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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

介護施設を訪問して入所者を看取った場合の医療機関の評価を拡充―中医協総会 第377回(4)

2017.12.11.(月)

 介護施設入所者に対し、外部医療機関が訪問し看取りを行った場合、介護施設側で介護報酬の【看取り介護加算】を算定していれば、訪問した医療機関側は【在宅ターミナルケア加算】などを算定できない。「施設での看取り」を推進する観点から、訪問した医療機関側で【在宅ターミナルケア加算】などを算定することを可能としてはどうか―。

 12月8日の中央社会保険医療協議会・総会では、このような「医療・介護連携」に関する項目も議題にあがりました(関連記事はこちらこちらこちら)。

12月8日に開催された、「第377回 中央社会保険医療協議会 総会」

12月8日に開催された、「第377回 中央社会保険医療協議会 総会」

介護施設での円滑な看取りの推進に向け、外部医療機関の協力を仰ぎやすくする

 例えば特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)では、入所者の健康管理などを行うために医師が配置されています。このため、外部の医師がみだりに訪問診療などを行うことが認められません(末期がん患者などや、専門外での看取りなどでは可能)。

特養ホームにおける医療提供と、報酬との関係。配置医師が健康管理などを行い、これらは基本報酬の中で包括評価されている。ただし、緊急時や専門外、末期がんなどでは外部医師の対応が可能で、診療報酬を算定できる

特養ホームにおける医療提供と、報酬との関係。配置医師が健康管理などを行い、これらは基本報酬の中で包括評価されている。ただし、緊急時や専門外、末期がんなどでは外部医師の対応が可能で、診療報酬を算定できる

 
ただし、配置医は24時間常駐していることまでは求められていないので、急性増悪した場合などには▼医師に往診などを依頼する▼病院などに救急搬送する—といった対応をとる施設も少なくありません。

非常勤医師の休日・夜間対応には、特養ホームによって差があり、「原則として対応してもらえない」ところもある

非常勤医師の休日・夜間対応には、特養ホームによって差があり、「原則として対応してもらえない」ところもある

特養の16%では、入所者が夜間に急変した場合などに「救急車を呼ぶ」のみの対応となっている

特養の16%では、入所者が夜間に急変した場合などに「救急車を呼ぶ」のみの対応となっている

外部医師から訪問診療・往診を得られる体制をとっている特養ホームは少ない

外部医師から訪問診療・往診を得られる体制をとっている特養ホームは少ない

 
 前者の「往診」などは、多くの場合には配置医(外部の医療機関に従事し、当該特養ホームに非常勤しているような医師)が行っていますが、「看取り」までを配置医に求めることは難しいケースが多いようです。

 ところで、「人生の最終段階を、どこで迎えたいか」という問いに対しては、国民の間でさまざまな意見があります。「自宅で最期を迎えたい」という人がいる一方で、「家族に迷惑を掛けたくないので、最期の最期は病院で」と考える人もいます。さらに、介護保険制度の浸透とともに「介護施設で最期を迎えたい」と考える人も一定程度います。こうした希望に応えるために、介護報酬では【看取り介護加算】が整備されています。例えば特養ホームでは、「常勤看護師を1名以上配置し、施設や病院などの看護職員と24時間の連絡体制を確保する」「看取り指針を定め、入所時に本人・家族に説明し同意を得ている」「医師、看護職員、介護職員、ケアマネジャーらが協議し、自施設の看取り実績などを踏まえ、適宜、看取り指針の見直しを行う」「看取りに関する職員研修を実施する」「医師、看護師、介護職員らが共同し、利用者の状態を随時、本人や家族に説明し、同意を得て介護を実施する」などの体制をしている場合に、▼死亡日以前4日~30日:144単位/日▼死亡日の前日・前々日:680単位/日▼死亡日:1280単位/日—を算定することが可能です。

 一方、介護保険施設での看取りに際し、外部の医療機関などから医師や看護師が駆けつけてターミナルケアや看取りを実施した場合、現在「介護施設側が上記の【看取り介護加算】を算定した場合には、外部の医療機関側は在宅ターミナルケア加算などを算定できない」という規定(給付調整)が設けられています。

ターミナルケアを介護施設で行い、【看取り介護加算】を算定した場合、医療機関が訪問して看取りを行ったとしても、給付調整によって医療機関側は【在宅ターミナル加算】などを算定できない

ターミナルケアを介護施設で行い、【看取り介護加算】を算定した場合、医療機関が訪問して看取りを行ったとしても、給付調整によって医療機関側は【在宅ターミナル加算】などを算定できない

 
 上記のように、「施設で最期を迎える希望はある」ものの、配置医では適切な看取りが困難で、外部医師・看護師に協力を仰ぎたいが、給付調整のために難しく、円滑な「施設での看取り」のハードルになっている状況が伺えます。ただし、介護施設の入所者が末期がん患者である場合には訪問診療が実施可能な規定があることから、厚生労働省保険局医療課の迫井正深課長は、「介護施設の従事者と、訪問診療などを行う医療機関・訪問看護ステーションが協働して看取り期のケアを行った上で、施設内で看取りが行われた場合」には、施設ごとの看取りに係る体制に応じて、協働した医療機関・訪問看護ステーションでも看取り期のケアに係る診療報酬(【在宅ターミナルケア加算】など)を算定できるようにしてはどうかと提案しました。

