看護必要度ショック乗り越えるには、データ精度向上や多職種連携が必須―GHCセミナーで相澤東病院の武井看護部長
2016.11.11.(金)
7対1一般病棟の施設基準である「重症度、医療・看護必要度の基準を満たす患者割合」(以下、重症患者割合)を満たすために、(1)評価者を限定する(2)情報を評価者に集約する(3)多職種と看護部とで協働する―といった取り組みを、各病院で進める必要がある―。
グローバルへルスコンサルティング・ジャパン(GHC)が10月27日に開催したセミナー「『看護必要度ショック』の乗り越え方」で、相澤東病院の武井純子看護部長はこう強調しました。
今年9月で2016年度診療報酬改定の経過措置が切れ、10月以降、重症患者割合25%以上をどう満たすかが多くの7対1病院で重要な課題となっています。GHCでは、さまざまな機会を通じて「看護必要度ショック」対策をお伝えしています。是非、ご参考になさってください。
看護必要度の評価は「看護部が行う業務」から「病院全体で行う業務」に変化
2014年度の診療報酬改定では、従前の「重症度、看護必要度」を「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)に改めるとともに、A項目から血圧測定や時間尿測定を削除。また今般の2016年度改定では、A項目・B項目の内容を一部見直すとともにC項目を新設したほか、重症患者割合を従前の15%以上から25%以上に引き上げました(関連記事はこちらとこちら)。
7対1病院の施設基準をより厳格なものとし、病院・病床の機能分化を促進することが狙いとされ、7対1を維持するためには、さまざまな手立てを打つ必要があります。GHCではこれを「看護必要度ショック」と受け止め、全国でセミナーなどを開催しています。
10月27日に都内で開催したセミナーでは、中医協の下部組織で、看護必要度をはじめとする入院医療報酬の見直し案を策定する診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」委員である慈泉会相澤東病院の武井純子看護部長を招き、どのように「看護必要度ショック」を乗り越えるべきかを講演いただきました。
武井看護部長は、2014年度改定前から自院(相澤病院)の看護必要度について分析をしており、「看護必要度評価に3割程度の誤りがある」「評価の誤りには病棟間で差がある」ことを確認。GHCと共同してさらなる分析を行ったところ、「実は看護必要度割合が16.5%で、7対1の施設基準ギリギリ」「想像以上に、看護必要度評価の精度が低い」ことが判明しました。
そこで、看護必要度評価を行う「仕組み」を再構築するとともに、運用の手順、教育内容を再検討し、看護部内での監査方法の見直しや、第三者による検証の導入を行いました。一例をあげると、次のような仕組みの構築です。
●受け持ち看護師が、勤務時間帯に検温表記載、看護記録を行う
↓
●病棟看護責任者が看護必要度の評価用紙(紙ベース)を使用し、評価する
↓
●入院医療事務課の職員が、看護必要度を電子媒体に入力する
↓
●別の入院医療事務課の診療報酬算定担当職員が、入力した内容が、看護部の評価用紙通りになっているかをチェックする
この仕組みを設け、手順をきちんと行うことで、看護必要度データの精度が上がっていきました。また、評価用紙をゲートキーパー(当時、病棟から離れていた武井氏が担当)がチェックし、コメントを付けて病棟看護責任者に戻すことで、責任者のスキルがアップするとともに、「看護の質」の向上にも繋がったといいます。
さらに武井看護部長は、「A項目の専門的な治療・処置に該当する薬剤について、薬剤部の専門性によって補完する必要がある」ことや、また2016年度改定では手術などの医学的状況を評価するC項目が導入されたことなども踏まえ、2016年度から看護必要度評価の仕組みを次のように改善しました。
●受け持ち看護師が、勤務帯に経過表記載および看護記録を行う
↓
●各部署の事務職員がA項目・C項目の情報を共有フォルダ内に登録。薬剤師が「専門的な治療・処置」に該当する薬剤が判別できるように工夫。
↓
●病棟事務職員が電子カルテより、評価用紙へ転記する
↓
●評価者が看護必要度を評価し、電子カルテ内に入力する
こうした相澤病院、相澤東病院での取り組みを総括し、武井看護部長は、看護必要度評価の正確性を確保するために、(1)評価者を限定する(教育によって看護必要度の正確な知識を持った看護師のみが評価を行う)(2)情報を評価者に集約する(看護記録だけでなく、救急搬送患者の情報や、医事課の請求データなども)(3)多職種と協働する―という3つのポイントを守るべきと訴えました。正確な記録に基づいて「看護必要度」の評価を行うとともに、看護記録や多職種の記録と突合することで、「正確な看護必要度評価」が可能になるのです。
また武井看護部長は、看護必要度の評価は「看護部が行う業務」から「病院全体で行う業務」に変化していることを強調します。2016年度改定で導入されたC項目やA項目の「救急搬送後の入院」はもちろん、従前からあるA項目の「専門的な治療・処置」についても各職種からの情報を集約しなければ、看護必要度評価は正確に行えません。臨床の場面では「チーム医療」の重要性が指摘されていますが、看護必要度評価を始めとした、診療報酬の算定においても、事務を含めた「チーム力」が問われていると言えそうです。
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