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被災者の受け入れで施設基準を満たせず、定員超過となっても診療報酬の減額行わず―熊本地震で厚労省が通達

2016.4.19.(火)

 平成28年度熊本地震で被害にあわれた方に適切に保険診療を提供できるよう、厚生労働省は診療報酬や医療保険の手続きなどについて、特例を実施しています。

 例えば、一時的に定員を超過する入院患者を受け入れざるを得ない状況が生じますが、その場合でも診療報酬の減額は行わないこと、有効期間を過ぎた訪問看護指示書の利用を一定程度認めること、被保険者証を提示できない患者にも保険診療を提供できることなど多岐にわたる内容です。

 地震の被害にあわれた方に心からお見舞い申し上げますとともに、1日も早い復興に向けてメディ・ウォッチでも情報提供を通じて支援いたします。

被保険者証を紛失しても氏名などの申告で保険診療を受けられる

 家屋の倒壊などにより、被保険者証(保険証)を携行せずに避難された方も少なくないことでしょう。

 厚労省は、こうした方でも安心して医療が受けられるよう、▽氏名▽生年月日▽連絡先(電話番号など)▽被用者保険の被保険者では事業所名(勤め先)▽国民健康保険または後期高齢者医療制度の被保険者では住所▽国民健康保険組合の被保険者では事業所名や住所に加えて組合名―を医療機関の窓口で申し立てることによって保険診療を受けられることとしています(厚労省の関連サイトはこちら)。

 ただし、この場合の診療報酬請求では、次のような点に留意する必要があります。

▽受診の際に確認した被保険者の事業所や過去に受診した医療機関への問い合わせや、窓口での確認事項などによって、可能な限り保険者などをレセプトに記載する

▽保険者を特定できないものについては、住所や事業所名、患者の連絡先などをレセプトの欄外上部に記載し、国保連・支払基金それぞれに請求する

 また指定難病患者などの公費負担医療の受給者が、関連書類等を提示できない場合には、▽各制度の対象者であることの申し出▽氏名▽生年月日▽住所―などを確認することによって公費負担による医療を受けることができます。緊急の場合には、指定医療機関以外の医療機関でも受診が可能です(厚労省の関連サイトはこちら)。

 なお、保険者は被災者の一部負担(窓口負担)について減免を行うことが可能です(健康保険法75条の2)。

看護配置や月平均夜勤時間、1割以上変動しても変更届け出は不要

 保険診療を提供する上では、必要な人員や設備の整備、一定の勤務体制の確保などが必要とされています(例えば施設基準など)。

しかし、この取り扱いを厳格に運用すれば、被災者に医療を提供する医療機関が不利益(診療報酬の減額など)を受けてしまいかねません。そこで、厚労省は次のような特例を実施することを決定しています。

(1)保険医療機関などの建物が全半壊した場合、仮設医療機関などとの継続性が認められれば、保険診療などを提供してもよい

(2)平成28年熊本地震による被災者を受け入れたことにより超過入院となった保険医療機関について、当面の間、定員超過による診療報酬の減額は行わない

(3)被災者の受け入れによる入院患者が一時的な急増、あるいは職員を被災地に派遣したことによる一時的な人員不足によって入院基本料の施設基準が満たせなくなっても、当面「月平均夜勤時間数」については1割以上の一時的な変動があったとしても変更届け出は行わなくてもよい

(4)(3)と同様の場合、「1日当たり勤務する看護要員の数」、および「看護要員と入院患者の比率」「看護師の比率(看護師および准看護師)」については、当面、1割以上の一時的な変動があったとしても変更届け出は行わなくてもよい

(5)(3)と同様の場合、DPC対象病院への参加基準を満たさなくなっても、届け出を行わなくてもよい

(6)(2)-(5)について入院患者の一時的な急増や職員派遣による一時的不足について記録しておく

【訪問看護】

 訪問看護については、▽平成28年4月14日以前に主治医の指示書の交付を受けている▽平成28年熊本地震に係る災害救助法の適用市町村に所在し、被災で主治医と連絡がとれず4月15日以降の指示書が交付されない▽利用者の状態からみて訪問看護が必要―のすべての要件を満たす場合、有効期間を超えた訪問看護指示書に基づいた訪問看護を提供したとしても訪問看護療養費を算定することが認められます。

 また、被保険者が平成28年熊本地震に係る災害救助法の適用市町村に所在していた場合であって、被災のため避難所や避難先の家庭などで生活している場合には、居宅以外の訪問でも訪問看護療養費の算定が可能です。

 介護保険法に基づく訪問看護についても、同等の取扱いとなります。

【保険薬局】

 保険薬局で調剤を行うにあたり、次の場合には正式な処方せんに基づかなくても保険調剤として取り扱うことが可能です。

▽被保険者証などの提示ができず保険者番号などの記載がない処方せん、救護所などで交付された処方せんについて、必要事項を確認した上で、保険調剤として認めてよい

▽患者が処方せんを持参せずに調剤を求めてきた場合、医師の診療を受けられないなどやむを得ない事情が認められれば、事後の処方せん発行を条件として、保険調剤として認めてよい

