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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

臓器移植後の長期入院、患者からの「入院料の15%」実費徴収禁止の対象に―中医協総会

2017.10.27.(金)

 2018年度の診療報酬改定に合わせて、▼造血幹細胞移植後・臓器移植後の拒絶反応に対する治療を実施する場合、180日を超える入院であっても「入院料の15%」を患者から徴収してはならない▼患者の求めに応じて画像・動画情報の提供や、公的手続きの代行になどに係る費用を患者がから徴収可能であることを明確にする―といった選定療養の見直しを行う—。

 10月27日に開催された中央社会保険医療協議会の総会で、こういった点が了承されました。

10月27日に開催された、「第366回 中央社会保険医療協議会 総会」

10月27日に開催された、「第366回 中央社会保険医療協議会 総会」

臓器移植後の拒絶反応に対応するための長期入院は、社会的入院ではない

 わが国の医療保険制度では、安全性・有効性が確認され広く国民が享受すべき医療は「保険給付」の対象となります。逆に安全性・有効性が十分に確立されていない医療を受ける場合には、保険給付が受けられなくなります(混合診療の禁止)。

 ただし、保険給付されない医療にもさまざまなあり、例えば「一定程度、安全性・有効性が確保され、将来的に保険給付を目指す医療」などは、患者の利益も考慮して保険給付と保険外の医療とを同時に受けることが可能です(保険外併用療養費)。保険外併用療養費には、(1)評価療養(2)選定療養(3)患者申出療養―の3区分があり、(1)の評価療養には「先進医療」や「治験に係る診療」などがあり、(3)の患者申出療養は、患者の申し出を起点として先進的な医療技術の保険外併用を認めるものです(こちらも保険収載を目指す)。

保険外併用療養費制度には、▽評価療養(先進医療など)▽選定療養(差額ベッドなど)-がある

保険外併用療養費制度には、▽評価療養(先進医療など)▽選定療養(差額ベッドなど)-がある

 
 また(2)の選定療養は、「差額ベッド」や「200床以上の大病院における紹介状がない場合の特別負担」、「制限回数を超える医療行為」など療養の給付とは直接関係のない10項目について、患者に適切な説明を行い、同意を得ることを条件として「実費徴収」を可能とするものです。厚生労働省は、2016年度の前回診療報酬改定論議の中で、「選定療養の対象拡充を含めた不断の見直しを行う仕組みを構築せよ」との日本再興戦略改訂2014の指示を受け、学会や医療関係団体をはじめ広く「選定療養拡大に向けた提案・意見」を募集する仕組みを構築しています(こちら)。

 
 現在の選定療養の1項目に「180日を超える入院」があり、入院の必要性が低いものの、患者側の事情で180日を超える入院をしている場合に、「入院料の15%」を患者から徴収することが可能となります(病院に支払われる入院料が15%減額され、その減額部分を患者から徴収可能)。この趣旨は、いわゆる社会的入院の是正にありため、▼難病患者▼重篤な患者(A221【重症者等療養環境特別加算】の算定患者)▼重度の肢体不自由者、脊髄損傷などの重度障碍者▼重篤な副作用のある抗がん剤を投与されている患者―などでは、「長期入院の必要性がある」として実費徴収は認められません(費用徴収の禁止)。

この点について、今般、医療関係団体などから「造血幹細胞移植後・臓器移植後の拒絶反応に対する治療を実施する場合にも、入院が長期になり、退院後も1か月以内に再入院するケースが少なくない」との提案が寄せられていることを受け、厚労省保険局医療課の迫井正深課長が「費用徴収禁止の対象に追加してはどうか」と提案したものです。中医協委員から反論・異論は出ておらず、2018年度の次期改定に合わせて、「造血幹細胞移植後・臓器移植後の拒絶反応に対する治療を実施する場合、180日を超える入院であっても『入院料の15%』を患者から徴収してはならない」こととなります。

セカンドオピニオン用でない画像・動画の提供、実費徴収可能な旨を明確化

また、「治療(看護)と直接関係のないサービス・物」については患者から実費を徴収することが認められますが、適正な運用を確保するために、厚労省は通知「療養の給付と直接関係のないサービス等の取扱いについて」を発出しています。そこでは、例えば、「サービスなどの内容を明確かつ懇切に説明し、同意を確認した上で費用を徴収する」こと、選択の幅が小さくなってしまう入院患者などに高額な物品購入を求めることがないよう「社会的に見て妥当適切な費用とする」ことや、「徴収した費用を、他と区別した内容のわかる領収書を発行する」ことなどを定めるとともに、費用徴収可能なサービス・物の具体例(テレビ代、理髪代、クリーニング代、証明書代、診療録の開示手数料など)を示しています。

この点について、今般、医療関係団体などから「患者が自分の画像・手術動画などを希望するケースが増えている」「突然の入院で、患者自身(例えば独居)が行うべき役所手続きなどを、医療機関負担で行っているケースも増えてきている」といった声が寄せられました。これらの費用は治療(看護)とは関係ないため、現在でも実費徴収が可能ですが、迫井医療課長は「実費徴収可能である旨を明記する」考えを提示しました。もっとも、患者が他医療機関の医師から助言を求めるために(いわゆるセカンドオピニオン)、自身の画像などの提供を求める場合は「治療(看護)と関係する」ため、この場合の費用は実費徴収できない(保険給付される)ことも併せて明確化されます。

 
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