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看護必要度見直しの影響や、病棟群単位の届け出状況など2016年度診療報酬改定の影響を調査―入院医療分科会

2016.6.17.(金)

 2016年度診療報酬によって、「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)の大幅見直しや重症患者(看護必要度を満たす患者)割合の引き上げなどが行われ、さらに「病棟群単位の入院基本料」届け出が経過的に認められることになりましたが、この状況が全国の病院でどのようになっているのかを、2016・17年度の2年度にわたって調査する―。

 こういった方針が、17日に開かれた診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(以下、入院医療分科会)で固まりました。

 新たに提出が義務化されるDPCデータのHファイル(看護必要度の生データ)も活用しながら、病院の状況を調査し、2018年度の次期改定につなげていくことになります。

6月17日に開催された、「平成28年度 第1回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」

6月17日に開催された、「平成28年度 第1回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」

看護必要度や地域包括ケア病棟の包括範囲、退院支援など入院医療の状況を調査

 現在の診療報酬改定は、「エビデンス」をベースとして実施されており、エビデンスの収集に向けてさまざまな調査が行われます。主に、入院医療における技術的な課題について調査・分析を行う入院医療分科会でも、2016年度改定の効果・影響を詳細に調査することになっています(関連記事はこちらこちらこちら)。

 17日の入院医療分科会では、厚生労働省から次のような調査を行う方針が示されました。

【2016年度調査】改定の効果・影響が比較的早期に現れる項目を調査

(1)一般病棟や特定集中治療室(ICU)における看護必要度見直しの影響:▽入院料届け出の意向▽病棟群単位の届け出状況▽重症患者割合の状況▽各入院料における患者像や平均在院日数、退院先▽他医療機関受診の状況―など

(2)地域包括ケア病棟の包括範囲見直しの影響:▽手術などの実施状況▽患者像▽入棟前・退院先(どこから入院して、どこへ退院しているのか)―など

(3)慢性期入院医療(療養病棟や障害者施設など)の評価見直しの影響:▽人員配置▽医療区分別患者割合の状況▽患者像▽医療提供の状況▽平均在院日数▽退院先―など

(4)退院支援や在宅復帰率の評価のあり方:▽退院支援の状況▽退院先の状況▽連携先の医療機関・介護事業者の状況―など(関連記事はこちら

【2017年度調査】経過措置が設けられるなどして、改定の効果・影響が出るまでに時間のかかる項目を調査

(A)一般病棟や特定集中治療室(ICU)における看護必要度見直しの影響:▽病棟群単位の届け出状況▽重症患者割合の状況▽各入院料における患者像や平均在院日数、退院先―など

(B)短期滞在手術等基本料および総合入院体制加算の評価:算定状況や患者像、医療提供体制など

(C)救急医療管理加算などの評価:▽救急医療管理加算を算定している患者像や入院後の転帰▽夜間休日救急搬送医学管理料の届け出状況や患者像―など

 (1)と(A)はともに看護必要度に焦点を合わせた調査項目です。「重症患者割合25%以上」が実際に適用されるのが今秋からであることや、「病棟群単位の入院基本料」届け出が2017年度までとされていることを踏まえて、2年度にわたって調べられます(関連記事はこちらこちら)。

一般病棟とその加算、地域包括ケア病棟、回復期リハ病棟では、重症患者の対象範囲が異なる

一般病棟とその加算、地域包括ケア病棟、回復期リハ病棟では、重症患者の対象範囲が異なる

病棟群単位の入院基本料届け出、今年(2016年)4月から来年(2017年)3月までの1年間に、1回に限り認められる

病棟群単位の入院基本料届け出、今年(2016年)4月から来年(2017年)3月までの1年間に、1回に限り認められる

 また厚労省では、他のデータ(DPCデータやNDB(ナショナルデータベース:レセプト・特定健康診査のデータベース)など)も活用することで調査を簡素化し、回答率向上を図る考えです。2016年度調査(11-12月実施)の結果は年明け(2017年)3月以降に、17年調査(同年6-7月実施)の結果は17年9月以降に報告される予定です。

DPCデータから「患者の重症度」を判定できないか

 厚労省の提示した調査項目案に対して、入院医療分科会の委員から特段の反対は出ていませんが、いくつかの注文もつきました。

 神野正博委員(社会医療法人財団董仙会理事長)は、(1)や(A)にある看護必要度について「DPCデータから患者の重症度合いを導けないかチャレンジしてほしい」と要望。看護必要度の記録は、看護部にとって大きな負担となっており、見直しが現場の実務に与える影響も大きいため、別指標への置き換えを研究してほしいとの要望です。

