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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

【2018年度診療報酬改定答申・速報5】在総管と施設総管、通院困難患者への医学管理を上乗せ評価

2018.2.8.(木)

 お伝えしているとおり、2月7日の中央社会保険医療協議会・総会で、2018年度の次期診療報酬改定に関する答申が行われました。

2月7日に開催された、「第389回 中央社会保険医療協議会 総会」

2月7日に開催された、「第389回 中央社会保険医療協議会 総会」

 メディ・ウォッチでは、改定内容をポイントを絞って探っています。今回は在宅医療に関連の深い項目を見てみましょう(訪問看護については別にお伝えいたします)。

▼入院料の再編・統合に関する記事はこちら
▼入退院支援の充実、救急医療の評価、感染防止対策の充実に関する記事はこちら
▼かかりつけ医機能の評価、外来機能分化に関する記事はこちら
▼医療従事者の負担軽減に関する記事はこちら

訪問診療料、併設介護施設への訪問、複数医療機関訪問を評価するため細分化

 「自分・家族には入院医療が適しているのか、在宅医療が適しているのかを選択できる」体制を構築するために、診療報酬でも「在宅医療の推進」に向けた手当が行われてきています。2018年度には、次のような見直しが注目されます。

(1)複数医療機関が行う訪問診療の評価
(2)在支診以外の診療所による訪問診療の提供に係る評価
(3)併設する介護施設等への訪問診療の整理
(4)患者の状態に応じたきめ細やかな訪問診療の評価
(5)適切な往診の推進と看取り期の患者に対する往診の評価

 このうち(1)の「複数医療機関による訪問診療」は、「1人の患者に対し、1つの保険医療機関の保険医の指導管理の下に継続して行われる」という在宅患者訪問診療料や在宅時医学総合管理料(在総管)の大原則(いわば1訪問診療1医療機関の原則)を見直すものです。

 複数疾病を抱える高齢者が増加し、医師の専門分化が進む中で「複数医師の連携による在宅医療の質向上」(内科疾患で在宅療養を行っている患者に、基礎疾患を管理する内科医師と、褥瘡対策を行う皮膚科医師が連携するなど)を目指す必要があり、また在宅医療を担う医師1人1人の負担軽減を実現するために、2018年度改定では、【在宅患者訪問診療料】を次の2区分とされます。

【在宅患者訪問診療料(I)】(現在の在宅患者訪問診療料から名称変更、同(II)は後述)
▼在宅患者訪問診療料1
 イ 同一建物居住者以外の場合:833点
 ロ 同一建物居住者の場合:203点
▼在宅患者訪問診療料2
 イ 同一建物居住者以外の場合:830点(上記から3点低い水準)
 ロ 同一建物居住者の場合:178点(上記から25点)

 在宅患者訪問診療料1が現在の点数、在宅患者訪問診療料2が「依頼を受けて他医療機関が訪問診療を行う」場合の点数で、在宅患者訪問診療料2では若干低めの点数設定となっています。在宅患者訪問診療料2を算定するには、在宅患者に対して総合的な医学管理を行っている医療機関(▽在総管▽施設入居時等医学総合管理料(施設総管)▽在宅がん医療総合診療料—の要件を満たす医療機関)から依頼を受けることが必要です(当然、依頼がなければ在宅患者訪問診療料、往診料の算定は不可)。一連の治療について6月以内に限り、月1回を限度として算定可能です。

 
 前述のように、現在の在宅患者訪問診療料は【在宅患者訪問診療料I】に名称変更されます。IがあればIIもあるわけで(IIIは今回はありません)、新たに【在宅患者訪問診療料II】が設けられます。

 新設される【在宅患者訪問診療料II】は、「併設する介護施設等の入居者へ訪問診療を行う」ケースを評価するもので(上記の(3))、1日につき144点を、週3回を限度として算定可能です。移動コストを考慮すると同時に、医療機関から併設介護施設等入所者への必要性の低い訪問診療を抑制することも狙ったものと言えるでしょう。

 
 これらをまとめると、【在宅患者訪問診療料】の大枠は次のように見直されます。

C001【在宅患者訪問診療料(I)】
▼在宅患者訪問診療料1(現行相当)
 イ 同一建物居住者以外の場合:833点
 ロ 同一建物居住者の場合:203点
▼在宅患者訪問診療料2(訪問診療を行う他医療機関からの依頼を受けた場合)
 イ 同一建物居住者以外の場合:830点(上記から3点低い水準)
 ロ 同一建物居住者の場合:178点(上記から25点)
C001-2【在宅患者訪問診療料(II)】(併設介護施設等の入所者を訪問する場合) 144点

在支診以外の診療所、他院と連携するなどし24時間往診体制を構築することを評価

 在宅医療の担い手として、24時間往診体制や緊急時のための病床整備などの要件とする「在宅療養支援診療所」(在支診)が診療報酬上、設けられています。しかし、こうした要件を満たさない医療機関も積極的に在宅医療を提供しており、地域によっては「在支診以外の診療所なども含めて『在宅医療ネットワーク』を構築している」ところもあります。こうした在宅医療ネットワークが日本全国で構築されれば、「24時間・365日対応」の負担が減り、より多くの医療機関が在宅医療提供に関与するようになるでしょう(負担軽減→さらに多くの医療機関の参加→さらなる負担軽減→・・・という好循環が期待できる)。