この提案に対し、診療側委員は「介護施設と外部医療機関との連携」の重要性を説き賛同しましたが、支払側委員には「現在の診療報酬と介護報酬の関係や特養ホーム配置医師の業務」という点が十分に理解されず、本質的な議論にはなりませんでした。

医療機関からケアマネへの情報提供を推進する

医療・介護連携の一環として「情報提供」の重要性がかねてから指摘されています。医療機関を退院する患者に対して、ケアマネらに「入院中の治療状況」や「在宅療養中に注意すべき点」などを情報提供することが行われ、例えばA246【退院支援加算】やB004【退院時共同指導料1】などとして診療報酬でも評価されています。

医療機関からケアマネなどへの情報提供を評価する診療報酬項目がいくつか準備されている

医療機関からケアマネなどへの情報提供を評価する診療報酬項目がいくつか準備されている

 
こうした情報提供を評価する診療報酬項目の1つとしてB005-1-2【介護支援連携指導料】があります。入院の原因疾患や障害などを総合的に評価し、「退院後に介護サービスを導入することが適当」と判断された患者について、退院後に適切な介護サービスが受けられるよう、▼医師▼看護師▼社会福祉士—らが、患者を担当するケアマネジャーと共同して、「患者の心身の状況などを踏まえ導入が望ましいと考えられる介護サービス」や「地域で提供可能な介護サービス情報」などを患者に提供することを評価する点数です。入院中に2回算定可能で、初回は「介護サービスの利用の見込みがついた段階」で大枠の情報提供を行い、2回目は「退院直前」に具体的な情報提供を行うことが期待されています。

このように【介護支援連携指導料】は「退院前」に、医療機関の医師や看護師、社会福祉士と、ケアマネとが共同カンファレンスを行うことが必要ですが、ケアマネ側は「突然、退院前カンファレンスを行うので来院してほしい」と要望され、十分に出席できないことがあるとの問題点を抱えているようです。医療機関側が十分な準備時間をとってケアマネに要請することも重要ですが、在院日数の短縮が進む中では、「もう少しで退院できます。カンファレンスの準備をお願いします」という言葉について、医療機関側とケアマネ側では認識の違いがあり、医療機関側を責めることも難しいようです(関連記事はこちら)。

上記は徐々に「共通言語の作成」をしていかなければいけませんが、「【介護支援連携指導料】の算定ができないために、情報提供が不十分になる」ことは避けなければいけません。迫井医療課長は、実態を考慮し「【介護支援連携指導料】を算定できない場合であっても、退院前一定期間内の情報提供については、B009【診療情報提供料(I)】の対象としてはどうか」と提案しました。B009【診療情報提供料(I)】では、「医療機関が、患者の同意を得て、ケアマネ事業所に診療状況を示す文書を添えて、患者の保健福祉サービスに必要な情報を退院から2週間以内に提供する」ことも評価対象としており、年明けに具体的な見直し内容が議論されます。

退院から2週間以内に、医療機関からケアマネに情報提供を行った場合、B009【診療情報提供料(I)】が算定できる

退院から2週間以内に、医療機関からケアマネに情報提供を行った場合、B009【診療情報提供料(I)】が算定できる

 
併せて迫井医療課長は、「老健施設で減薬をした患者について、老健施設退所後に、かかりつけ医が処方内容のフォローアップ(減薬の効果が継続し、再び多剤投与状況になっていないかなどの確認等)を行うことを、診療報酬で評価する」考えも示しました。

レセプトへの患者氏名カタカナ表記記載、義務ではないが、協力を求める

12月8日の中医協総会では、次のような事項も議題にあがり、了承されています。

▼診療報酬の【在宅時医学総合管理料】などで「単一建物診療患者の人数に応じた評価」に見直され、また、2018年度の介護報酬改定に向けて【居宅療養管理指導費】についても同一建物居住者から「単一建物居住者の人数に応じた評価」へと見直す方向で議論されていることを踏まえ、【在宅患者訪問薬剤管理指導料】【在宅患者訪問栄養食事指導料】【訪問歯科衛生指導料】についても、同様に「単一建物診療患者の人数に応じた評価」に見直す(1か月に、自施設の訪問サービスを、その建物に居住する人のうち何人が利用したかで報酬が決まる仕組みとなる)(関連記事はこちらこちらこちら

▼電子レセプトに対応している医療機関等に対し、レセプトに「患者氏名のカタカナ記載」の協力を求める(義務ではなく、カタカナ記載がなくても、レセプトの返戻などは行われない)(関連記事はこちら

▼レセプトへの患者の郵便番号記載については、2020年度診療報酬改定に向けて検討する(2018年度の次期改定では記載は求めない)(関連記事はこちら

 
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