 この点に関連し、2016年10月分よりDPCデータのHファイルとして、いわば「看護必要度の生データ」の報告が義務づけられます(DPC病院や7対1病院など)。厚労省では、このHファイルデータも活用しながら、今後の診療報酬改定に向けた検討を進める考えを明確にしており、神野委員の要望に沿った研究が行われる可能性も高いでしょう(関連記事はこちらこちら)。

 武井純子委員(社会医療法人財団慈泉会本部相澤東病院看護部長)も看護必要度について、「C項目(手術などの医学的状況の評価)の設定日数が妥当か」「内科や救急でほかに評価対象となる項目はないのか」などが見えるような調査設計をしてほしいと求めています。

 また藤森研司委員(東北大学大学院医学系研究科・医学部医療管理学分野教授)は、看護必要度や平均在院日数などとの関係(例えば、看護必要度のA項目●点の患者では平均在院日数にどのような傾向があるかなど)が分かるような調査を行ってほしいと要望しました。

「『医師による指示の見直しの頻度』が少ない=医療の必要性が低い」わけではない

 池端幸彦委員(医療法人池慶会理事長)は、2016年度改定論議で慢性期入院医療における『医師による指示の見直しの頻度』データが活用された点を踏まえ、(3)の慢性期に限定せず、「急性期から回復期、慢性期に至るまで一貫した調査項目を設定してほしい」旨の要望を行いました。また神野委員も、『医師による指示の見直しの頻度』について「診察の結果、指示の見直しを行わないと判断するケースもある」ことを強調しています。

 例えば出来高算定である障害者施設でも『医師による指示の見直しの頻度』が少ない患者が相当数おり、また医療の必要性が高いとされる医療区分3の患者についても『医師による指示の見直しの頻度』が少ない患者が一定数いることが分かり、報酬や基準の見直しが行われています(関連記事はこちらこちら)。

障害者施設や特殊疾患病棟1にも、「医師による指示の見直しがほとんど必要ない」脳卒中患者が療養病棟と同じ程度の割合で入院している

障害者施設や特殊疾患病棟1にも、「医師による指示の見直しがほとんど必要ない」脳卒中患者が療養病棟と同じ程度の割合で入院している

 しかし池端委員や神野委員は、「『医師による指示の見直し頻度』が少ない=医療の必要性が少ない、軽症である」と捉えられることに強い疑念を提示していると言えます。

 この点について厚労省保険局医療課の担当者は、会合終了後に「2016年度の前回改定に向けた調査でも、慢性期のみで『医師による指示の見直しの頻度』を調べたわけではない。急性期から慢性期まで一貫して見る調査すべき部分と、病棟の特性に応じて調査すべき部分を適切に組み合わせていく」との考えを述べています。

退院支援加算1と2、届け出病院の違いから「地域連携」のあり方が見えてくる

 また(4)の退院支援に関して、筒井孝子委員(兵庫県立大学大学院経営研究科教授)は「退院支援加算1の届け出病院と退院支援加算2の届け出病院で、どのような属性があるのかを分析できる調査設計としてほしい」と要望。退院支援加算1では、退院支援加算2に比べて、退院支援に向けた体制を充実させるとともに、地域の医療機関・介護施設との「継続した連携関係」の構築が求められます(関連記事はこちらこちら)。筒井委員は、上記の分析によって「地域での連携ができている病院と、そうでない病院の差が見えてくるのではないか」と期待を寄せています。

退院支援加算1・2の施設基準・算定要件の概要。加算1を届け出るためには病棟に退院支援業務等専従の看護職員・社会福祉士の配置などが必要となる

退院支援加算1・2の施設基準・算定要件の概要。加算1を届け出るためには病棟に退院支援業務等専従の看護職員・社会福祉士の配置などが必要となる

 この点、安藤文英委員(医療法人西福岡病院理事長)や石川広巳委員(社会医療法人社団千葉県勤労者医療協会理事長)も、「多くの病院では、『質の高い』退院患者の受け入れ先確保に苦労している」旨を述べ、実態や地域特性も十分に調べる必要があると訴えています。

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