退院支援加算1、「ICT活用した面会」などを弾力的に認める—第375回 中医協総会(1)
2017.12.1.(金)
A246【退院支援加算】やA234-2【感染防止対策加算】、B004【退院時共同指導料1】などでは、対面での「面会」や「カンファレンス」などが取得の要件となっているが、情報通信技術(ICT)を活用して回数や対象者などの要件を弾力化する―。
12月1日に開催された中央社会保険医療協議会・総会では、こういった点が議論され、了承されました。例えばA246【退院支援加算1】を届け出るためには、病棟・退院支援部門の退院支援職員が、連携先となる他医療機関や介護事業所(20か所以上)などの職員と、1年に3回以上の頻度で「面会」することが必要ですが、このうち一定程度(1回または2回)をオンライン会議にすることなどが考えられそうです。
目次
テレビ電話などを活用し、会議の効率化を求める強い声に応えた
12月1日の中医協総会では、(1)ICTを活用した連携(2)ICTを用いた医療(3)薬剤適正使用の推進(4)地域包括診療料などの見直し—の4点が議題となりました。今回は、(1)と(2)に焦点を合わせ、(3)と(4)は別稿でお伝えします。
まず(1)の「ICTを活用した連携」では、冒頭に述べたように、診療報酬上の「対面での面会やカンファレンス」といった要件を、ICTを活用して弾力運用する方針が示されました。
2018年度は診療報酬と介護報酬の同時改定が行われるため、改定内容に齟齬が出ないように、具体的な報酬論議を行う前に、中医協委員と社会保障審議会・介護給付費分科会委員との間で「意見交換」が行われました。その際、「医療・介護連携を更に進める必要があり関係者の情報共有が不可欠であるが、医療・介護関係者は皆多忙であり、一堂に会することが難しい。特に地方では会議のために1日費やしてしまうこともある。ICTを活用した会議などを正面から認めてはどうか」という意見が多数出されました(関連記事はこちら)。
この意見を受け止め、厚生労働省保険局医療課の迫井正深課長は、「対面でのカンファレンス」などが取得要件となっている点数について、ICTを用いた会議などを組み合わせて開催回数や対象者などの要件を弾力化する考えを提示し、了承されました。
例えば、A246【退院支援加算1】では「入院医療機関の退院支援職員が、連携先の医療機関・介護事業所職員と面会する」ことが、A234-2【感染防止対策加算1】では「加算2の医療機関と合同で、定期的に院内感染対策に関するカンファレンスを行う」ことが取得要件となっており、対面での面会・カンファレンスなどの一部を「ICTを用いた会議」などに置き換えることなどが可能になりそうです。
もっとも、ICTを用いた会議への置き換えが難しい面会・カンファレンスもあると考えられます。A246【退院支援加算】では、上記の面会による連携とは別に、個別患者に退院支援を行うに当たり▽病棟の看護師▽病棟の退院支援職員▽退院支援部門の看護師と社会福祉士—が共同してカンファレンスを行う(支援対象患者や家族、退院後の環境などの情報共有など)ことが必要で、これを「ICTを用いた会議」に置き換えることは難しそうです。平川則男委員(日本労働組合総連合会総合政策局長)は「こうした点に配慮する」ことを求めており、迫井医療課長も▼各診療報酬項目で求める内容(面会などを求める趣旨)▼地理的条件―などを考慮する考えを明らかにしています。
ここから、A246【退院支援加算1】においては、病棟・退院支援部門の退院支援職員と、連携先医療機関・介護事業所(20か所以上)職員との「面会」(1年に3回以上)のうち、一定程度(1回または2回)をオンライン会議にする、などの見直しが行われそうです(関連記事はこちらとこちら)。
ICT活用した遠隔死亡診断、医療資源の乏しい地域に限り診療報酬で評価
ところで、医師が行うことが原則である死亡診断について、(a)医師による直接対面診療で「早晩死亡する」と予測されている(b)終末期対応について医師と看護師とが十分に連携し、患者や家族の同意がある(c)連携に努めても、医師による速やかな対面での死後診察が困難である(d)法医学などの一定の教育を受けた看護師が、死の三兆候の確認を含め、医師の判断に必要な情報を速やかに報告できる(e)看護師からの報告を受けた医師がICTを活用した通信手段を組み合わせて患者の状況を把握し、死亡確認や異常の判断ができる—という要件を満たす場合には、「法医学研修などを受けた看護師が、遺体の観察や写真撮影などを行い、その情報を遠方の医師などが確認する(テレビ電話などのICTを活用)」といった形での死亡診断(遠隔死亡診断)が可能であることが明確にされています(関連記事はこちら)。
迫井医療課長は、「医療資源の少ない地域」で、こうしたICT活用による遠隔死亡診断が行われた場合、▼当該死亡患者に訪問診療などを行っている主治医に限り【死亡診断加算】(往診料、訪問診療料の加算)▼看護師は【訪問看護ターミナルケア療養費】の加算(新設)―を算定可能としてはどうかと提案し、了承されました。
継続して受診している患者について、オンライン診察・医学管理を診療報酬で評価
また(2)のICTを活用した診療(以下、オンライン診察)は、未来投資会議で塩崎恭久前厚生労働大臣が積極的な導入を明言し(関連記事はこちらとこちらとこちら)、また中医協総会では支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)が強く要望していました。例えば、中高年のサラリーマンが多忙を理由に医療機関にかかれず、生活習慣病が重症化してしまうことを防止するために、「状態が安定している」患者についてICT活用で対面診療を補完してはどうか、と幸野委員は要望しています(関連記事はこちらとこちら)。