避難所に居住する患者に対し、訪問診療などの提供も可能

 さらに厚労省は、次のようなQ&Aも提示しています。

▽被災地の保険医療機関の医師などが、各避難所などを自発的に巡回し、診療を行った場合には、保険診療として取り扱うことはできない。災害救助法の適用となる医療については、県市町村に費用を請求する

▽被災地の保険医療機関の医師などが各避難所などを自発的に巡回し診療を行っている際に、偶然、普段外来にて診療している患者の診察、処方などを行った場合でも、保険診療として取り扱うことはできない。災害救助法の適用となる医療については、県市町に費用を請求する。

▽被災地の保険医療機関の医師などが、避難所に居住する「疾病、傷病のために通院による療養が困難な患者」に対して、当該患者が避難所にある程度継続して居住している場合に、定期的な診療が必要と判断され、患者の同意を得て継続的に避難所を訪問して診察を行った場合に、訪問診療料を算定できる。

▽上記で、複数人に同一日に訪問診療を行う場合には「同一建物居住者」として取り扱う。なお、避難所などにおいて「同一世帯の複数の患者」に診察をした場合は、「同一建物居住者」の取扱いではなく、1人目は「同一建物居住者以外の場合」を算定し、2人目以降は「初診料・再診料・外来診療料・特掲診療料」のみを算定する

▽被災前から在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料の対象となる医学管理を行っている患者が避難所に避難し、当該患者に当該医学管理を継続して行う場合、当面、被災前の居住場所に応じた区分に従って、当該管理料を算定できる。ただし、避難場所が分散し、被災前の居住場所と比べて「単一建物居住患者の人数」が減少した場合には、減少後の人数に基づいて算定できる

▽避難所などにある程度継続して居住する患者であって、定期的に外来での診療を受けている者からの求めに応じて、当該診療を行っていた医師が避難所などに往診を行った場合、往診料は算定できる。ただし2人目以降は再診料を算定する

▽被災地の医療機関が、やむを得ず医療法上の許可病床数を超過して入院させた場合には、当面、次のような取り扱いとなる。

 ・実際に入院した病棟(病室)の入院基本料・特定入院料を算定することが原則

 ・会議室など病棟以外に入院する場合には、必要とされる診療が行われている場合に限り、当該医療機関が届出を行っている入院基本料のうち、当該患者が入院すべき病棟の入院基本料を算定する

 ・本来入院できない病棟に入院(精神病棟への精神疾患ではない患者の入院など)、診療報酬上の施設基準の要件を満たさない患者の入院については、入院基本料を算定する病棟では当該入院基本料を算定し、特定入院料を算定する病棟では「医療法上の病床種別と当該特定入院料が施設基準上求めている看護配置」により、算定する入院基本料を判断する(一般病床の回復期リハ病棟では、看護配置が15対1ゆえ「15 対1一般病棟入院基本料」を算定)

▽被災した他の保険医療機関から転院の受け入れを行った場合、転院患者を含めて平均在院日数を計算する。ただし、施設基準(7対1であれば18日以内)を超過しても、当面は当該入院基本料の算定を継続できる

▽被災者などを受け入れた場合、当面、当該患者を除いて特定入院料の施設基準の要件を満たすかどうかを判断する(被災地以外でも同様)

▽災害などで診療の継続が困難となった他の保険医療機関から転院を受け入れた場合、入院日は「当該保険医療機関に入院した日」とする(被災地以外でも同様)

▽被災地で透析設備が使用不可能となっている場合に、震災以前から当該保険医療機関に入院して透析を行っている患者が、真にやむを得ない事情で、他医療機関で透析を受けた場合、入院基本料・特定入院料の控除は行わない

▽DPCのデータ提出については、当分の間期限を延長する

▽被災地以外の保険医療機関で、被災地の保険医療機関から、医療法上の許可病床数を超過して転院の受け入れを行った場合には、当面、次のような取り扱いとする

 ・実際に入院した病棟(病室)の入院基本料・特定入院料を原則とする

 ・本来入院できない病棟に入院(精神病棟への精神疾患ではない患者の入院など)、診療報酬上の施設基準の要件を満たさない患者の入院については、入院基本料を算定する病棟では当該入院基本料を算定し、特定入院料を算定する病棟では「医療法上の病床種別と当該特定入院料が施設基準上求めている看護配置」により、算定する入院基本料を判断する(一般病床の回復期リハ病棟では、看護配置が15対1ゆえ「15 対1一般病棟入院基本料」を算定)

▽被災地の患者を許可病床数を超えて受け入れている場合には、当面の間、当該患者を除いて平均在院日数を算定する

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