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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

内科などの有床診療所、より柔軟に介護サービス提供可能に―中医協総会(2)

2017.11.20.(月)

 有床診療所は、専門的な医療サービスを効率的に提供する「専門医療提供モデル」と、主に地域医療を提供する「地域包括ケアモデル」に大別できる。後者の「地域包括ケアモデル」の有床診療所は、入院医療と介護サービスとを組み合わせて運営する方が安定的に経営できると考えられることから、介護サービス提供をより柔軟に認めてはどうか―。

 11月17日の中央社会保険医療協議会(中医協)・総会で厚生労働省は、このような案を示しました。主な標榜科が内科や外科の有床診療所をめぐっては、今後の人口構造の変化に伴う医療ニーズの減少を見越して【医療・介護の併用モデル】への転換を促す必要性が指摘されています。来年度(2018年度)の診療報酬・介護報酬の同時改定では、診療報酬で新規参入などへのインセンティブが設けられる一方で、介護報酬の算定要件などの緩和が図られそうです。なお、看護小規模多機能型居宅介護(看多機)の新規指定を促す具体案は既に、社会保障審議会・介護給付費分科会で検討されています

11月17日に開催された、「第371回 中央社会保険医療協議会 総会」

11月17日に開催された、「第371回 中央社会保険医療協議会 総会」

地域包括ケアで果たす機能が評価されるも、減り続ける有床診療所

 1996年には全国に2万452施設あった有床診療所(19床以下の病床を持つ医療機関)ですが、減少傾向が続いています。最新の調査(2017年8月末概数)では7342施設で、約20年の間に6割程度まで減っています。その病床数も、1996年には計24万6779床ありましたが、最新の調査では10万床を割っています(計9万9737床)。

 しかし有床診療所は、地域で急変した患者の受け入れに加え、看取りや在宅医療の提供などの多様な機能を担っており、国が2025年を目途に構築を目指す地域包括ケアシステムでも、重要な役割を果たすと考えられます。そこで2014年度の診療報酬改定では、有床診療所入院基本料が、「看護職員の配置人数」に応じた3区分から、「看護職員の配置人数」と「地域包括ケアシステムの中で果たす機能」(11の機能中2以上を担えば評価)に応じた6区分へと見直されました。

2014年度診療報酬改定で、有床診療所入院基本料は3区分から6区分へと見直された

2014年度診療報酬改定で、有床診療所入院基本料は3区分から6区分へと見直された

 例えば看護職員が7人以上いる有床診療所では、通常は【有床診療所入院基本料4】(14日以内の点数は1日につき775点)を算定しますが、例えば、「急変時の入院件数6件以上」「院内での看取り2件以上」をそれぞれ過去1年に行っていれば“機能強化型”の有床診療所と見なされ、【有床診療所入院基本料1】(同861点)を算定できます。

 さらに、2016年度の前回診療報酬改定では、【有床診療所在宅復帰機能強化加算】(1日につき5点)が創設され、“機能強化型”の有床診療所で、さらに在宅復帰率などが一定の基準以上なら上乗せで評価されるようになりました。

 それでもなお、有床診療所の減少傾向が続いているわけですが、有床診療所入院基本料の実際の算定状況(2016年6月審査分)を見ると、“機能強化型”であることを評価する入院料(【有床診療所入院基本料1】など)が8割超を占めています。一方、【有床診療所在宅復帰機能強化加算】が有床診療所入院基本料と併算定される割合は、19.5%にとどまっています。

空床を介護サービスに利用して安定経営に

 こうした状況を踏まえて厚労省は、11月17日の中医協・総会で、有床診療所が地域で果たしている役割と診療科の関係を分析した結果を示しました。

 具体的には、2015年度の「病床機能報告」で、有床診療所が自己申告した役割と主な診療科の関係を調べた結果、【内科】や【外科】の有床診療所では、「在宅医療の拠点」や「在宅・介護施設への受け渡し」「終末期医療」などを選ぶ割合が高く、その一方で【産婦人科】や【眼科】、【耳鼻咽喉科】の有床診療所は「専門医療」、【整形外科】の有床診療所は「専門医療」や「緊急時対応」「在宅・介護施設への受け渡し」を選ぶ割合が、それぞれ高いことが分かりました。

主とする診療科によって、有床診療所の機能に違う傾向が見られた

主とする診療科によって、有床診療所の役割に違う傾向が見られた

 5つの役割のうち「在宅医療の拠点」や「在宅・介護施設への受け渡し」は、地域包括ケアシステムの中で特に重要だと考えられます。そこで厚労省は、【内科】や【外科】などを標榜する「主に地域医療を担う=地域包括ケアモデル」と、【眼科】や【耳鼻咽喉科】を標榜する「主に専門医療を担う=専門医療提供モデル」の2パターンに、有床診療所を大別できるのではないかと指摘しました。
内科や外科を標榜する「地域包括ケアモデル」の有床診療所では、主に入院料などで収益を上げることから、空床が経営状態に及ぼす影響が特に大きいと考えられた

内科や外科を標榜する「地域包括ケアモデル」の有床診療所では、主に入院料などで収益を上げることから、空床が経営状態に及ぼす影響が特に大きいと考えられた

 「専門医療提供モデル」の有床診療所が手術や検査で収益を得ている一方で、入院料が主な収益となる「地域包括ケアモデル」の有床診療所では、高い病床稼働率を維持できないと安定的な経営は難しくなります。ここで、空床を利用して介護サービスを提供できれば、稼働率の低さをカバーできます。実際、日本医師会総合政策研究機構の調査によれば、「介護収入あり」の方が、経常利益率が高いことが分かっています。

