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廃用症候群のリハ、脳血管疾患等リハから独立させ、対象患者を見直し―中医協総会

2015.12.3.(木)

 廃用症候群に対するリハビリテーションは、現在、脳血管疾患等リハの中で評価されているが、これを独立の疾患別リハとして評価してはどうか―。厚生労働省は、2日に開いた中央社会保険医療協議会・総会でこのような提案を行いました。

12月2日に開催された、「第316回 中央社会保険医療協議会 総会」

12月2日に開催された、「第316回 中央社会保険医療協議会 総会」

廃用症候群のリハを、脳血管疾患等リハから分離

 廃用症候群とは、「身体の不活動によって引き起こされる二次的な障害」の総称で、関節拘縮や心肺機能低下、消化機能低下、知的活動低下などの症状が現れます。

廃用症候群の定義、身体の不活動によって「関節拘縮」「心肺機能低下」「知的活動低下」などが生じる

廃用症候群の定義、身体の不活動によって「関節拘縮」「心肺機能低下」「知的活動低下」などが生じる

 2010年度の診療報酬改定で、脳血管疾患等リハを「廃用症候群の場合」と「廃用症候群以外の場合」に分け、前者について比較的低い点数が設定されました。しかし、他の疾患別リハ(心大血管疾患リハ、運動器リハ、呼吸器リハ)に比べると、高い点数であったため、例えば「本来は運動器リハを算定する患者のはずだが、廃用症候群の脳血管疾患等リハを算定している」というケースが散見されたのです。

 そこで2014年度の前回改定では、廃用症候群のリハの評価が引き下げられ、逆に他の疾患別リハの点数が引き上げられました。その結果、2013年度から14年度にかけて、廃用症候群のリハの算定件数は減少しており、一定程度の適正化が図られたと考えることができます。

2010年度の診療報酬改定で脳血管疾患の一類型として廃用症候群のリハが設けられ、その後、点数の見直しが行われている

2010年度の診療報酬改定で脳血管疾患の一類型として廃用症候群のリハが設けられ、その後、点数の見直しが行われている

 ただし、廃用症候群のリハには「そもそも脳血管疾患と関係のない廃用症候群もある」との指摘があります。このため厚労省保険局医療課の宮嵜雅則課長は「廃用症候群のリハを、脳血管疾患等リハから独立した項目とする」考えを述べました。

廃用症候群の対象患者を見直し

 廃用症候群のリハを算定できるのは、次の(1)から(3)のすべてを満たす患者に限られます。

(1)外科手術、または肺炎などの治療時の安静による廃用症候群の患者であること

(2)治療開始時において、FIM115以下、BI85以下の状態などであること

(3)心大血管疾患リハ、運動器リハ、呼吸器リハ、障害児(者)リハ、がん患者リハの対象でないこと

 これらの要件は、例えば前述のような「本来は運動器リハの対象患者だが、廃用症候群の脳血管疾患等リハを算定している」というケースが生じないようにするなどの理由から設定されたものですが、課題もあります。

 まず(1)の「外科手術などの『治療』時の安静による廃用症候群」という要件があるために、「原疾患の治療がなされていない場合には、廃用症候群リハの対象とならない」という問題があります。

 これでは適切なリハ実施による機能回復が阻害されてしまうので、宮嵜医療課長は「急性疾患に伴う安静によって生じた廃用症候群は、原疾患の治療の有無にかかわらず、廃用症候群リハの対象とする」ことを提案しています。

 また(3)の「他の疾患別リハの対象患者でない」との要件は、前述のようにモラルハザードを避けるために導入されたものですが、例えば「心大血管疾患リハの対象患者が廃用症候群になった場合、廃用症候群のリハが提供しにくい」というケースも生じていると指摘されます。

 そこで宮嵜医療課長は、「廃用症候群の患者であって、主として廃用症候群による障害に対してリハを実施するものと認められる場合」には、他の疾患別リハ料などの対象者かどうかにかかわらず廃用症候群リハの対象とすることも提案しました。

 さらに宮嵜医療課長は、「運動器不安定症」患者のうち、運動機能低下をきたす疾患が「長期臥床による運動器廃用のみ」である場合には、廃用症候群リハの対象とすることも提案しています(現在は運動器リハの対象)。