このため2018年度改定では、(2)の「在支診以外の診療所による訪問診療提供」をこれまで以上に進めるために、在総管に新加算が創設されます。

具体的には、「在支診以外の診療所」が、他医療機関との連携等(単独でも可能)によって、かかりつけの在宅療養患者ごとに▼24時間の往診体制▼24時間の連絡体制—を構築した場合について、在総管・施設総管に上乗せして【継続診療加算】(1月につき216点)を算定することが可能になります。

現在、在支診以外の診療所が、重症でない患者に月2回の訪問診療を行っている場合には1か月に「833点×2の訪問診療料、2850点の在総管」(合計4万5160円)を算定できます(1か月に、同じ建物に住む別の人への訪問診療が行われていない場合)。こうした診療所が、24時間往診体制などを構築した場合には、「833点×2の訪問診療料、2750点の在総管、216点の継続診療加算」(合計4万6320円)を算定でき、かつ連携による負担軽減なども期待できます。

在総管等、患者の状態や訪問回数に応じて、点数にメリハリを利かせる

 また2018年度には、在総管・施設総管について(4)のとおり、大きく3点の報酬体系見直しも行われます。
(a)月1回の訪問診療を行う場合の在総管等の点数を引き上げる
(b)月2回以上の訪問診療を行う場合の在総管等の点数を若干引き下げる
(c)通院が特に困難な患者を対象とした、新たな加算【包括的支援加算】(月1回150点)を設ける

 通常の在支診(看取りなどの実績が十分でなく、機能強化型の取得に至っていない)が算定する在総管を例にとって、(a)と(b)における点数の見直しを見てみましょう。
イ 病床あり
(1)末期がん患者等で、月2回以上訪問の場合
▼単一建物診療患者が1人:4600点(現行どおり)
▼単一建物診療患者が2-9人:3780点(現行どおり)
▼単一建物診療患者が10人以上:2400点(現行どおり)
(2)(1)以外で月2回以上訪問の場合
▼単一建物診療患者が1人:3700点(現行から100点引き下げ)
▼単一建物診療患者が2-9人:2000点(現行から100点引き下げ)
▼単一建物診療患者が10人以上:1000点(現行から100点引き下げ)
(3)月1回訪問の場合
▼単一建物診療患者が1人:2300点(現行から20点引き上げ)
▼単一建物診療患者が2-9人:1280点(現行から20点引き上げ)
▼単一建物診療患者が10人以上:680点(現行から20点引き上げ)

 また(c)の【包括的支援加算】は、▼要介護2以上▼認知症高齢者の日常生活自立度IIb以上▼月4回以上の訪問看護を受ける▼訪問診療・看護時に簡単でない処置を行う▼特定施設等の入居者で、医師の指示により看護師がたん吸引、胃ろう・腸ろうの管理等を行う▼その他、関係機関等との連携のために特に重点的な支援が必要—な患者に対して、総合的な医学管理を行った場合に、1か月に1回、150点が加算されるものです。「末期がん患者等で、月2回以上訪問の場合」には算定できず(上記の在支診の例では(1))、「月2回以上訪問」(同(2))と「月1回訪問」(同(3))の場合に上乗せで算定が可能となります。

 これらを総合すると、次のように整理できるでしょう(在支診の場合、機能強化型在支診では月1回訪問の点数引き上げがないので、若干異なる)。
▼末期がん等の重症患者における在総管等:現行と変わらず
▼要介護2以上などの患者に月2回以上訪問を行う:現行から50点の収入増(100点の点数引き下げ+150点の包括的支援加算、上述の(b)+(c))
▼通常の患者に月2回以上訪問を行う:現行から100点の収入減(100点の点数引き下げ、上述の(b))
▼▼要介護2以上などの患者に月1回訪問を行う:現行から170点の収入増(20点の点数引き上げ+150点の包括的支援加算、上述の(a)+(c))
▼通常の患者に月2回以上訪問を行う:現行から20点の収入減(20点の点数引き下げ、上述の(a))

往診料、適正化と充実の両側面から見直し

 また(5)では、往診料について次の見直しが行われます。

▼往診料は「患者、または患者の看護・介護者(家族など)が、医療機関に対し、電話等で「直接」往診を求め、医療機関の医師が往診の必要性を認めた場合に、可及的速やかに患家に赴き診療を行った場合」にのみ算定可能なことを明記する(不適切な往診の抑制)

▼往診料の【緊急往診加算】において、対象患者に「医学的に終末期であると考えられる患者(当該医療機関・連携医療機関が訪問診療を行っている患者に限る)」を追加する(末期がん患者への十分な往診の確保)

▼医療機関の標榜時間が、夜間「午後6時から午前8時」、深夜「午後10時から午前6時」に含まれる場合には、往診料の【夜間・休日加算、深夜加算】を算定できないことを明確化する(算定の適正化)

【更新履歴】本文の試算の中で、在宅患者訪問診療料・在宅時医学総合管理料の点数に一部誤りがありました。お詫びして訂正いたします。本文は訂正済です。
 
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