回復期リハ病棟のアウトカム評価、除外患者の取り扱いなどを明確化―疑義解釈1【2016年度診療報酬改定】
2016.4.1.(金)
お伝えしている通り、厚生労働省は3月31日に2016年度診療報酬改定に関する疑義解釈(その1)を公表しました(厚労省のサイトはこちら)(関連記事はこちらとこちら)。
今回は、リハビリテーションに焦点を合わせてみます。
目次
高次脳機能障害、リハ実績計測では「全員除外」か「全員含める」かの二択
2016年度改定では、回復期リハビリ病棟入院料にアウトカム評価が導入されました。リハビリの効果が一定水準を満たさない場合には、疾患別リハビリテーション料の算定を6単位までに制限する(超過分は入院料に包括評価)という仕組みです(詳細はこちらとこちらとこちらとこちら)。
まず、次の2項目について連続して2回該当する回復期リハビリ病棟が対象となります。
(A)6か月間に回復期リハビリ病棟から退棟した患者数が10名以上
(B)6か月間に回復期リハビリ病棟で提供したリハビリが1日平均6単位以上
そして、次の計算式(実績指数)でリハビリの効果を6か月ごとに測定し、「27未満」の場合に効果が低いと判断され、2回連続で「効果が低い」場合にはじめて疾患別リハビリ料の算定制限が行われます。
Σ[各患者の退棟時のFIM得点(運動項目)―各患者の入棟時のFIM得点(運動項目)]÷Σ[各患者の入棟から退棟までの在棟日数/各患者の状態ごとの回復期リハビリ病棟入院料の算定上限日数】
ただし高齢者や認知症患者など、一般に効果が出にくいと考えられる患者の入院が阻害されないよう、評価対象から全部または一部を除外する規定も設けられています。
この除外規定について疑義解釈では、次のような留意点が明確にされました。
▽Aの「6か月間に回復期リハビリ病棟から退棟した患者の数が10名以上」であるかの判断は、実際に除外した患者を除いて行う
▽Bの「1日当たりリハビリ提供単位数が平均6単位以上」であるかの判断は、除外の有無にかかわらず、直近6か月間の回復期リハビリを要する状態の患者について行う
▽実績指数の計算から除外可能な「高次脳機能障害患者」について、当該月に入棟した高次脳機能障害の患者を「全員除外する」か、「全員含める」かのいずれかを選ぶ
また、疑義解釈では(A)と(B)を計測するにあたっては、「算定する入院料に関わらず、当該回復期リハビリ病棟に入棟・退棟する患者」が対象になることも明確にされました。ただし、当該回復期リハビリ病棟に入棟していても、「一度も回復期リハビリ病棟入院料を算定していない」患者は、実績指数の計算には入りません。
心大血管疾患リハ、スタッフの兼任可能性を明確化
心大血管疾患リハビリテーション料(I)については、「循環器科または心臓血管外科の医師が、心大血管疾患リハビリを実施している時間帯において常時勤務している」「心大血管疾患リハビリの経験を有する専任の常勤医師が1名以上勤務している」との施設基準があります。
疑義解釈では、前者と後者がそれぞれ要件を満たしていれば「兼務可能」であることが示されています。
同様に、心大血管疾患リハビリ料(II)については、心大血管疾患リハビリを実施する時間帯に「循環器科または心臓血管外科を担当する医師(非常勤を含む)」「心大血管疾患リハビリの経験を有する医師(非常勤を含む)」が1名以上勤務していることが必要ですが、こちらもそれぞれの要件を満たしていれば、前者と後者は「兼務可能」です。
また、心大血管疾患リハビリ料(I)で求められる「心大血管疾患リハビリ経験のある専従の常勤理学療法士・専従の常勤看護師」について、実施日・時間が異なれば、他のリハビリの専従者として届け出ることが可能とされていますが、「実施日・時間が重複する場合は兼任できない」ことが再確認されています。
廃用症候群リハ、回復期リハ病棟入院料の算定対象にならないケースも
2016年度改定では、脳血管疾患等リハビリテーション料から「廃用症候群リハビリ料」が独立・新設されました(関連記事はこちら)。
厚労省は、他のリハビリ(心大血管疾患リハビリや運動器リハビリ、呼吸器リハビリ、障害(児)者リハビリ、がん患者リハビリ)の対象患者が廃用症候群を合併している場合に、廃用症候群に関連するリハビリを行ったときは、「廃用症候群リハビリ料を算定する」ことを規定しています。今般の疑義解釈では、脳血管疾患等リハビリの対象患者が廃用症候群を合併している場合も同様で、「廃用症候群に関連する症状に対してリハビリを行ったときは、廃用症候群リハビリ料を算定する」ことを確認しています。
なお、「外科手術または肺炎などの治療時の安静により廃用症候群を有し、手術後または発症後の状態(手術後または発症後2か月以内に回復期リハビリ病棟入院料の算定が開始されたものに限る)」以外の廃用症候群については、回復期リハビリ病棟入院料の対象とはならないことも明確にされたので、ご留意ください。
目標設定等・支援管理料、介護保険リハの利用日数把握を忘れずに
2016年度改定では、要介護被保険者に対する外来の維持期リハビリについて介護保険への移行を促進するために「目標設定等支援・管理料」が新設されました(関連記事はこちら)。
患者に対して「リハビリを通じて何を実現したいのか」という目標を設定する際の支援や、介護保険のリハビリへの紹介などを評価するもので、標準的算定日数の3分の1経過後に、この点数を算定しない(目標を定めず、介護保険リハの紹介などもせず)ままに疾患別リハビリを提供した場合には、疾患別リハ料が90%に減算されてしまいます。
また、目標設定等支援・管理料を算定した患者に対して介護保険のリハビリを紹介した場合、体験目的などでの介護保険リハビリ受給が1か月に5日以内であれば、医療保険のリハビリを継続して算定することが可能となります(通常は介護保険のリハビリのみ算定可能)。併算定を認めることで、介護保険リハビリへの移行が促進されると期待されるのです。
今般の疑義解釈では、▽介護予防通所リハビリのように月額で算定されるリハビリであっても、「介護保険リハビリの受給日数が1か月に5回を超えない」ことが要件である▽介護保険リハビリを紹介した医療機関は、紹介先に照会するなどして、介護保険リハビリ利用が暦月で5日を超えていないかどうかに留意する―ことが再確認されています。
また、目標設定等支援・管理料とリハビリテーション総合計画評価料は「同一月に併算定可能」であることも明確にされました。
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