外来から入院、退院後の在宅医療までをマネジメントするPFM、さまざまなメリットが!
2018.3.26.(月)
2018年度の診療報酬改定では、入院前から「患者の入院生活、さらに退院後の生活」を見据えた支援を行う【入院時支援加算】が新設され、外来から入院、退院、在宅までを通して患者のマネジメントを行うPFM(Patient Flow Management)が、診療報酬でも評価されることになった。この視点のもとに、院内でPFMを仕組み化することで、患者満足度の向上や各種加算の算定率向上につなげることができ、病院経営の安定はもちろん、医療の質向上につなげられる―。
グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)代表取締役社長の渡辺幸子は、3月24日に開催した2018年度診療報酬改定セミナーで、厚生労働省の鈴木康裕医務技監督、迫井正深医療課長のコメントも踏まえ、このように強調しました(関連記事はこちら)。
入院前からの患者サポート、2018年度改定で【入院時支援加算】として評価
お伝えしているように、GHCでは2018年度診療報酬改定セミナーを3月24日に開催。鈴木医務技監から、我が国の社会・経済状況全体を踏まえて「医療機関は変革をしなければならない」点を、また迫井医療課長から「加算・点数に目を奪われるのではなく、我が国の状況を行政と医療機関で共通認識を持ち、将来を考えていかなければならない」点を詳説いただきました(関連記事はこちら)。加えて、GHC社長の渡辺からは、より質が高く、患者満足度も高い医療提供にむけて「PFM」という視点を重視していくべきことを強調しています。
2018年度改定では、従前の【退院支援加算】について、次のような大きな見直しが行われています。
▽入院前からの支援が重要であり、名称を【入退院支援】に改める
▽入院前からの支援について、新たに【入院時支援加算】(入退院支援加算の加算、退院時に1回、200点)として評価する
後者の【入院時支援加算】は、予定入院患者に対し、外来時点から▼既に利用している医療・介護サービスの確認▼服薬中の薬剤確認、各種スクリーニング▼入院生活のオリエンテーション▼看護・栄養管理等に関する支援計画策定―などを行うことを評価するものです。大規模な病院であれば「入院サポートセンター」のような組織を設けることが、中小規模の病院であれば「専任の担当看護師等」を決めることでも対応可能でしょう。
この点についてGHC渡辺は、多くの病院で▼紹介予約は地域連携室が担当する▼入院前のスクリーニングは病棟看護師などが担当する▼病床管理は看護部が担当する▼後方連携は患者サポートセンターなどが担当する―という具合に「業務の分断」が生じており、円滑なマネジメントを阻害していると指摘。そこで、一連の業務を漏れなく・滞りなく実施するための「PFMセンター」や「入院サポートセンター」の設置を提唱しました(下図参照)。
GHCでは、かねてより「入院サポートセンター」の重要性を指摘しており、導入のコンサルティング支援の成果から、例えば▼必要な検査の未実施や内服薬の中止漏れによる「手術中止」の解消▼日曜入院を可能とすることによる月曜日手術室稼働率の向上▼術前に必要な検査の完了や、患者への十分な説明完了に伴う、主治医、麻酔科医、病棟・外来看護師の業務負担軽減▼外来時での丁寧な説明等による患者の満足度向上―など、さまざまなメリットがあることが分かっています(下図参照)。
今回、こうした入院前の業務が新たに「退院時1回、200点」と診療報酬で評価されたわけですが、この評価だけでは必要な人件費のカバーは難しく投資効果が小さいと考える病院もあるでしょう。しかし渡辺は、(1)外来介入と退院支援介入をセットにした仕組み(2)外来時点での関連加算を含めた介入―の2点を考慮したPFM強調します。
まず(1)では、【入退院支援加算(対象:退院困難患者)】と【入院時支援加算(対象:予定入院患者)】の算定要件から、「入院時支援加算の対象となる全ての患者を把握」する必要があります。GHCの分析によれば、【入退院支援加算】の算定可能患者に対する算定割合は、極めて大きなバラつきがあり、「65歳以上、かつ在院日数(DPC)が8日以上の症例」を母数としてみると算定割合は、最高「95%」という病院もあれば、「ゼロ%」である病院も決して稀ではありません(下図参照)。【入院時支援加算】は【入退院支援加算】の加算と言う位置づけであり、【入退院支援加算】の算定割合が不十分であれば、【入院時支援加算】の算定は極めて困難となってしまいます。まず自院の【入退院支援加算】の算定状況を把握し、他院と比べて高いのか、低いのか、など「等身大の姿」を見ることが重要です。GHCの開発している「病院ダッシュボードχ」を活用すれば、こうした状況が瞬時に把握できます(関連記事はこちらとこちら)。
