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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

地域包括ケア病棟、自宅等からの入棟患者の評価を充実へ—入院医療分科会(2)

2017.9.19.(火)

 2018年度の次期診療報酬改定に向けて、自宅などから患者を多く受け入れている地域包括ケア病棟について評価を充実できないか、退院直後の患者にもリハビリを提供する回復期リハビリ病棟を評価できないか—。

診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(以下、入院医療分科会)では、中間取りまとめ案の修正内容を武藤正樹分科会長(国際医療福祉大学大学院教授)に一任する形で、9月15日に了承(関連記事はこちら)。そこからは、こういった方向を読み取ることができそうです。

【救急・在宅等支援病床初期加算】を活用した評価充実を検討する可能性

 地域包括ケア病棟は(1)急性期後患者の受け入れ(2)自宅などからの緊急時の受け入れ(3)在宅・生活復帰支援—という3つの機能を持つ病棟として、2014年度の診療報酬改定で新設されました。

 厚労省の調査では、▼(1)の急性期後患者が9割を占める病棟が多いが、(2)の自宅等患者を一定程度受け入れている病棟もある▼(1)の急性期後患者と(2)の自宅等患者とを比べると、(2)の自宅等患者のほうが状態が不安定な傾向がある—ことが分かりました。

 患者の状態について詳しく見てみると、例えば次のような状況が浮かび上がってきています。

▼患者の医療的な状態を見ると、「安定している」患者の割合が、「自宅などからの入院患者」(67.1%)では、「自院の7対1などからの転棟患者」(76.2%)、「他院の7対1などからの転院患者」(70.7%)より低い

自宅などからの入院患者では、急性期後の転院・転棟患者よりも「状態が安定している患者」の割合が若干低い

自宅などからの入院患者では、急性期後の転院・転棟患者よりも「状態が安定している患者」の割合が若干低い

 
▼医学的な要因以外で退院できない患者の割合を見ると、「自院の7対1などからの転棟患者」(17.3%)では、「他院の7対1などからの転院患者」(10.6%)、「自宅などからの入院患者」(8.2%)に比べて高い
自院の急性期病棟からの転院患者では、他院の急性期病棟からの転棟患者や自宅などからの入院患者に比べて、「医学的な要因」以外で退院できない患者の割合が高い

自院の急性期病棟からの転院患者では、他院の急性期病棟からの転棟患者や自宅などからの入院患者に比べて、「医学的な要因」以外で退院できない患者の割合が高い

  
▼状態が不安定で急性期治療を行っているので退院できない患者の割合を見ると、「自宅などからの入院患者」(26.7%)では、「自院の7対1などからの転棟患者」(8.6%)、「他院の7対1などからの転院患者」(3.2%)よりも高い
自宅などからの入院患者では、急性期後の転院・転棟患者に比べて、「状態が不安定で急性期治療を行っており、退院できない」患者の割合が高い

自宅などからの入院患者では、急性期後の転院・転棟患者に比べて、「状態が不安定で急性期治療を行っており、退院できない」患者の割合が高い

 
 厚労省は具体的な方向性こそ示していませんが、(2)の自宅等患者の評価を手厚くし、受け入れを促進することを狙っていると考えられます。例えば、▼自宅等患者の割合が高い病棟について入院料を引き上げたり、加算をつける▼自宅等患者について入院料を引き上げたり、加算をつける—ことなどが考えられ、とくに後者について【救急・在宅等支援病床初期加算】の見直しが注目されることをメディ・ウォッチでお伝えしました(関連記事はこちらこちら)。

現行の【救急・在宅等支援病床初期加算】は、▼急性期を担う他院の一般病棟▼自宅・介護老人保健施設・特別養護老人ホーム、有料老人ホームなど▼急性期を担う自院の一般病棟—からの患者について、14日まで、1日150点が入院料に上乗せされるものです。例えば算定対象を自宅等患者に限定し、急性期後患者での算定を不可とすれば、患者1人当たり最大2100点(2万1000円、150点×14日)の格差を設けることができます。今後、中医協で具体的な点数設計論議が行われます。

