2018年度の次期診療報酬改定に向け、入院医療分科会や結果検証部会での検討テーマを固める―中医協総会
2016.4.27.(水)
2016年度の今回診療報酬改定では、一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」について新たにC項目を導入したほか、DPCの機能評価係数IIに「重症度指数・係数」を新設し、回復期リハビリ病棟にアウトカム評価を導入するなど、大きな見直しが行われました。
こうした見直しの影響・効果がどのように出ており、また2018年度の次期診療報酬改定でどのように見直すべきかを議論する場をどこにするのか。27日の中央社会保険医療協議会・総会では、この点について方針を固めました。
また病院の再編・統合に伴うDPCへの継続、平成28年熊本地震への対応などについて報告を受けました。
目次
重症度、医療・看護必要度見直しの影響、入院医療分科会で調査・分析
診療報酬改定について、最終的にはすべて中医協総会での了承が必要です。しかし、保険診療がカバーする範囲は広く、専門家による調査・分析などが必要な事項も多いため、中医協はテーマに応じて議論の場(分科会など)を変えています。例えば、入院医療の見直しについては「入院医療等の調査・評価分科会」、DPCの見直しについては「DPC評価分科会」といった具合です。
2016年度改定では、前述のように大きな見直しが行われており、この見直しが医療現場にどのような効果・影響を及ぼしているのかを見極め、歪みが出ていれば是正策を、効果が不十分であればテコ入れ策を検討する必要があります(関連記事はこちらとこちら)。
27日の中医協総会では、改定答申に当たっての附帯意見(いわば次期改定への宿題事項)を、どの分科会などで検討するかが固められました。大枠は次の通りです。
▽急性期、回復期、慢性期などの入院医療の機能分化・連携の推進(重症度、医療・看護必要度などの施設基準の見直し、地域包括ケア病棟に包括範囲見直し、療養病棟入院基本料の評価見直しなど)
→入院医療等の調査・評価分科会
▽調整係数の機能評価係数IIへの置き換えに向けた適切な処置や、医療機関群・機能評価係数IIの見直しなど
→DPC評価分科会
▽かかりつけ医などに関する評価の見直し、外来医療の適切な評価の在り方
→結果検証部会
▽紹介状なしの大学病院受診時の定額負担導入
→結果検証部会
▽質の高い在宅医療の推進(重症度や居住形態に応じた評価の影響)など
→結果検証部会
▽回復期リハビリ病棟におけるアウトカム評価の導入、維持期リハビリの介護保険への移行など
→結果検証部会
▽費用対効果評価の本格導入、著しく高額な医療機器を用いる医療技術における費用対効果評価の観点導入
→費用対効果評価専門部会
▽ICTを活用した医療情報の共有の評価の在り方
→総会
このように見ると結果検証部会が中心となる「結果検証調査」が相当大規模に行われるように感じますが、厚労省保険局医療課の宮嵜雅則課長は「NDB(National Data Base)や社会医療診療行為別調査なども活用すれば、さまざまなデータ収集ができる」と述べ、医療現場の調査負担も軽減したい意向を述べています(調査の負担が重くなれば、検証調査への回答率が下がってしまう)。
病院の再編統合、DPCの参加を継続希望する場合「6か月前」までに申請を
27日の総会では、「長崎みなとメディカルセンター市民病院」についてDPC制度への参加継続が報告されました。
同院は、今年(2016年)3月27日に、旧「長崎みなとメディカルセンター市民病院」と「長崎みなとメディカルセンター成人病センター」の合併で生まれた病院です。DPCへの参加要件(10対1以上、診療録管理体制加算の届出、DPC調査への適切な参加など)を満たしていることが確認され、参加継続が認められたものです。
ところで、同院は旧病院から名称が変わっておらず、成人病センターを吸収した格好と言えます。このため同院では「合併(予定)の6か月前までに、厚労省に申請する」という規定には該当しないと判断していたといいます。
DPC制度では、対象病院すべてのデータを基礎にさまざまな係数の設定などが行われるので、「データ提出(調査)への適切な参加」などが叶わない病院は、DPC制度から除外(退出)されます。合併によって病院の体制が変更となることもあり、体制の確認などのために厚労省は「合併の6ヵ月前まで」の申請を求めているのです(関連記事はこちら)。
厚労省保険局医療課の眞鍋馨企画官は、▽審査の対象となる場合を明確化し周知する▽手続きもれに関する対応を今後検討する―ことを提案し、了承されました。
前者では、例えば今回のように「吸収合併であっても、申請の対象となる」ことを明らかにするものです。
また後者の「手続きもれ」によってペナルティが課されるかどうかは、今後のDPC評価分科会での議論を待つ必要があります。
平成28年度熊本地震、必要に応じて適切な医療保険の対応を検討
また宮嵜医療課長は、今般の「平成28年熊本地震」で被災された方に適切に医療提供が行われるよう、診療報酬をはじめ、医療保険制度で次のような対応を採っていることを報告しました。今後も必要に応じて適切な対応を検討して行く考えです(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
【被災者支援】▽被保険者証がない場合の取り扱い(氏名などの申告で保険診療を可能とする)▽一部負担金の取り扱い(猶予する)
【被災地医療機関】▽許可病床数超過入院▽看護配置▽平均在院日数―などについて一時的な変動を認める(診療報酬の減額などは行わない)
【被災地以外の医療機関】▽許可病床数超過入院▽看護配置▽平均在院日数―などについて一時的な変動を認める(診療報酬の減額などは行わない)
【関連記事】
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