また(2)では、外来-入院-外来・在宅(退院後)といったエピソードごとに、予定患者において外来の入院サポートの時点で、入院時や退院に向け「どのような介入やケアをすべきか」を“予測”する。例えば、全身麻酔手術症例なら「肺血栓塞栓予防」や「周術期等口腔機能」、栄養状態や基礎疾患の把握から「栄養指導」や「特別食」、服薬中の薬剤確認から「薬剤指導」、認知機能アセスメントから「認知症ケア」、ADLや入院前介護サービス・福祉サービスから「総合評価」「介護支援連携」「退院時共同指導」など介護との連携を、外来時に“予測“し、入退院時に実施するというもの。これは「医療の質」と「他施設との連携(シームレスケア)」を向上させる取り組みであり、結果的に「加算」として経営的に評価される。外来時に必要な介入やケアを事前に”予測“できず、入院時に情報収集していたのでは必ず”漏れ“が生じるのです。
渡辺はこのようなPFMの取り組みにより「地域全体でWIN-WIN-WINの関係を作る」ことの重要性も強調しています。高いケアを受け満足度の点で「患者のWIN」、高い医療の質、円滑なマネジメント、加算による「病院のWIN」、そして患者を円滑に受ける事ができかつ加算による「地域関連施設のWIN」。病院は地域関連施設もWINとなる視点が重要です。入院時の支援を呼び水として、これまで実施漏れの傾向があった加算等を確実に取得できれば、当然、大きな収益増につながります。
看護必要度IIの導入に伴い、「看護必要度」のデータ精度が十分かの確認を
また、入院料の再編・統合に合わせて、看護必要度II(DPCのEF統合ファイルに基づく重症患者割合の計算方法)が導入されました。例えば、現行7対1相当の急性期一般入院料1で、看護必要度IIを用いる場合には、▼看護必要度I(一般病棟用の重症度、医療・看護必要度評価票に基づく)で重症患者割合が30%以上▼看護必要度IIで25%以上―の双方をクリアすることが求められます。
この点について、例えば新制度(診療報酬改定後の看護必要度定義)で「看護必要度Iでは28.7%、看護必要度IIでは25.2%」という病院があったとします。看護必要度IIの「25%以上」はクリアできていますが、看護必要度Iの「30%以上」はクリアできず、このままでは急性期一般入院料3を届け出ることになりそうです。こうした病院について渡辺は「看護必要度Iが低い病院では、看護必要度評価票のチェック漏れなどがあるかもしれない」と指摘。さらに看護必要度Iが看護必要度IIに比べて著しく高い場合には、「過剰な看護必要度評価票のチェックがなされている、またはEFファイル(レセプトデータ)に漏れがある可能性がある」と指摘。データの精度管理の重要性も説いています。この点、GHCの開発した「病院ダッシュボードχ」のオプション機能「看護必要度分析」を用いれば、症例(患者)単位に遡ってデータ精度を高めることができます(関連記事はこちら)。新制度で重症患者割合が何パーセントになるのかを把握するだけでは不十分で、自院の病床戦略のもと、HファイルやEFファイルのデータの精度向上、在院日数の適正化の解決策が必要なのです。
なお、2018年度改定では看護必要度の定義が一部見直され、「B項目」の重要性が高まりました。この点、GHCの「病院ダッシュボードχ」のオプション機能「看護必要度分析」では、B項目に関する分析も行うことはできます(関連記事はこちら)。B項目はEFファイルから見えませんが、他病院と同疾患でベンチマークすることにより自院の看護必要度評価票チェック漏れが改善できるのです。
自病院と競合の強み弱みを見える化、病院ダッシュボードχの「マーケット分析」がデータ更新
診療報酬改定後の重症患者割合を試算できる「看護必要度シミュレーション」
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