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GemMed塾 看護モニタリング

2016年度改定後に一般病院の損益比率は▲4.2%、過去3番目に悪い—中医協総会(1)

2017.11.8.(水)

 2016年度の前回診療報酬改定の前後で比較すると、病院の経営はおしなべて悪化している。改定後の損益は、一般病院全体でマイナス4.2%の赤字となっており、過去と比較しても3番目に悪い数値である—。

 11月8日に開催された中央社会保険医療協議会・総会に報告された第21回医療経済実態調査(医療機関等調査)から、こういった状況が明らかになりました。一方で、保険者の財政状況は概ね好転しています。今後の改定率決定論議において、この結果がどう影響するのか、注目が集まります。

11月8日に開催された、「第368回 中央社会保険医療協議会 総会」

11月8日に開催された、「第368回 中央社会保険医療協議会 総会」

給与費増によって、「収益の伸びを、費用の伸びが上回る」状況

 医療経済実態調査は、医療機関等調査と保険者調査で構成されます。このうち前者の医療機関等調査は、直近の(つまり前回の)診療報酬改定の前後で、医療機関の経営状況がどう変化したかを調べるもの、後者の保険者調査は保険者の財政状況はどう変化したかを調べるものです。

まず医療機関等調査のうち、病院の経営状況を見てみましょう。一般病院全体の損益(医業収益+介護収益-医業・介護費用)比率は、改定前の2015年度には▲3.7%でしたが、改定後の2016年度には▲4.2%で、0.5ポイント悪化しました。厚生労働省保険局医療課保険医療企画調査室の矢田貝泰之室長は「過去と比べても、下から3番目くらいに悪い数字である」ことを指摘。一般病院の経営状況が2016年度改定後に悪化している状況が伺えます。

一般病院全体の経営状況、損益比率はマイナス4.2%、つまり赤字で、過去3番目に悪い数字のようだ

一般病院全体の経営状況、損益比率はマイナス4.2%、つまり赤字で、過去3番目に悪い数字のようだ

 
また一般病院について開設主体別に損益の状況を見ても、次のようにおしなべて「悪化」していることが分かります。

【医療法人】2015年度(改定前)2.1%→2016年度(改定後)1.8%:0.3ポイント悪化

【医療法人+公的(日赤や済生会など)】2015年度(改定前)0.4%→2016年度(改定後)0.1%:0.3ポイント悪化

医療法人(上段)、医療法人+公的(下段)

医療法人(上段)、医療法人+公的(下段)

 
【国立】2015年度(改定前)▲1.3%→2016年度(改定後)▲1.9%:0.6ポイント悪化

【公立】2015年度(改定前)▲12.8%→2016年度(改定後)▲13.7%:0.9ポイント悪化

国立病院(上段)、公立病院(下段)

国立病院(上段)、公立病院(下段)

 
【国立+公立】2015年度(改定前)▲10.2%→2016年度(改定後)▲11.1%:0.9ポイント悪化
国立病院+公立病院

国立病院+公立病院

 
 経営悪化の背景として、矢田貝保険医療企画調査室長は「収益の伸びに比べて、費用の伸びが大きかった。とくに給与費の伸びが大きい」点をあげています。一般病院全体で見ると、▽医業収益は2015年度から16年度にかけて0.4%増加▽医業費用は同じく0.8%増加—しています(介護収益は1.3%増加しているが、一般病院では構成割合が極めて小さい)。

また給与費の伸び率(2015年度から16年度)を見ると、▽一般病院全体では2.1%増▽医療法人では1.8%増▽国立では0.4%増▽公立では3.2%増▽公的では1.3%増―と、概ね大きな数字となっています。

国立病院では給与費は0.4%増と小さいですが、医薬品費が3.3%と大きく伸びている点が経営を圧迫していると考えられ、より詳細な分析が待たれます。

 
なお、特定機能病院では2016年度の損益比率がマイナス5.8%、7対1病院では同じくマイナス4.2%なのに対し、療養病棟入院基本料1を算定する病院ではプラス2.4%などとなっている状況を見ると、「急性期病院で経営が悪化している」ようです。

 
一方、保険者の財政状況を見ると、概ね「黒字、かつ黒字幅の拡大」が見られます。「保険者財政が好転し、病院経営が悪化している」状況を、2018年度の次期改定に向けてどう考えるのか(素直に「病院経営改善のための手当て(いわばプラス改定)が必要」と考えるのか、「保険者財政の好転は一時的なもので、国家財政や国民負担を考慮し、プラス改定は避けるべき」などと考えるのか)、今後の議論に注目が集まります。
 
改定率は年末の予算編成過程で内閣において決定されますが、中医協が意見を述べることも可能です。この日の総会では、診療側・支払側ともに「詳細に分析し、意見を述べる」(11月下旬見込み)こととしており、その後、2018年度改定に向けた意見が両側から示され、例えば「プラス改定(あるいはマイナス改定)が必要」などの意見集約が可能か、調整が行われます(意見集約できないこと、両論併記となることもある)(12月上旬見込み)。

 
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