選定療養の類型拡大へ議論開始、学会や国民の声を反映-中医協総会
2015.1.28.(水)
中央社会保険医療協議会の総会は28日、保険診療と保険外診療の組み合わせを例外的に認め、快適な療養環境を整備するために設けられた「選定療養」の類型の見直しに向けて検討することを決めました。学会や国民からの「選定療養」に関する提案・意見を基に、類型を見直す必要があるかどうかを中医協で議論していくことになります。
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公的医療保険では、安全性、有効性が確立された医薬品、医療機器を用いた医療技術は保険給付対象に含めることが原則です(保険診療)。裏を返せば、保険給付外の医療技術(保険外診療)については安全性、有効性が確立されていないと考えられます。そこで、医療の質を担保するために「保険診療と保険外診療を組み合わせて提供する」ことは原則として認められていません(混合診療の禁止)。
ただし、安全性や有効性について一定のエビデンスがある最新の医療技術や、快適な療養環境を求める患者も少なくないため、保険診療と保険外診療を例外的に組み合わせることも可能です。前者が「評価療養」(先進医療など)、後者が「選定療養」で、これらを合わせて「保険外併用療養費制度」と呼びます。
「選定療養」はアメニティーの向上を希望する患者のニーズに応えるもので、現在、次の10類型があります。
(1)特別の療養環境(個室などの差額ベッド)
(2)歯科の金合金など
(3)金属床総義歯
(4)予約診療
(5)時間外診療
(6)大病院の初診(200床以上で、紹介状のない患者から特別料金を徴収可能)
(7)大病院の再診(200床以上で、逆紹介しても来院する患者から特別料金を徴収可能)
(8)小児う蝕の指導管理
(9)180日超の入院(入院料が減額され、その減額分を患者から徴収可能)
(10)制限回数を超える医療行為
2014年6月に閣議決定された「日本再興戦略」改訂2014では、「対象の拡充を含めた不断の見直しを行う仕組みを構築する」ことが掲げられました。さらなるアメニティーの向上を目指す医療機関の要望に応えるとともに、産業の活性化を狙う側面もあると考えられます。
この日の中医協総会では、こうした方針を受け、厚生労働省保険局の宮嵜雅則・医療課長が次のような「提案・意見募集」の仕組みを設けることを提案し、了承されました。15年3月から提案や意見の募集が始まります。
▽外科系学会社会保険委員会連合(外保連)、内科系学会社会保険連合(内保連)、日本歯科医学会に依頼し、関係学会からの提案・意見を報告してもらう
▽日本医師会(日医)や日本歯科医師会、病院団体などの医療関係団体から提案・意見を募集する
▽厚労省のホームページを通じて、国民から提案・意見を幅広く募集する
寄せられた提案・意見は中医協に報告され、これらを踏まえて15年4月から、「選定療養」の類型見直しに向けた議論が行われます。そこでは、「選定療養」として追加される項目もあれば、「療養の給付とは直接関係のないサービスなどにあたり、実費徴収が可能」と整理される項目もあると予想されます。
この点、中川俊男委員(日医会副会長)や矢内邦夫委員(全国健康保険協会東京支部長)は、「経済力により受けられる医療に格差が出ないようにしなければならない」と指摘しました。これに対し、宮嵜医療課長は「この仕組みで保険給付範囲を変更することは考えていない。あくまでアメニティー向上という範囲内での検討」と強調しています。
28日の総会ではこのほか、2つの新たな臨床検査を保険収載することを了承しました。15年2月から収載される見込みです。
新たに保険収載されるのは、次の臨床検査です。
▽根治切除不能な悪性黒色腫患者に対する、BRAF阻害剤投与の適応判断を目的としたリアルタイムPCR法による「BRAF V600(BRAF遺伝子の変異)」の測定(6520点)
▽原発性免疫不全などが疑われる患者に対するネフェロメトリー法による血清・血漿中の「IgG2」の測定(388点)
「IgG3」測定の保険収載についても提案されましたが、関係学会の意見を踏まえて整理し直し、あらためて中医協に提案することとされています。
また、パラジウムなどの価格上昇を受け、歯科用貴金属価格が15年4月から下表のように引き上げられます。