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GemMed塾 看護モニタリング

ICU保有する7対1病院の地域包括、「自院の急性期からの転棟患者」が8割―入院医療分科会

2015.10.1.(木)

 特定集中治療室(ICU)などを持つ7対1・10対1病院では、併設している地域包括ケア病棟の入院患者のうち8割が「自院の急性期からの転棟患者」で占められており、これらの病院では、「自院の急性期病棟からの受け皿」として地域包括ケア病棟を活用している―。こうした状況が、1日に開催された診療報酬調査専門組織の「入院医療等の調査・評価分科会」で厚生労働省から報告されました。

 2016年度の次期診療報酬改定に向けた中央社会保険医療協議会の議論では、一部診療側の委員から「大病院において地域包括ケアの創設を認めるべきではない」との指摘が出ており、このデータが今後の議論にどう影響するのか注目されます。

10月1日に開催された、「平成27年度 第9回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」

10月1日に開催された、「平成27年度 第9回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」

中医協では「大病院のケアミックス認めるべきではない」との指摘も

 厚生労働省が「ICUなどを持つ7対1・10対1病院」における地域包括ケア病棟・病室の状況を調査したところ、次のような状況が明らかになりました。

(1)地域包括ケア病棟の入院患者のうち、81%は自院の急性期病棟からの転棟患者である

(2)ほぼすべての病院(ICUなどを持つ7対1・10対1)が、地域包括ケア病棟を「自院の急性期病棟からの受け皿」として利用している

ICUを持つ7対1・10対1病院のほぼすべてが、地域包括ケア病棟を「自院の急性期病棟からの受け皿」として活用する趣旨で設置している

ICUを持つ7対1・10対1病院のほぼすべてが、地域包括ケア病棟を「自院の急性期病棟からの受け皿」として活用する趣旨で設置している

 7対1の施設基準(平均在院日数18日以内や、重症患者割合15%以上など)を満たすために地域包括ケア病棟を併設し、「急性期を脱した」患者を転棟させている状況が伺えます。

 ところで、入院医療分科会の親組織である中医協では、診療側の鈴木邦彦委員が「大病院は高度急性期や急性期に特化すべきだ。病床稼働率維持のために地域包括ケア病棟などに転換することは、適正な地域連携を阻害する。稼働率維持はダウンサイジングで対応すべき」と強い調子で主張しています(関連記事はこちら)。

 現在、特定機能病院でなければ、大病院であっても地域包括ケア病棟を設置できますが、鈴木委員はこの点の見直しを求めています。今回のデータは「大病院の中で『急性期から亜急性期』への橋渡しが進んでいる」ことが伺えます。ただし、大病院の地域包括ケア病棟は「急性期に近い」医療を行っており、その後、中小病院が設置している「回復期に近い」地域包括ケア病棟や回復期リハビリ病棟などへの転棟が行われている状況もあります。この場合には「適切な地域連携を阻害している」とは言えません。こうした点も考慮した議論が必要でしょう。

 なお、この点に関連して神野正博委員(社会医療法人財団董仙会理事長)は「7対1から地域包括ケア病棟への転換が進んでいるようだが、日本病院団体協議会が要望している『病棟群単位の入院基本料』を導入すれば、7対1から『7対1と10対1の併設』などへの転換も進むと考えられる」と述べ、「病棟群単位の入院基本料」導入を強く求めました(関連記事はこちら)。

特定除外制度廃止後、90日超の入院患者は減少

 1日の入院医療分科会では、特定除外制度廃止後の状況も報告されました。

 一般病棟入院基本料では逓減制(入院期間が長くなると報酬が下がる)が採用されており、90日を過ぎた入院患者については、原則「特定入院料」という低い包括点数を算定することになります。しかし、リハビリやがんなどで長期入院がやむを得ないと考えられる患者については、出来高の入院基本料の算定を継続することが認められていました。これが特定除外制度です。

 しかし、長期入院患者は療養病棟などに入院すべきではないかとの考え方に基づき、12年度改定で13対1・15対1、14年度改定で7対1・10対1の特定除外制度が廃止されています。

 この見直しの後に90日を超えて入院する患者の状況がどう変化しているかを厚労省が調べたところ、次のような状況が明らかになりました。

▽改定前の14年3月時点で、90日超の入院患者は7対1では「50床当たり2.3人」、10対1では「50人当たり4.2人」入院していたが、改定後の15年6月には、7対1では「50床当たり1.8人」、10対1では「50人当たり3.3人」に減少した