 そこで厚労省は、▼「専門医療提供モデル」ではない有床診療所が介護サービスも提供する「地域包括ケアモデル」へ転換することを推進する▼介護サービスを既に提供しでいる有床診療所の評価を見直す―方向性を示しました。診療側・支払側双方の委員が賛成しています。

短期入所療養介護などの基準緩和も介護給付費分科会で今後議論

 このように介護サービスを提供する有床診療所には、診療報酬でインセンティブが与えられる見通しですが、介護サービスの指定基準(居室の床面積や介護職員配置)を満たすのが厳しいままでは新規参入が進まない可能性もあります。

 その緩和については、社会保障審議会・介護給付費分科会で話し合います。看多機については既に、▼利用者専用の宿泊室として1室を確保すれば、残りを診療所の病床を届け出ることを可能とする▼法人でなくても指定を申請できるルールに見直す(診療所は個人開業が4割)―といった具体案が示されています。11月17日の中医協・総会では、厚労省老健局老人保健課の鈴木健彦課長が、短期入所療養介護などについても今後、議論すると説明しました。

 気がかりなのは、厚労省が「地域包括ケアモデル」の具体例として、「無床診療所と介護サービスの組み合わせ」まで示した点です。地域の医療資源や医療ニーズによっては、そうした転換が必要なケースもあり得ますが、無床診療所になる決断を入院料で後押しできるのでしょうか。

厚労省は「有床診療所の地域包括ケアモデル」の例に、「無床診療所と介護サービスの組み合わせ」も挙げた

厚労省は「有床診療所の地域包括ケアモデル」の例に、「無床診療所と介護サービスの組み合わせ」も挙げた

 この点、精神病床には【地域移行機能強化病棟入院料】(2016年度診療報酬改定で創設)があり、いわば「計画的に精神病床を削減することを条件に、高い報酬を与える」ものです。有床診療所が「無床診療所と介護サービスの組み合わせ」へと移行するインセンティブも、こうした「病床数削減と引き換えに、報酬算定を可能とする」仕組みが考えられるかもしれません。

 そのほか【有床診療所入院基本料】をめぐっては、【有床診療所在宅復帰機能強化加算】の見直し案も示されています。高齢患者の入院期間が長くなることを踏まえて、有床診療所が「在宅医療を受ける高齢患者」を多く受け入れているなら、施設基準(平均在院日数60日以内など)のハードルを下げるようです。

 また厚労省は、在宅療養する患者を、在宅主治医との連携の下で、本人や家族の希望に基づき有床診療所で看取る場合の「取り扱い」の見直しも提案しています。これについては、機能強化型の在宅療養支援診療所などの施設基準になっている「在宅での看取り」件数の実績に、「最期の最期で入院してしまった」患者を含めるかどうかが中医協・総会で既に議論されています

身体障害者等級「不明」の肢体不自由患者の入院基本料が論点に

 11月17日の中医協・総会では、【障害者施設等入院基本料】と【特殊疾患病棟入院料】、【特殊疾患入院医療管理料】の見直しも論点に挙がっています。厚労省は、「重度の肢体不自由」で、さらに身体障害者等級が「不明」か「非該当」の患者の評価を見直す方向性を示しました。

 【障害者施設等入院基本料】などをめぐっては、2016年度の前回改定でも、入院患者が「重度の意識障害(脳卒中の後遺症の患者に限る)」で、医療区分1か2に相当するなら、算定する入院基本料の点数を低くする報酬体系に見直された経緯があります。「重度の肢体不自由」の患者も来年度(2018年度)の次期改定で、同様の評価体系へと見直される公算が大きいです。

食事療養(II)、流動食の場合の金額を引き上げ

 また11月17日の中医協・総会で厚労省は、「入院時食事療養費」の見直し案も示しました。「入院時食事療養費」は入院中の食事療養の対価ですが、2016年度の前回改定で、「市販の経腸栄養用製品(流動食)のみを経管栄養法で提供する場合」の金額が引き下げられた経緯があります(薬価収載された製品を用いる場合よりも高かったため)。

 医療保険財政が厳しい中、さらなる引き下げを求める声もありましたが、患者1人1日当たりの給食部門の収支を厚労省が調べた結果、2004年の前回調査時と比べて悪化していました。

 そこで厚労省は、さらなる引き下げは行わない方向性を示し、さらに【入院時食事療養(II)】(栄養士らが食事を提供するといった基準を満たさない場合に算定、【入院時食事療養(I)】より低い)の「流動食のみを経管栄養法で提供する場合」の金額を、1食につき5円高くしてはどうかと提案しました。

 流動食を提供して算定する【入院時食事療養(II)】は現在、1食455円です。一方、食事療養費のうち患者が自己負担する額は、「食材費」相当から「食材費+調理費」相当へと見直され、来年度(2018年度)から1食460円になります。1食455円のままだと患者の自己負担分を下回ることから、理論上「患者が食事提供を受けるたびに、保険者に5円を支払わなくてはいけない」ことになります。こうした不合理を解消するために、【入院時食事療養(II)】を同額にするのが厚労省の提案で、これに対する反対意見は出ていません。

厚労省は、「費用の額」を「自己負担」が上回るのを避ける必要性を指摘した

厚労省は、「費用の額」を「自己負担」が上回るのを避ける必要性を指摘した

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