「運動機能低下を来す11の疾患」の既往(あるいは罹患)があり、日常生活自立度などで一定の要件を満たす場合に「運動器不安定症」と判断される

「運動機能低下を来す11の疾患」の既往(あるいは罹患)があり、日常生活自立度などで一定の要件を満たす場合に「運動器不安定症」と判断される

 こうした提案に対し、診療側・支払側双方から特段の反対意見は出ていません。したがって、廃用症候群のリハについては「脳血管疾患等リハから独立させる」「算定対象患者を大きく見直す」ことになりそうです。

 もっとも診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は、「2014年度の前回改定で、廃用症候群リハの点数を運動器リハよりも低く設定した。これを元に戻すべきである」と注文を付けており、どのような点数が設定されるのかに注目が集まります。

心大血管疾患リハ、提供医療機関の増加を狙い要件緩和

 宮嵜医療課長は、このほかにもリハビリについて次のような見直しを行ってはどうかと提案しています。

▽心大血管疾患リハを提供する医療機関を確保(2014年7月1日時点で986施設にとどまっている)するため、一部の疾患(例えば狭心症や慢性心不全など)については、心大血管疾患リハの経験を有する医師が実施するなど「安全性・有効性が維持できる場合」には、循環器科や心臓血管外科の標榜がなくても心大血管疾患リハを提供できることとする(現在は、循環器科・心臓外科の標榜が必要)

心大血管疾患リハを届け出ている医療機関、算定回数は、他の疾患別リハに比べて極めて少ない

心大血管疾患リハを届け出ている医療機関、算定回数は、他の疾患別リハに比べて極めて少ない

現在、心大血管疾患リハを届け出るためには、循環器科あるいは心臓血管外科を標榜している必要がある

現在、心大血管疾患リハを届け出るためには、循環器科あるいは心臓血管外科を標榜している必要がある

学会は、狭心症や慢性心不全などに対しては、循環器科などを標榜していない医療機関でも実施可能との見解をまとめている

学会は、狭心症や慢性心不全などに対しては、循環器科などを標榜していない医療機関でも実施可能との見解をまとめている

▽難病患者リハの専従者に、他のリハビリの専従者との兼任を認める(現在は兼任不可)

▽難病患者リハの専従者が、難病リハを行わない日に、他の疾患別リハ、障害児(者)リハ、がん患者リハに従事することを認める

▽回復期リハ病棟のうち、体制強化加算を届け出ている医療機関において、専従の常勤医師が入院外の診療に従事することを一定の条件の下で認める

▽初期加算、早期加算の起算日を「発症、手術の日」とし、廃用症候群を含む慢性疾患は加算の対象外とする

▽廃用症候群を含む慢性疾患に対する疾患別リハの標準的算定日数を超過したかの判断などについて、「当該疾患と最初に診断された日」を起算日とする

現在、発症から時間が経っていても、「治療開始日」から起算した一定期間は初期加算・早期加算を算定できてしまう

現在、発症から時間が経っていても、「治療開始日」から起算した一定期間は初期加算・早期加算を算定できてしまう

▽IADL(手段的日常生活活動)や社会節における活動の能力獲得のため、実際の状況での訓練が必要な場合に限り、医療機関外でのリハを疾患別リハとして評価する

医療機関内では、「道路の横断」や「バスの乗降」などの訓練を行うことは難しい

医療機関内では、「道路の横断」や「バスの乗降」などの訓練を行うことは難しい

▽リンパ浮腫指導管理料について、がんのフォローアップが行われる標準的期間(例えば5年)を目安として、一定程度の頻度に限って算定を認める(現在は入院中1回、退院月またはその翌月に外来で1回のみ算定可)

リンパ浮腫に対する指導は、手術後、相当期間が経ってからも必要性は低くならない

リンパ浮腫に対する指導は、手術後、相当期間が経ってからも必要性は低くならない

▽摂食機能療法の対象者を拡大し、経口摂取回復促進加算の要件にアウトカム評価を盛り込む

▽摂食機能療法の経口摂取回復促進加算を算定する場合などでも、専従のST(言語聴覚士)が他の業務に従事することなどを一定の要件の下で認める

摂食機能療法の経口摂取回復促進加算を算定する場合には、専従STは他の業務を兼任できないが、厚労省は緩和の必要性を感じている

摂食機能療法の経口摂取回復促進加算を算定する場合には、専従STは他の業務を兼任できないが、厚労省は緩和の必要性を感じている

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