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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

重症度基準を満たす患者割合、7対1病院の7割で25-30%、3割の病院で30%以上—入院医療分科会(1)

2017.6.7.(水)

昨年(2016年)8-10月における「重症度、医療・看護必要度に該当する患者割合」は、7対1病院の7割で25%以上30%未満、3割の病院で30%以上となっており、全体では28.8%となった。また7対1病院の病床利用率は、2016年度の前回診療報酬改定後に若干の減少となっている—。

このような調査結果が、7日に開催された診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」で厚生労働省から報告されました。今後、より詳しい分析を行い、2018年度改定に向けた議論が行われます。

6月7日に開催された、「平成29年度 第2回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」

6月7日に開催された、「平成29年度 第2回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」

病棟群単位の入院基本料届け出はわずか1.2%にとどまり、届け出予定もなし

診療報酬改定に向けた論議は最終的には中央社会保険医療協議会の総会で行われ、そこで改定内容が決定されますが、入院医療については事前に「専門的な調査・分析」と「技術的な課題に関する検討」を下部組織である「入院医療等の調査・評価分科会」(以下、入院医療分科会)で行います。

入院医療分科会では、2016年度の前回改定が入院医療に与えた影響を把握するため、2016年度・17年度の2回に分けた調査を行っており、7日には下記4項目の2016年度調査結果(速報)が厚労省から示されました(関連記事はこちらこちらこちら)。

(1)一般病棟入院基本料・特定集中治療室管理料における看護必要度などの施設基準の見直しの影響(その1)

(2)地域包括ケア病棟入院料の包括範囲の見直しの影響

(3)療養病棟入院基本料などの慢性期入院医療における評価の見直しの影響

(4)退院支援における医療機関の連携や在宅復帰率の評価の在り方

今回は(1)の結果を眺めてみましょう。まず「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)についてです。

2016年度改定では、看護必要度のA項目・B項目について一部見直し(例えば救急搬送後の入院について2日間をA項目2点と評価するなど)を行い、手術などの医学的状況を評価するC項目(開頭手術を行った場合は7日間をC項目1点と評価するなど)を新設しました。さらに看護必要度該当患者の定義について、従前の「A項目2点以上かつB項目3点以上」に▼A項目3点以上▼C項目1点以上を加え、7対1の施設基準となる「看護必要度に該当する患者割合」の基準値を従前の15%以上から25%以上に引き上げました(関連記事はこちらこちらこちら)。

こうした施設基準厳格化によっても、2016年度改定前に7対1を届け出ていた施設のうち98%は依然として7対1の届け出を継続していますが、▼一部を休床した(11.3%)▼一部または全部を地域包括ケア病棟入院料1へ転換した(9.0%)▼一部を地域包括ケア入院医療管理料1へ転換した(4.0%)▼一部または全部を10対1へ転換した(2.3%)―という具合に転換などを行っている施設もあります。

98%の病院では7対1を維持しているが、一部や全部を他病棟に転換した病院も決して少なくない

98%の病院では7対1を維持しているが、一部や全部を他病棟に転換した病院も決して少なくない

 
転換の理由としては、「看護必要度を満たせない」がもっとも多く32.7%。次いで「より患者の状態に即した医療提供のため」(25.0%)、「より地域のニーズに合った医療提供のため」(21.2%)などと続きます。施設基準厳格化の影響が一定程度出ていると考えられます。
7対1から他病棟などへの転換理由を見ると、看護必要度を満たせず7対1を断念した病院がもっとも多い

7対1から他病棟などへの転換理由を見ると、看護必要度を満たせず7対1を断念した病院がもっとも多い

 
なお7対1から10対1へ転換する際のワンクッションとして、2016年度改定では「病棟群単位の入院基本料届け出」(7対1と10対1のミックスを時限的に認める)が可能になりましたが、届け出はわずか1.2%(8施設)にとどまり、届け出予定はないとする病院が圧倒的多数を占めていす。この点について島弘志委員(社会医療法人雪の聖母会聖マリア病院病院長)は「病棟群単位の届け出は画期的な仕組みだが、使い勝手が悪い。7対1の患者像、10対1の患者像といった本質的な議論をし、病棟群の方法を変える必要がある」と要望しています。
病棟群はわずか8施設しか届け出ておらず、今後の届け出意向m極めて芳しくない

病棟群はわずか8施設しか届け出ておらず、今後の届け出意向m極めて芳しくない

看護必要度25-30%が7割、30%以上が3割

次に7対1を届け出ている病院において、看護必要度該当患者の割合(2016年8-10月)がどうなっているのかを見ると、▼20%以上25%未満が4.7%▼25%以上30%未満が67.1%▼30%以上35%未満が23.5%▼35%以上40%未満が4.3%▼40%以上45%未満が0.4%—となっています。全体では28.8%という状況です。