この点について迫井医療課長は、次のような整理案を提示しました。外来における「再診料と生活習慣病管理料」、在宅における「在宅患者訪問診療料(以下、訪問診療料)と在宅時医学総合管理料(以下、在総管)」のように、「診察」と「医学管理」との組み合わせも併せて整理されています。
【オンライン診察】
▼オンライン診察を報酬上評価する場合、(1)特定された疾患・患者である(2)一定期間継続的に対面診療を行っており、受診間隔が長すぎない(3)急変時に円滑に対面診療できる体制がある(4)安全性や有効性のエビデンスが確認されている(個別事例から判断)(5)事前に治療計画を作成している(6)医師と患者の両者の合意がある(7)(1)から(6)のような内容を含む一定のルールに沿った診療が行われている—ことが前提(要件)となる(当然、初診では認められない)
▼報酬水準は、「対面診察」>「オンライン診察」>「電話再診」とする(オンライン診察と電話再診を明確に区別する)
【オンライン医学管理】
▼外来においては、「一定期間以上、継続的に診療している」患者を対象として、対面診療とオンライン診察を併用することで、対面診療での医学管理(生活習慣病管理など)継続に有用なものは、「オンラインの医学管理」として評価する
例えば、「1か月に1度の外来受診」を行っている患者について、状態が安定しているのでオンライン診察を併用して外来の受診間隔を「2か月に1度」に延長できるケースがあったとします。1月は「外来受診1回」、2月は「オンライン診察2回」、3月は「外来受診1回」としたとき、1月・3月は「再診料+医学管理料(生活習慣病管理料など)」を算定し、2月は「オンライン診察料(新設)+オンライン医学管理料(新設)」を算定するといったイメージです。
また「1か月に2度の外来受診」を行っている患者で、同様に外来受診間隔を「2か月に1度」に延長し、1月は「外来受診2回」、2月は「オンライン診察2回」、3月は「外来受診2回」としたときには、1月・3月は「再診料×2+医学管理料(特定疾患療養管理料など)×2」を算定し、2月は「オンライン診察料(新設)×1+オンライン医学管理料(新設)×1」を算定するといったイメージです。
さらに「1か月に1度の外来受診」を行っている患者について、オンライン診察を併用して医学管理の強化を行うために、1月は「外来受診1回」、2月は「外来受診1回、オンライン診察1回」、3月は「外来受診2回」としたときは、1月は「再診料×1+医学管理料(生活習慣病管理料など)」、2月は「再診料×1+オンライン診察料(新設)×1+医学管理料(生活習慣病管理料など)」、3月は「再診料×2+医学管理料(生活習慣病管理料など)」を算定するイメージです。2月は医学管理料を算定するので、オンライン医学管理料は算定でないとするのが論理的でしょう。
▼在宅においては、「月1回以上、定期的に訪問診療を行っている」患者を対象として、訪問診療とオンライン診察を併用することで、訪問診療での医学管理継続や医師の負担軽減に有用なものは、「オンラインによる在宅時医学管理」として評価する
例えば、「1か月に1度の訪問診療」を受けている患者について、オンライン診察を併用して医学管理を強化するケースが考えられます。1月は「訪問診療1回」、2月は「訪問診療1回、オンライン診察1回」、3月は「訪問診療2回」としたとき、1月は「訪問診療料×1+在総管(月1回訪問)」、2月は「訪問診療料×1+オンライン診察料(新設)×1、在総管(月1回訪問)」、3月は「訪問診療料×2+在総管(月2回訪問)」を算定するといったイメージです。
また「1か月に2度の訪問診療」を受けている患者について、状態が安定しているので1回をオンライン診察に置き換えるといったケースも考えられます。1月に「訪問診療2回」、2月、3月に「訪問診療1回、オンライン診察1回」を提供したときには、1月は「訪問診療料×2+在総管(月2回)」、2月、3月は「訪問診療料×1+オンライン診察料×2+在総管(月1回)」を算定することになるでしょう。「月1回の訪問診療」が要件となれば、在総管(月1回)が算定可能なので、「オンライン在総管」のような点数は設けられません。
迫井医療課長は、外来・在宅ともにさまざまなケースが考えられるとし、「オンライン診察料、オンライン医学管理ともに算定は1か月に1回までとする」との上限設定も行う考えです。また、高齢者施設などに入所する患者に対し、オンライン診察を認めるかどうかは議論になっていませんが、難しそうな印象を受けます。
さらに、「診察環境や使用機器について、一定の要件を設ける」「処方箋料については、原本を患者に郵送することなどを満たせば算定可能とする」考えも示されました。この点、診療側の今村聡委員(日本医師会副会長)は「今後取りまとめられるガイドラインを最低基準として検討してほしい」と要望。支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)、幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)も同様の指摘を行っています。
また報酬水準について同じく診療側の島弘志委員(日本病院会副会長)は、「対面診療と比較して、オンライン診察では聴診や触診ができない(視診は一定程度可能)、電話再診は問診のみとなる、という点を踏まえて減額幅を考慮してはどうか」と提案しました。今後、具体的な要件(スマートフォン1つでよいのか、より高度な機器整備などが必要になるのか、など)・報酬設定論議に入りますが、どう調整されるのか注目が集まります。
なお、迫井医療課長は、在宅酸素療法患者に対し、医師の対面での診察の「間」に、重症化を防ぐために、在宅療養計画に基づき「患者のバイタルサインなどを遠隔モニタリングし、必要時に療養生活の相談・支援などを行う」ことを評価する考えも示しました。
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