有床診の減少続く、次期改定での対応を模索―入院医療分科会
2015.7.3.(金)
2016年度の次期診療報酬改定に向けて、有床診療所の報酬をどう見直していくか。地域包括ケアシステムの中で重要な位置を占める有床診ですが、施設数・病床数とも減少が続いています。1日に開かれた診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」では、有床診の診療報酬について総括的な議論が行われました。
有床診の施設数は、1990年には2万3689施設ありましたが、2015年4月には8159施設に減少。15年間で約3分の1(34.4%)に減少しています。
減少の要因はさまざまですが、「診療報酬が低過ぎる。31日以上の入院では1日当たり3500円と格安のホテル並みである」との指摘が強く、14年度の前回改定で新区分の設定や点数の引き上げが行われました。
こうした診療報酬上の手当てのほか、疾病構造の変化も手伝って、有床診の1日当たり入院診療報酬点数は増加傾向にあることが分かっています。
また、最近の状況を厚労省が調査したところ、次のようなことが明らかになりました。
▽入院基本料の算定回数のうち8割弱が有床診療所入院基本料1-3であり、眼科、耳鼻いんこう科を除く診療科で入院基本料算定回数の過半数を入院基本料1-3が占めている
▽入院基本料1-3を届け出る際に満たした要件としては、夜間看護配置加算、時間外対応加算1、在宅療養支援診療所などが多い
▽有床診の入院患者の入院前の居場所は自宅が最も多いが、内科、外科、整形外科では他院の急性期病床から、また内科では介護老人福祉施設からも一定程度受け入れている
▽3-5年前と比べた自院の入院ニーズについて、「ほぼ同じ」「減少傾向」と答えた医療機関が多く、「減少傾向」と答えた施設は外科で多く、産婦人科、眼科で少ない
▽今後の運営の方向性について「現状を維持したい」と答えた医療機関が多かったが、内科、外科では「訪問診療や自宅・介護施設への受け渡し」「終末期医療等に力を入れたい」と答えた施設も一定程度ある
このように、有床診にはさまざまなタイプがあり、一律の方向性を示すことは難しそうです。厚労省は「地域包括ケアシステムの中で有床診療所に期待される役割を踏まえ、有床診療所の施設基準などをどう考えるか」との論点を提示しましたが、具体的な方策は模索中です。
厚労省保険局医療課の担当者は、有床診数の減少傾向について「何床を維持すべきという目標は特に定めていない」と述べており、次期改定では「救済」ではなく、病院と同じく「機能に着目した評価」が中心となりそうです。
厚労省が6月30日に公表した医療施設動態調査結果(15年4月末)からは、有床診の全国の施設数は8159施設となり、近く8000施設を割りそうな状況にあることも分かっています。一方で、無床の一般診療所は前月に比べて116施設も増加しています。
15年4月の医療施設の総数は17万8158施設となり、前月よりも118施設増加しました。無床診療所が増加していることが要因です。
病院は8484施設で、前月から1施設減少しました。種類別に見ると、一般病院が7419施設で前月から2施設の増、精神科病院が1065施設で1施設の減となっています。
一般病院の中で、療養病床を持つ病院は3854施設(1施設減)、地域医療支援病院は485施設(3施設増)となっています。
診療所に目を移すと、一般診療所(医科)は10万864施設で、前月から116施設も増加しています。ただし、有床診は48施設減少し、8159施設となりました。無床診療所は164施設増加し、9万2705施設となっています。
病床数に目を移すと、15年4月の全数は167万7846床で、前月から1245床減少しました。
このうち病院の病床数は156万7815床で647床の減少。しかし、一般病床では137床増の89万3763床となっています。
また診療所の病床数は598床減の10万9940床となりました。
平均在院日数の短縮が進む中では病床数の削減は避けられません。今後も病床数の減少傾向は続くことでしょう。
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