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重症患者割合のデータが正しくなければ、高度な意思決定はできない―GHCが看護必要度セミナー開催

2016.9.5.(月)

 グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)は8月18日、横浜市内で「激震走る「看護必要度ショック」、Hファイル提出直前に押さえるべき要点~データ精度向上から病床戦略までの基本ステップ~」と題したセミナーを開催しました。講演したGHCマネジャーの塚越篤子は、「重症度、医療・看護必要度」は、重症患者割合の現状を把握できる一般急性期病院の経営における最重要ポイントの一つであると指摘。重症患者割合のデータが正しくなければ、今後の病床戦略など高度な意思決定ができないためで、重症患者割合のデータ精度向上を実現するノウハウやツールについて解説しました。

GHCマネジャーの塚越篤子

GHCマネジャーの塚越篤子

生データ提出義務化の「看護必要度ショック」

 2016年度診療報酬改定で、看護必要度は大きく見直されました。まず押さえるべきは、7対1入院基本料等の施設基準の見直しです。これまで、7対1の重症患者割合の基準値は15%でしたが、これが16年度改定で25%(200床以下は23%の経過措置あり)へと大きく引き上げられました。

 ただ、重症患者割合の基準値引き上げは、多くの病院でそれほど大きなインパクトはないと見られます。A項目の見直しと新設のC項目追加で重要患者とカウントする間口が広がったため、「10%の引き上げ」というイメージは、実態とは異なるからです。それよりも重要な論点は「看護必要度の生データの提出が義務化された」ことです。

 GHCの調査によると、多くの病院で看護必要度の生データは精度に問題があることが分かっています。例えば、GHCが分析したA病院では、今まで重症患者割合は29.1%と報告してきましたが、看護必要度データとDPCデータとを突合して精度を確認したところ、実際は25.1%で、基準値ぎりぎりの状態であることが分かりました。実に4ポイントの乖離があり、かつ全く余裕のない重患患者割合というのが本来の状況です。

【図表1】看護必要度データの精度に問題があったA病院の事例

【図表1】看護必要度データの精度に問題があったA病院の事例

 DPC病院や7対1病院などでは、16年10月分から、看護必要度の生データ提出が義務化されます。A病院のように、重症患者割合のデータ精度に問題があり、クリアできると思っていた基準値を実際には満たせていない状況が続くと、当局から指摘を受ける可能性も浮上してきます。そして何より、過剰な急性期病床などを理由に病院大再編が予想される今、「自病院が今後どのような立ち位置で経営していけばいいのか」「病床戦略をどうすべきか」などの高度な意思決定ができません(図表2)。

【図表2】病院大再編が予想される今、高度な意思決定が求められている

【図表2】病院大再編が予想される今、高度な意思決定が求められている

 これが、「看護必要度ショック」と言われる理由です。

ツールを使って「考えて動く」に時間を費やす

 では、どうすれば良いのか。方法は大きく分けて2つあります。

 重症患者割合は、延べ評価日数を分母に、基準を満たす日数を分子にすることで決まります。ですから、重症度を高めるためには、(1)いかに分母を小さくするか(2)いかに分子を大きくするか―という視点が欠かせません。

 分母を小さくする具体的な方法としては、「在院日数の短縮」「機能分化」の2つがあります。診療科ごとに在院日数が最適かどうか、しっかりデータ分析する必要があります。重症度が低い患者が一定程度いるのであれば、地域包括ケア病棟を新設するなどして、現状の急性期病床に入院する患者の最適化を図ることなどが有効です。

 分子を大きくするためには、重症患者の集患に加えて、データ精度向上が必要になります。データ精度の向上は看護必要度の生データとDPCデータを突合することで行います。本来、看護の現場で付けられた看護必要度の生データと、診療報酬の請求データであるDPCデータは一致するはずですが、先ほどのA病院のように一致しないことが多いのです。データをしっかりと確認して改善していくことが必要ですが、自病院だけでやるのには限界もあります。

 GHCではこれまで、看護必要度データの精度向上プログラムをコンサルティングサービスとして提供してきましたが、この4月に「病院ダッシュボード」のオプションサービスとしてシステム化した「看護必要度分析」をリリースしました。塚越は、「ツールを使って『考えて動くこと』に時間を費やすことが必要。アクションこそ自分たちで進めるべき」としました。

相澤病院の元看護部長が講演のセミナー開催へ

 18日のセミナーでは、「看護必要度分析」を直接触って試すことができるコーナーを設置し、参加者の皆様に体験していただきました。

相澤東病院の武井純子看護部長(左)、澤田

相澤東病院の武井純子看護部長(左)、澤田

 また、10月27日には都内で、「相澤・看護部長の事例講演で理解する『看護必要度ショック』の乗り越え方~コンサル直伝のツール活用術、利用者が直接語る成功事例(仮)」と題した関連セミナーを開催します。相澤病院の元看護部長で、同院の看護必要度データ精度向上を推進した武井純子氏(相澤東病院看護部長)が特別講演するほか(関連記事『看護必要度、「データ監査」に衝撃 相澤病院、教育と仕組み化で精度を大幅改善』)、GHCコンサルタントで看護師の澤田優香が「看護必要度分析」の具体的な活用方法を解説。「看護必要度分析」のユーザーである市立敦賀病院と日産厚生会玉川病院からの事例発表もあります。近く、お申し込みの受付を開始しますので、ご検討ください。

解説を担当したコンサルタント 塚越 篤子(つかごし・あつこ)

tsukagoshi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。
テンプル大学教養学部経済学科卒業。経営学修士(MBA)。看護師・助産師として10年以上の臨床経験、医療連携室責任者を経て、入社。医療の標準化効率化支援、看護部活性化、病床管理、医療連携、退院調整などを得意とする。済生会福岡総合病院(事例紹介はこちら)、砂川市立病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う。新聞の取材対応や雑誌への寄稿など多数(「隔月刊 地域連携 入退院支援」の掲載報告はこちら)。
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