紹介状なしに外来受診した場合の特別負担、500床未満の病院にも拡大へ—中医協総会(3)
2017.11.9.(木)
現在、特定機能病院と一般病床500床以上の地域医療支援病院に義務付けられている「紹介状なし患者の特別負担(初診時5000円以上、再診時2500円以上)徴収」について、金額や除外患者は維持したまま、「より小規模な病院にも拡大」していくべき—。
11月8日に開催された、中央社会保険医療協議会・総会でこういった方向が概ね固まりました(関連記事はこちらとこちら)。
また、現在「許可病床数500床以上の病院などでは、地域包括ケア病棟入院料の新設を1病棟に限定する」など「病床数500床以上」に着目する診療報酬項目がありますが、これを例えば、特定機能病院の指定要件である「400床以上」などに見直す提案が厚生労働省から行われています。
目次
徴収金額(初診時5000円以上)や除外患者(救急患者など)の規定は、現行維持
「一般外来は診療所や中小病院が担い、大規模病院は専ら紹介外来や専門外来を担う」という外来医療の機能分化推進が求められています。「大規模病院に軽症の一般外来患者が殺到し、重症患者が適切な医療を受けられない」といった事態、「大規模病院の医師・看護師が一般外来に忙殺され、本来の機能である重症患者への医療提供が遅れてしまう」といった事態を防止し、医療の質向上を狙うものです。
これまでに▼200床以上の大病院において紹介状をもたない初診患者への選定療養導入(1996年健保法等改正)▼紹介率・逆紹介率の低い大病院における初診料等の減額(2012・14年度診療報酬改定)―などが導入され、さらに2016年度の前回診療報酬改定で「特定機能病院・一般病床500床以上の地域医療支援病院(以下、500床以上病院)では、紹介状なしに外来を受診する患者から、初診時に5000円以上、再診時に2500円以上の特別負担(選定療養)を徴収しなければならない」との仕組みが導入されました。
この仕組みについて、経済・財政再生計画の改革工程表では「対象の見直し」を2017年末までに検討するよう指示され、社会保障審議会・医療保険部会でも「拡充」の方針が固められており、今般、中医協でも具体的な検討が始まったものです。
厚労省保険局医療課の迫井正深課長は、▼500床以上病院では、紹介状なし外来患者割合が、改定前(2015年10)の42.6%から、改定後(2016年10月)には39.7%に低下した(低下率は2.9ポイント)▼200床以上500床未満の病院では、同じく改定前60.3%から改定後59.4%で、0.9ポイント低下した—といった調査結果などを踏まえ、「対象医療機関の拡大を検討してはどうか」と提案しています。最低徴収金額(初診5000円、再診2500円)と徴収除外患者(救急患者、公費負担医療患者など)は、現在の仕組みを維持する考えです。
委員からは特段の反論は出ておらず、今後、「どこまで対象病院を拡大するか」が検討されます。この点、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「200床以上の病院では紹介状なし外来患者から特別負担を徴収できるが、外来患者の8割は紹介状なしというデータがある。患者・国民の受療行動を変えなければいけない。思い切って200以上にまで拡大すべきではないか」と要望しています。
なお、公立病院などに新たに徴収義務を課すためには、条例改正が必要となるため「6か月の経過措置」が設けられます。
地域包括ケア病棟の新設制限、400床以上の病院にも拡大する可能性
現在の診療報酬では、「病床数500床」に着目した項目がいくつか設定されています。例えば、前述の「紹介状なし外来患者からの特別負担徴収義務」は、「許可病床数500床以上」の病院を対象としており、また地域包括ケア病棟入院料については、「許可病床数500床以上」の病院などでは「新設は1病棟に限定」されています。
迫井課長は、500床以上病院が減少している状況などを踏まえて、「病床数500床」の基準を見直してはどうか、とも提案しています。
この点、特定機能病院や臨床研究中核病院の指定要件を見ると「病床数400床以上」となっており、両者は必ず一致させなければならない性質のものではないものの、ターゲットの1つとなりそうです。
もっとも、単純に「500床→例えば400床」と置き換えるのではなく、▼各診療報酬項目の趣旨▼算定実績—なども見ていくことになります。診療側の松本純一委員(日本医師会常任理事)や松本吉郎委員(日本医師会常任理事)からは「現場の混乱がないようにすべき」との、支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)からは「そもそも500床以上と設定した背景や、現在の課題などを踏まえて検討すべき」との注文が付いており、今後、具体的なベッド数や、対象診療報酬項目の絞り込みを検討することになります。
なお、地域包括ケア病棟については、前述のように、現在「許可病床数500床以上」の病院(ほかICUな度の保有病院も)では、新設が「1病棟」に限定されています。大規模な高度急性期病院では、その機能に特化すべき(回復期機能などは他病院で担うべき)との厚労省の見解が伺える規定です。
ここで、基準値が「400床以上」に引き下げられた場合、経過措置の有無は別として、当然、400床以上の病院でも地域包括ケア病棟の新設が制限されることになります。病床戦略を考える上で(例えば7対1の維持など)、極めて重要な見直しとなるため、今後の動向に注意するとともに、自院の戦略策定を想起に行う必要があります。
医療資源の乏しい地域、病床数に着目した診療報酬をどう考えるか
ところで、医療資源が少ない地域では、診療報酬の届け出・算定のための要件が一部緩和されています。人員不足などに配慮したもので、2012年度の前回同時改定で導入されました。
2014・16年度改定では、対象地域の見直しや、対象診療報酬項目の拡大などが行われており、2018年度の次期改定でも一定の見直しが行われる模様です。迫井医療課長は、「病床数を要件とした診療報酬について、各項目の趣旨なども勘案しつつ、一定の配慮を行う」ことを提案しています(関連記事はこちら)。
例えば、病室単位での届け出が可能な【地域包括ケア入院医療管理料】(地域包括ケア病棟入院料は『病棟』単位の届け出必要)は、全国一律で「許可病床数200床未満」の病院でした届け出が認められていません。このような、病床数に着目した診療報酬項目について、▼医療資源の少ない地域でも、同じ基準(病床数)でよいのか▼そもそも基準(病床数)が妥当か—といった点を検討することになりそうです。
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