回復期リハビリ病棟、退院後の患者へのリハビリ提供を評価する可能性

回復期リハビリ病棟に関しては、「退院後のリハビリ」が注目されています。回復期リハビリ病棟では、集中的なリハビリを提供し在宅復帰を目指していますが、「退院後のADLと退院から1か月後のADLを比較すると、後者で低下してしまう」という研究結果があります。

回復期リハビリ病棟の退院時から退院後1か月にかけて、ADLが低下してしまうという研究結果がある。詳細を見ると、通所サービス利用者でADL低下があることが明らかになっている

回復期リハビリ病棟の退院時から退院後1か月にかけて、ADLが低下してしまうという研究結果がある。詳細を見ると、通所サービス利用者でADL低下があることが明らかになっている

 
厚労省の調べでは、多くの回復期リハビリ病棟で理学療法士などを大幅に加配していることが分かっています。もちろん加配されたリハビリスタッフの手が空いているわけではありませんが、専従でない理学療法士であれば(施設基準上は、回復期リハビリ病棟1であれば専従の理学療法士は3名でよい)、病棟から離れて積極的に退院後患者にリハビリを提供することが可能です。これにより退院後にもADLの維持・向上が実現すれば、再入院や他のリハビリ利用を減らすことにもつながります。今後、中医協でどのような報酬設計論議が行われるのか注目が集まります(関連記事はこちら)。
回復期リハビリ病棟1ではリハビリ専門職を加配しているところがほとんどで、2、3の病棟でも相当数が加配している

回復期リハビリ病棟1ではリハビリ専門職を加配しているところがほとんどで、2、3の病棟でも相当数が加配している

 

療養病棟、医療区分と患者の状態には一定の相関あり

療養病棟に関しては、▼データ提出の促進▼医療区分▼患者の状態—といった点について議論が行われています。このうち医療区分については、医療現場から「医療区分1は『医療区分2・3以外の患者』と定義され、重症で医療の必要性が高い患者も含まれている。医療区分について、廃止を含めた抜本的見直しが必要」との指摘がなされています。

しかし入院医療分科会では、「医療区分3において状態が不安定で、医療提供頻度の高い患者が多く、医療区分1において状態が安定し、医療提供頻度の低い患者が多い」というデータが示され、「医療区分による分類と、患者の医療ニーズとの間には一定の相関がある」という議論が行われています。この点を2018年度改定に向けてどう考えていくのか、今後の中医協論議に注目する必要があります(関連記事はこちらこちら)。

医療区分が上がるほど、状態が不安定な患者の割合が高くなる

医療区分が上がるほど、状態が不安定な患者の割合が高くなる

医療区分が上がるほど、医師による直接の医療提供頻度が高くなる

医療区分が上がるほど、医師による直接の医療提供頻度が高くなる

医療区分が上がるほど、直接看護の頻度が高くなる

医療区分が上がるほど、直接看護の頻度が高くなる

入院前からの「退院を見越した支援」を評価へ

 さらに全病棟に共通する重要テーマとして、▼入退院支援▼データ提出—などがあります。

 前者は、入院する前から退院を見越した支援を行うことの重要性を説くもので、【退院支援加算】をより充実する方向が見え隠れしています(関連記事はこちら)。

 後者については、回復期リハビリ病棟や療養病棟においてもデータ提出を義務化してはどうかという議論が行われています。もっとも小規模の病院では体制・人員の整備が困難なこともあり、10対1病棟のように「200床以上」の病院から義務化するといった手法が検討されることでしょう。さらに、これを期に項目の見直しなども検討されることになりそうです(関連記事はこちら)。

 
入院医療分科会では、2017年度の調査結果(一般病棟・ICUなどにおける重症度、医療・看護必要度、短期滞在手術、総合入院体制加算、救急医療管理加算など)を踏まえてさらなる分析を行い、最終取りまとめをめざします。

  
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