退院支援加算1、会合や研修で一堂に会するだけでは「年3回以上の面会」に該当せず―疑義解釈2【2016年度診療報酬改定】
2016.4.26.(火)
厚生労働省は25日に、2016年度診療報酬改定の疑義解釈その2を公表しました。新たな解釈が示されるとともに、3月末の疑義解釈その1を一部訂正しています(関連記事はとこちらとこちら)。改定後、初の請求が近づいていますので、内容にご留意ください(厚労省のサイトはこちら)。
目次
退院支援加算1の「面会」は、直接に対面して業務上の意思疎通を行うことが必要
まず2016年度改定で新設された「退院支援加算1」について、重要な解釈が示されています。
退院支援加算1は、従前の退院調整加算(現、退院支援加算2)の施設基準を強化したもので、より積極的に「退院困難な患者の抽出」や「地域の医療機関や介護施設との連携」を行える体制を敷くことを求めています。後者について、厚労省は次のような体制を敷くことを求めています。
(1)転院または退院体制などについてあらかじめ協議を行い、連携する保険医療機関・介護サービス事業者・施設(連携保険医療機関等)などの数が20以上である
(2)退院支援などの専従職員と連携保険医療機関等の職員が「年3回以上」の頻度で面会し、情報の共有等を行っている
(3)面会には、個別の退院調整に係る面会などを含めてよいが、面会の日付、担当者名、目的および連携保険医療機関等の名称などを一覧できるよう記録する
このうち(2)の「年3回以上の頻度での面会」について、今般の疑義解釈では「それぞれの連携保険医療機関等の職員と、直接に対面して業務上の意思疎通を行うことが必要」とし、「会合や研修で一堂に会することでは、当該要件を満たすことにならない」旨が明確にされました。
ただし、「退院支援において数か所の連携保険医療機関等と退院調整の打ち合わせを行う」ような場合で、「すべての連携保険医療機関等の職員と相互に十分な意思疎通を図ることができる」のであれば、それぞれの連携保険医療機関等の職員と面会したものと扱うことが可能である旨を明らかにされました。
また、新設された「B007-2 退院後訪問指導料」について、次のような点も明確にされています。
▽退院後訪問指導料を、入院医療機関が算定した日には、当該医療機関と同一の保険医療機関、および特別の関係にある保険医療機関は、医療保険の「在宅患者訪問看護・指導料」、介護保険の「訪問看護費」のいずれも算定できない
認知症ケア加算1、病棟巡回は「少なくとも看護師含めた2名以上」での実施が必要
2016年度改定では、入院基本料等加算に「認知症ケア加算」が新設されました。高齢化が進行し、「身体合併症を持つ認知症高齢者」の入院が増加する中では、急性期病棟でも認知症患者に対するケア体制やスキルの向上が求められています。
今般の疑義解釈では、認知症ケア加算1で求められる「認知症ケアチームによる週1回以上の各病棟巡回」について、「全員揃っていることが望ましく、少なくとも看護師を含め2名以上で巡回することが必要」である点が明確にされました。
ところで、厚労省保険局医療課の林修一郎課長補佐は、GHCの改定セミナーにおいて「早期にすべての病棟で認知症ケア加算1を算定するようになってほしい」と期待を寄せており、積極的な体制整備が求められます。
目標設定等支援・管理料による介護報酬の併算定、1事業所につき3か月が上限
2016年度改定では、要介護者の維持期外来リハを介護保険の通所リハビリなどに円滑に移行させる下準備として「目標設定等支援・管理料」が新設されました。要介護者それぞれの患者の特性に応じたリハビリテーションの目標設定と方向付けを行い、またその進捗を管理することを評価するものです。「漫然としたリハビリ」からの脱却を目指すものと言えます(関連記事はこちら)。
当該管理料を算定した場合、3か月以内・1か月に5日を超えない範囲で、医療保険のリハビリ料と介護保険のリハビリ料(体験目的など)の併算定が可能になります(こちら)。今般の疑義解釈では、この併算定が可能な期間について「当該取り扱いは、介護保険におけるリハビリテーションを体験する目的であることから、1か所の通所リハビリテーション事業所につき、3か月を超えることができない」旨が明確にされました。
このほかリハビリに関連して、次のような点が明確にされています。