7対1の7割で看護必要度該当患者の割合が25-30%、3割で30%以上

7対1の7割で看護必要度該当患者の割合が25-30%、3割で30%以上

 
この数字については、「7割近い病院が30%未満なので、基準値(現在25%以上)の引き上げは困難」といった見方もできますし、「7対1病院・病床の適正化がさらに必要であり、基準値を引き上げるべき」と考える人もいるでしょう。今後、入院医療分科会や中医協でどう解釈されるかに注目が集まります。

ただし、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)の研究では「多くの病院において、看護必要度データの精度に問題がある」ことが分かっています。上記の数値を検討する前提として「精度が十分か(例えば請求データにないA項目のチェックがある、あるいはその逆など)」を確認する必要があるかもしれません(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

なお看護必要度該当患者割合が25%を満たしていなくとも、それが「暦月で3か月を超えない期間の1割以内の一時的な変動」であれば許容されるので、上記4.7%(20%以上25%未満)が7対1の施設基準を満たさないということにはなりません。

7対1の病床利用率は、2016年度改定後に0.8ポイント低下

7対1病棟の病床利用率に目を移しましょう。2016年度改定前の2015年10月には79.0%でしたが、改定後の2016年10月には78.2%となり、0.8ポイント減少しました。また利用率の最頻値は、改定前は「85%以上90%未満」でしたが、改定後は「80%以上85%未満」に下がっていますが、これらには前述の「看護必要度」が大きく関係してきます。

7対1は2016年度改定後に、病床利用率が低下した

7対1は2016年度改定後に、病床利用率が低下した

 
看護必要度該当患者の割合を上げるためには、データの精度確保を前提として▼重症患者の受け入れ▼在院(棟)日数の短縮▼病棟再編―の大きく3つのアプローチがあります(もちろん組み合わせることが重要)。疾病にもよりますが、一般に入院期間の経過によって患者の容態は改善しますので、在棟日数が長くなれば看護必要度に該当する患者の割合は減少していきます。逆に言えば、看護必要度該当患者の割合を上げるためには在院(棟)日数の短縮が必要となるのです(別途お伝えする退院支援などが重要となります)。

しかしメディ・ウォッチで繰り返しお伝えしているとおり、在院(棟)日数の減少は患者減、つまり病床利用率の低下に直結するのです。7日の分科会でも岡村吉隆委員(和歌山県立医科大学理事長・学長)が、この点を指摘しています。

また神野正博委員(社会医療法人財団董仙会理事長)から「病院経営が厳しいことが裏付けられた」とのコメントがあったほか、石川広己委員(千葉県勤労者医療協会理事長)からは「7対1の病床が余っていると誤解されてはいけない」との指摘がありました。

病床利用率の向上には「重症」患者の確保が必要ですが、状況は競合の7対1病院でも同じであり、「重症患者の獲得」競争が激しくなっていくでしょう。効率的な経営のためにもダウンサイジングなどは選択肢の1つとして検討すべきテーマと言えそうです。

7対1の在宅復帰率要件に批判、「急性期機能の発揮」を評価できる指標の要望

このように在院(棟)日数短縮が進む中で、7対1を退院した患者はどこに向かうのでしょうか。今般の調査では、▼7対1への入棟元▼7対1からの退棟先—についても調べています。

前者の入棟元としては、「自宅から」がもっとも多く74.8%に達しています。後者の退棟先でも「自宅」がもっとも多く、全体の63.9%は「自宅に戻り、在宅医療も必要としてない」ことが分かりました。

7対1の患者が入棟前にどこにいたかを見ると、75%が自宅。また7対1を退棟してどこに行くのかを見ると6割超が自宅で、かつ在宅医療を必要としていない

7対1の患者が入棟前にどこにいたかを見ると、75%が自宅。また7対1を退棟してどこに行くのかを見ると6割超が自宅で、かつ在宅医療を必要としていない

 
この点に関連して神野委員は、「入院患者の疾患データから、7対1には『超急性期を診る』役割と、『がんを診る』役割があると考えられる」と分析。前者の患者(例えば脳梗塞患者)は、「救急搬送され、一定治療を終えた後にリハビリを専門とする病院・病棟に転院・転棟する」ことなどが考えられます。一方、後者の患者(がん患者)は、歩いて入院し、歩いて退院するケースが多そうです。神野委員は「超急性期とがんとで分けて分析することで、7対1の入院患者像が見えてくるのではないか」と提案しています。
7対1では、悪性腫瘍患者が入院患者の4分の1近くを占める

7対1では、悪性腫瘍患者が入院患者の4分の1近くを占める

 
なお退院に関連して、7対1では「在宅復帰率80%以上」という施設基準があります。今般の調査では「75%の病院では在宅復帰率は90%を超えており、平均92.5%となっている」ことが分かりました。

しかし尾形裕也委員(東京大学政策ビジョン研究センター特任教授)から「在宅復帰率は何を評価しようとしているのか。『再入院率』など急性期機能の発揮を評価する指標を考えるべき」旨の、田宮菜奈子委員(筑波大学医学医療系教授)から「在宅復帰率要件が、介護老人保健施設で無理に在宅強化型を狙うなどのひずみを招いている」旨の批判が出されており、「根本的な見直し」が行われる可能性もあります。

 
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