小児入院医療管理料、がん拠点病院加算と緩和ケア診療加算を出来高評価に—中医協総会(1)
2017.10.4.(水)
小児がん拠点病院においてA232【がん拠点病院加算】などを算定できない状況を是正するために、A307【小児入院医療管理料】の包括範囲を一部見直してはどうか。抗菌薬の適正使用を進めるために、A234-2【感染防止対策加算】を参考とした「抗菌薬適正使用推進チーム」(AST)の取り組みを診療報酬で評価してはどうか―。
10月4日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、こういった議論が行われました。まず、がん医療提供体制について見てみましょう。
小児がん拠点病院、小入管の包括範囲に含まれるがん拠点病院加算など算定できず
今般の中医協では、個別事項その2として健康局の所管する「がん医療」「感染症対策」「移植医療」といったテーマについて、診療報酬サイドからのアプローチを検討しました。
がん医療のうち「小児がん」医療については、症例の集約や療育環境の整備を考慮して、現在、全国に15か所の「小児がん拠点病院」が整備されています(北海道大学病院、東北大学病院、埼玉県立小児医療センター、国立成育医療研究センター、東京都小児総合医療センター、神奈川県立こども医療センター、名古屋大学医学部附属病院、三重大学医学部附属病院、京都大学医学部附属病院、京都府立医科大学附属病院、大阪市立総合医療センター、大阪府立母子保健総合医療センター、兵庫県立こども病院、広島大学病院、九州大学病院)。
ところでこの15の小児がん拠点病院において、昨年(2016年)6月にA232の2【小児がん拠点病院加算】(入院初日に750点)が算定された回数はわずか3件にとどまっています。この極めて低い算定状況は「A307【小児入院医療管理料】に、小児がん拠点病院加算が包括評価されている」点にあると考えられます。
また「がんと診断されたときからの緩和ケア推進」が謳われる一方で、小児入院医療管理料にはA226-2【緩和ケア診療加算】(1日につき400点)も包括評価されています。
そこで厚労省は「小児入院医療管理料において包括範囲の一部見直しを行ってはどうか」との提案を行っており、A232の2【小児がん拠点病院加算】とA226-2【緩和ケア診療加算】の2項目が2018年度から出来高評価となる(包括範囲から除外される)可能性が高いと考えられます。この点、明確な反対意見こそ出ていませんが、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)からは「がん医療は国家的プロジェクトであり、補助金と診療報酬とのすみ分けをきちんと考える必要がある」との注文が付いています。
さらに、指定要件などを検討中の「がんゲノム医療中核拠点病院」(仮称)などについても、今後、診療報酬上の評価が検討されます。
緩和ケア病棟、待機期間や在宅医療提供状況など踏まえメリハリのついた評価を
上述のように「がんと診断されたときからの緩和ケア推進」など、緩和ケア医療の充実も重要課題となっています。この一環として、緩和ケア医療を提供する緩和ケア病棟の整備が進められています(2017年には393施設・7946病床)が、▼都道府県ごとの整備状況にバラつきがある▼患者が申し込んでから入棟するまでの待機時間に施設ごとのバラつきがある—といった課題が浮上しています。
一方で、緩和ケア病棟を持つ医療機関の37%が在宅医療を、54%が訪問看護を提供しているなど「緩和ケアの地域連携」が一定程度進んでいること、緩和ケアチーム設置医療機関の49.7%で「管理栄養士がチームに参画している」など多職種連携も一定程度進んでいることなども明らかとなっています。
厚労省はこうした点を踏まえて、「緩和ケア」に関する評価の見直しを行ってはどうかと提案しています。例えば「待機時間の長い緩和ケア病棟における減算」や「在宅医療などを提供する緩和ケア病棟設置医療機関への評価充実」「管理栄養士の参画した緩和ケアチーム設置医療機関への評価充実」などが検討されそうです。地域において入院・外来・在宅医療が連携して緩和ケアを適切に提供する体制の構築が期待されます。
この点について今村聡構成員(日本医師会副会長)は「緩和ケア病棟間の連携も評価すべき」と注文を付けました。例えば、同じ県内の緩和ケア病棟間で、「当院ではベッドが空いたので、待機している他院の患者を受け入れる」といった連携体制があれば、地域全体で待機期間を短縮していくことができそうです。
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