▽疾患別リハビリ料の施設基準に基づいて専従配置された理学療法士などが、回復期リハビリ病棟入院料、ADL維持向上等体制加算の施設基準に基づいて別の理学療法士などが専従配置された病棟でリハビリを提供した場合でも、疾患別リハビリ料を算定できる
▽回復期リハビリ病棟入院料、ADL維持向上等体制加算の施設基準に基づいて病棟に専従配置された理学療法士などが、当該病棟の入院患者に対し病棟以外の場所でリハビリを提供した場合でも、疾患別リハビリ料を算定できる
▽心大血管疾患リハビリ料(II)の対象となる急性心筋梗塞・大血管疾患は「発症後または手術後1か月以上経過したもの」とされており、例えば5月25日に手術を行った場合には、6月1日からではなく、6月26日(発症または手術の日の翌日から起算して1か月を経過した日)から当該リハビリ料の算定対象となる
▽呼吸器リハビリ料の早期リハビリ加算を算定する場合、その期限は「発症、手術もしくは急性増悪から7日目、または治療開始日のいずれか早いものから30日に限り」とされているが、「発症、手術もしくは急性増悪から7日目、または治療開始日のいずれか早いもの」は当該30日の期間に含まれる
肺炎などの急性増悪での点滴治療、医療区分3となるケースを明確化
2016年度改定では、療養病棟入院基本料について「基本料2でも医療区分2・3の患者受け入れに関する基準を設ける」「医療区分の精緻化を行う」などの見直しが行われました。
後者の「医療区分の精緻化」では、酸素療養の患者について従前の「一律医療区分3」とする取り扱いを見直し、酸素療法の内容や患者の状態に応じて「医療区分2」または「医療区分3」に区分することにしています。この点、「肺炎等急性増悪により点滴治療を実施した場合については、点滴を実施した日から30日間まで本項目に該当する」(つまり医療区分3とする)とされていますが、今般の疑義解釈では、「点滴の実施期間が30日未満であった場合にも点滴開始後30日間は該当する(医療区分3とする)」「30日間を超えて点滴を継続した場合は、実施した日に限り該当する(医療区分3とする)」旨が明確にされています。
個々の患者の請求点数はもちろん、基本料1・2の施設基準にも関連する重要項目です。
入院の栄養食事指導、期間が通算される再入院では「初回」指導料は算定できず
また栄養指導については、対象患者を拡大するとともに、指導日が初回であるのか2回目以降であるのかに着目した点数の引き上げが行われました。
3月末の疑義解釈その1では、「同一の保険医療機関において、ある疾病に係る治療食の外来栄養食事指導を継続的に実施している患者について、医師の指示により、他の疾病の治療食に係る外来栄養食事指導を実施することになっても、『初回』の指導料は新たに算定できない」ことが明確にされました。
今般の疑義解釈その2では、「『初回』の入院栄養食事指導料は、前回入院時と入院起算日が変わらない再入院の場合、算定できない」旨が明確にされています。
多種類の向精神約など使用時の薬剤料減算、具体例を示して整理
なお、薬剤料における「多種類の向精神薬などを使用した場合の減算」や「多剤処方の減算」規定について、次のような整理が行われています。
▽3種類の抗不安薬と、4種類の「向精神薬(抗不安薬、睡眠薬、抗うつ薬または抗精神病薬)以外の薬剤」を投薬する場合
→抗不安薬について所定点数の100分の80で、「向精神薬以外の薬剤」については所定点数の100分の100で算定する
▽3種類の抗不安薬と、7種類の「向精神薬以外の薬剤」を投薬する場合
→抗不安薬について所定点数の100分の80で算定した上で、抗不安薬を除いても「多剤投与減算」の要件に該当することから、「向精神薬以外の薬剤」について所定点数の100分の90で算定する。
月をまたぐ入院、各月の請求時にDPCのコードを一旦決定することが必要
DPCについて、「月をまたいで入院する場合は、各月の請求時に一旦、診断群分類区分の決定を行い請求する」ことが明確にされています。その際、手術などが行われていないが予定がある場合には「手術あり」などのコードを選択して請求することも可能ですが、「退院時までに予定された手術が行われなかった結果、退院時に決定された請求方法が異なる」場合には、請求済みのレセプトを取り下げた上で手術なしの分岐により再請求をすることが必要となります。
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