特定除外制度の廃止後に、7対1・10対1のいずれでも、90日を超えて入院する患者の数、割合は減少している

特定除外制度の廃止後に、7対1・10対1のいずれでも、90日を超えて入院する患者の数、割合は減少している

▽現在の90日超の入院患者の状況を見ると、「リハビリ」(7対1では50床当たり0.76人)、「がん」(同0.31人)、「頻回な喀痰吸引・排出」(同0.25人)などが多い

現在の90日超入院患者の状況を見ると、「リハビリ」「がん治療」「頻回な喀痰吸引・排出」などが必要な人が多い

現在の90日超入院患者の状況を見ると、「リハビリ」「がん治療」「頻回な喀痰吸引・排出」などが必要な人が多い

▽90日超の入院患者のうち「外来、在宅でもよいが、他の要因で退院できない」患者は20%ほどおり、その理由は「転院先の医療機関や施設額歩できない」「家族の希望に合わない」などが多い

7対1病棟に90日を超えて入院する患者のうち、2割程度は入院の必要がなく、入院している理由は「転院先がない」などが多い

7対1病棟に90日を超えて入院する患者のうち、2割程度は入院の必要がなく、入院している理由は「転院先がない」などが多い

▽90日超の入院患者のうち、半数程度は「自宅」に退院している

7対1病院の90日超入院患者について退棟先を調べると、約半数は「自宅」であった

7対1病院の90日超入院患者について退棟先を調べると、約半数は「自宅」であった

▽特定除外制度廃止に対して、7対1病院の41%、10対1病院の48%が「退院支援や相談窓口の充実」「他院との連携強化」「自院の他病棟への転棟促進」などの取り組みを行っている

7対1病院の41%が特定除外制度廃止に対して、「退院支援」「相談窓口」などの充実で対応している

7対1病院の41%が特定除外制度廃止に対して、「退院支援」「相談窓口」などの充実で対応している

 こうした状況を受け、厚労省は「退院支援の充実や転院・転棟の促進などの取り組みを行い、両者ともに90日を超える入院患者が減少している」状況を、入院分科会が近くまとめる「最終報告」に盛り込む考えです。

 ただし石川広巳委員(社会医療法人社団千葉県勤労者医療協会理事長)は、「90日超の入院患者が7対1や10対1で減少しているが、無理な退院が行われている可能性もある。再入院の状況などを調べる必要があるのではないか」と提案。

 また神野委員は「90日超の入院患者でも、6割近くは入院医療が必要な状況である」点を忘れてはいけないと強調しています。

療養病棟入院中の褥瘡発生、病院によってばらつき大きい

 現在は、褥瘡のある患者は自動的に、点数の高い医療区分2とされます。しかし、入院医療分科会では、「療養病棟に入院してから発生した褥瘡については、医療区分2としない」こととしてはどうかとの提案を暗に行いました(関連記事はこちら)。入院後に褥瘡が生じるということは、ケアの質が悪い可能性があるため、これに高い診療報酬を設定すべきではないとの考え方です。

 この点について厚労省は、「入院時からの褥瘡」と「入院中に発生した褥瘡」の状況を病院ごとに調査しました。

 そこからは、「入院時には褥瘡があったが、入院中にほとんど褥瘡が発生していない」質の高いケアを行っている病院がある一方で、「入院時にはほとんど褥瘡がなかったが、入院中に多くの患者で褥瘡が発生した」ケアの質が低い病院もあることが分かりました。

ブルーの療養病棟では褥瘡に対するケアの質が良く、赤の療養病棟では褥瘡に対するケアの質が良くないと考えられる

ブルーの療養病棟では褥瘡に対するケアの質が良く、赤の療養病棟では褥瘡に対するケアの質が良くないと考えられる

 このデータを見て本多伸行委員(健康保険組合連合会理事)は「入院中に生じた褥瘡について、診療報酬で評価すべきではない」と改めて主張。

 しかし、池端幸彦委員(医療法人池慶会理事長・池端病院院長)は「療養病棟が玉石混淆なのは事実だ」とした上で、「やむを得ず入院中に発生してしまう褥瘡もある」と述べ、きめ細かな対応をすべきと訴えています。

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