが、これを「抗菌薬適正使用支援チーム」が実施することも可能です。

このうち、(1)の「感染症早期からのモニタリングを実施する患者」について、掲げられた「広域抗菌薬等の特定の抗菌薬を使用する患者」などは「例示」であり、「各医療機関の患者特性、施設状況に応じて設定すればよい」ことが今般の疑義解釈で明確にされました。ています。例えば、移植医療に力を入れ、免疫抑制をしている患者などを受け入れている医療機関では、より広範に「モニタリング実施患者」を設定することなどが必要でしょう。

また(5)の「院内研修」については、▼医師▼看護師▼薬剤師▼臨床検査技師—など、「抗菌薬に関わる業務に従事する職員」を対象に実施することが必要です。さらに、この「院内研修」は、ベースとなる【感染防止対策加算】で求められる「院内感染対策に関する研修」と、双方の内容を含む場合には「併せて実施する」ことが認められます。

ベースとなる【感染防止対策加算】については点数の引き下げ(加算1:400点→390点、加算2:100点→90点)が行われていますが、届け出を行っていれば、【抗菌薬適正使用支援加算】取得のためのハードルは比較的低いと考えられます。「抗菌薬適正使用に積極的に取り組んでほしい」との厚労省メッセージが伺えます。

小児科外来において、抗菌薬の適正使用推進を支援する加算を新設

抗菌薬適正使用に関しては、2018年度改定で次のような見直しも行われています。
(1)B001-2【小児科外来診療料】、B001-2-11【小児かかりつけ診療料】に上乗せする【小児抗菌薬適正使用支援加算】を新設する
(2)▼A001【再診料】の【地域包括診療加算】、【認知症地域包括診療加算】▼B001-2-9【地域包括診療料】▼B001-2-10【認知症地域包括診療料】▼B001-2【小児科外来診療料】▼B001-2-11【小児かかりつけ診療料】▼調剤報酬の【薬剤服用歴管理指導料】—について「抗菌薬の適正使用に関する普及啓発に努めていること」「『抗微生物薬適正使用の手引き』に則した治療手順等、抗菌薬の適正使用に資する診療を行うこと」を要件として追加する

外来診療等における抗菌薬の適正使用の推進

外来診療等における抗菌薬の適正使用の推進

 
 このうち(1)の【小児抗菌薬適正使用加算】は、「薬剤耐性(AMR)対策アクションプランに位置づけられた『地域感染症対策ネットワーク(仮称)』に係る活動に参加」または「感染症にかかる研修会等に定期的に参加」している医療機関(以上、施設基準)において、▼急性気道感染症▼急性下痢症—で受診▼基礎疾患がない▼診察の結果、抗菌薬投与の必要性が認められないため抗菌薬を使用しない―のいずれも満たす患者に対し、療養上必要な指導および検査結果の説明を行い、文書で説明内容を提供した場合に、「小児科担当の専任医師が診療を行った初診時」に限って算定できるものです(インフルエンザ患者(疑い含む)には算定不可)(以上、算定要件)。

この点について、今般の疑義解釈では、次のような点が示されました。
▽【小児抗菌薬適正使用支援加算】は、解熱鎮痛消炎剤等の抗菌薬以外の処方を行った場合は算定可能である
▽施設基準に求められる「感染症対策ネットワーク(仮称)に係る活動」(上記)とは、「複数の医療機関や介護施設、自治体等と連携し、感染予防・管理についての情報共有や研修の実施などを定期的に行う」ことである
▽施設基準に求められる「感染症に係る研修会等への定期的な参加」とは、「小児科や感染症に関係する学会や医師会等が開催する抗菌薬適正使用研修会等に、1年に1回以上参加する」ことである
▽病院では、院内で行う抗菌薬適正使用研修会でも差し支えないが、その場合は、院外の医師も参加対象とした研修会であることが必要
▽算定要件にある「小児科担当の専任医師が診療した初診時に限り算定する」とあるが、「小児科を担当する専任の医師」であればよく、当該医師が他の診療科を兼任していてもよい

 
 また(2)の「抗菌薬の適正使用の普及啓発に資する取組」とは、例えば、患者への説明のほか、「院内にパンフレットを置く」「ポスターを掲示する」ことなどが考えられるとの例示も行われています。

 
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