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非常勤医師を組み合わせて「常勤」とみなす仕組みを拡大へ—中医協総会(2)

2017.11.8.(水)

 育児中や高齢などで、非常勤で病院などに勤務せざるを得ない医師が増える状況に鑑みて、小児科や産婦人科、夜勤の緊急対応の必要性が低い場合などには、非常勤医師を複数組み合わせて「常勤」とみなす仕組みを、2018年度の次期診療報酬改定で拡大してはどうか―。

 11月8日の中央社会保険医療協議会・総会では、こういった議論も行われました。

11月8日に開催された、「第368回 中央社会保険医療協議会 総会」

11月8日に開催された、「第368回 中央社会保険医療協議会 総会」

非常勤医師の活躍により、勤務医1人1人の負担の軽減を目指す

 小児入院医療管理料や麻酔管理料、救命救急入院料3・4など、様々な診療報酬項目では、施設基準などで「常勤医師の配置」が求められています。これは、緊急事態などに「直ちに医師が対応できる」環境を整備することなどが主な目的ですが、個々の診療報酬項目を見ると「緊急対応が必要となる」ケースが低いものもあるようです。
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 一方で、女性医師や高齢医師が増加する中では「常勤」が難しい医師も増えており、例えば、育児中の女性医師は「週当たり3-4日の日数減勤務」や「1日当たり6-7時間の時間短縮勤務」を選択することも多いという調査結果があります。この場合、女性医師側は「常勤は難しく、非常勤で働きたい」と考えますが、医療機関側は上記の施設基準に照らして「常勤の医師」を採用したいというミスマッチが生じている可能性があります。
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さらに、医師の働き方改革の中で「勤務医の負担軽減」が重要なテーマとなっており、非常勤医師の活躍の場が広がれば、それだけ(常勤に限らず)1人当たりの勤務医の負担が軽減すると期待できます。

そこで厚生労働省保険局医療課の迫井正深課長は、▼小児科▼産婦人科(ここでは女性医師が多い)▼その他専門性の高い特定の領域(例えば超急性期脳卒中加算など)▼夜間などの緊急対応の必要性が低い診療報酬項目—を組み合わせて勘案し、「週一定時間の勤務を行っている複数の非常勤医師の組み合わせによって、常勤医師配置とみなしてはどうか」との提案を行いました。例えば、例示した「超急性期脳卒中加算」では、専門性の高い医師が限定されるため非常勤医師の活用が期待されますが、一方で、緊急対応も必要なため、両者を勘案して、この「みなし常勤」の対象とするかどうかなどを検討することになります。すでに小児入院医療管理料では、こうした「みなし常勤」が認められており、これを拡大する提案と言えます。
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 この提案に診療側の松本純一委員(日本医師会常任理事)・松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は諸手をあげて賛成。支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)も、この方向に賛意を示していますが、「ICTなどを活用した患者情報の共有などが前提となる」と注文を付けています。

 また、医師を含めた医療従事者の負担軽減に向け、迫井医療課長は次のような提案も行っています。

▼【医師事務作業補助加算】の効果なども踏まえた、勤務負担軽減(現在、総合入院体制加算などの要件となっている)の取り組み促進

▼看護師、管理栄養士、歯科衛生士、歯科技工士における「常勤の必要性が低い」業務の常勤要件見直し

▼ICU医師の「常時、治療室内勤務」の見直し(ICU入室前の患者に入室前から診療を行うことなどを認める)

▼ICTを活用した医師の柔軟な配置促進

▼看護師の負担軽減に向けた看護補助者との業務分担・協働推進(▽看護業務の見直し▽看護補助者への研修▽身体抑制減の対応—など)

▼障害者病棟(7対1、10対1)における看護補助加算の新設

▼慢性期病棟における夜間の看護補助者配置の評価充実

 これらについて支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「働き方改革と診療報酬は別もの」との疑問を投げかけましたが、他の委員(支払側も含めて)からは提案に反対する明確な意見は出ていません。医療従事者の負担軽減は、これまでの診療報酬改定でも重要論点として議論されており、負担経験による「医療の質向上」(医療安全も含めて)は必要な財源を確保して進めるべきテーマと考えるべきでしょう。

 看護師と看護補助者との役割分担についても、「看護補助者の業務範囲を広げ、看護師は国家資格を持つ看護師でなければできない業務に専念する」ことで負担を軽減するとともに、慢性的な看護師不足にも対応できると考えられます。
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 ただし「かかりつけ薬剤師の要件緩和」(現在、週当たり32時間以上勤務などが要件)も提案されましたが、診療側・支払側の双方から「患者との信頼関係が構築されてから、要件緩和を議論するべき」との反対意見が数多く出され、2018年度改定での緩和は見送られる公算が大きいようです。

 
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