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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

医療体制の体制強化で守れる命がある、妊婦への外来医療など評価充実へ―中医協総会(1)

2017.10.11.(水)

 妊婦への医療提供に当たっては▼医薬品によっては催奇形性がある▼頻度の高い合併症がある―点を踏まえなければならないなど、特別の配慮が必要ため「外来医療での評価」を充実する必要があるのではないか—。

10月11日に開催された中央社会保険医療協議会・総会では、こういった議論が行われました。▽救急医療▽周産期医療▽小児医療▽医療安全―が検討テーマとあっており、今回は「周産期医療」に焦点を合わせ、救急医療などは別稿でお伝えします。

医薬品選択や合併症診断などの「配慮」を評価

妊婦への医療提供に当たっては、母体だけでなく胎児も含めた特別な配慮が必要となります。例えば、医薬品を投与する際に「この医薬品には催奇形性はないか、胎児毒性はないか」といった点を考慮しなければならなりません。また妊婦では「尿路感染症」が合併する頻度が高く、虫垂炎や伝染性紅斑(パルボウイルスB19感染症)の診断が困難であるといった特徴があります。

こうした特徴・特性への配慮は医療機関が当然行わなければならないことではあるものの、医療機関の労力に対して適切な評価はなされるべきでしょう。さもなければ「妊婦への十分な医療提供」が阻害される可能性もあるからです。

このため厚生労働省保険局医療課の迫井正深課長は、「妊婦の外来管理に対する評価」を検討してはどうかと提案しています。具体的な点数設計は今後の検討を待たなければなりませんが、例えば妊婦が外来を受診した場合の「加算」や、別の「医学管理」などが創設される可能性が高いと考えられ、ここでは「●●疾病のみ」「●●診療科のみ」といった限定は行われない見込みです。

精神疾患を合併する妊婦に、地域連携で総合的に対応する体制を評価

ところで、合併症を持つ妊産婦への「多診療科が連携した」対応も重要です。この点、例えば脳血管障害などの「身体合併症」には多くの周産期母子医療センターなどで対応する体制が整備されていますが、「精神疾患」の合併症への対応体制は未だ十分とは言えません。しかも、「精神疾患」を合併している妊産婦は、「呼吸器疾患」や「消化器疾患」を合併している妊産婦と同じ程度おり、「精神疾患」への対応が急がれる状況です。

精神疾患を合併した妊産婦に十分に対応できる周産期母子医療センターの整備はまだ途上にとどまっている

精神疾患を合併した妊産婦に十分に対応できる周産期母子医療センターの整備はまだ途上にとどまっている

精神疾患を合併している妊産婦の割合は、呼吸器疾患・消化器疾患の合併をもつ妊産婦割合と同程度である

精神疾患を合併している妊産婦の割合は、呼吸器疾患・消化器疾患の合併をもつ妊産婦割合と同程度である

 
さらに、妊産婦異状死の相当程度は「うつ病」などによる自殺であるとの研究結果があり、迫井医療課長は「医療体制の強化などで防ぐことができるのではないか」と指摘しています。
東京都では、2005-14年までに89例の妊産婦異状死があり、うち63例が「自殺」であるがそのうち一定程度(赤丸囲み部分)は「うつ」など、適切な医療体制の強化で防げるのではないかと厚労省は考えている

東京都では、2005-14年までに89例の妊産婦異状死があり、うち63例が「自殺」であるがそのうち一定程度(赤丸囲み部分)は「うつ」など、適切な医療体制の強化で防げるのではないかと厚労省は考えている

 
こうした合併症を持つ妊産婦への総合的管理を評価するために診療報酬上は【ハイリスク妊娠管理加算】【ハイリスク分娩管理加算】などの項目が整備されており、2016年度の前回診療報酬改定で「精神疾患」も対象に加えられました。しかし、いずれの診療報酬項目も対象は「入院患者」に限定されており、例えば精神疾患を合併する妊産婦に対して、外来医療を提供して手厚い対応を行ったとしても、十分な評価はなされていません。
ハイリスクの妊産婦に対する管理を評価する加算は、いずれも「入院患者」が対象となっている

ハイリスクの妊産婦に対する管理を評価する加算は、いずれも「入院患者」が対象となっている

 
そこで迫井医療課長は、「精神疾患を有する妊婦に対し、地域で▼産科▼精神科▼自治体―などが有機的に連携して患者の診療を行う体制」を診療報酬で評価してはどうかと提案しています。例えば産科医療機関(病院、診療所)が、地域の小児科医療機関、精神科医療機関、保健センター、自治体、子育て支援機関、児童相談所、NPO団体などと連携して「多領域」協働チームを構築することなどが考えられます。「妊婦健診において『うつ状態にあるのではないか』などと保健所が疑った場合に、精神科受診を勧め、精神科がかかりつけの産科医療機関、さらには自治体などと連携して、その妊婦を総合的にサポートしていく」ことなどが期待されます。
多職種連携による妊産婦サポートのイメージ

多職種連携による妊産婦サポートのイメージ

 
この提案に対して委員の多くは賛意を表明するとともに、「多くの精神科医が妊産婦に対応できよう、勉強会や講習会なども積極的に開催する必要がある」(松本吉郎委員:日本医師会常任理事)、「より実効性を持たせるため、単なる連携だけでなく、『精神科医師の配置』『必要な研修の受講』などを要件化する必要がある」(平川則男委員:日本労働組合総連合会総合政策局長)といった注文をしています。今後の具体的な点数設計が注目されます。

  
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