診療報酬の被災地特例、現在利用している特例のみ9月まで継続可能、ただし柔軟な対応も―中医協総会
2016.3.9.(水)
東日本大震災に伴う診療報酬上の特例措置(被災地特例)について、今年(2016年)4月以降は「現に利用している特例措置」について、厚生局に届け出た上で、今年(2016年)9月30日まで利用の継続を認める―。こういった方針が、9日に開かれた中央社会保険医療協議会総会で了承されました。
ただし、今後、避難指示などが解除された地域で診療を再開したり医療機関を新設する場合などについては、個別ケースの状況を勘案して「柔軟に対応していく」考えも厚生労働省保険局医療課の宮嵜雅則課長から説明されました。
2011年3月11日に発生した東日本大震災と、それに伴う原発事故により、特に東北3県(福島県、岩手県、宮城県)では多くの被害が出ました。医療機関も例外ではなく、設備や人員に大きなダメージが生じたことから、厚労省は「診療報酬上の特例措置」(被災地特例)を一時的に認めています。
例えば、看護師確保が極めて困難かつ被災者を多く受け入れなければならないことから、「看護職員などの数や入院患者と看護職員の比率、看護師比率について、1割以上の一時的な変動が生じても、当面、届け出を要しない」としています。また、在院日数が延長しても「震災前の入院基本料算定を認める」という特例もあります。
これら被災地特例については、震災からの復旧・復興に伴い利用が減少していますが、今年(2016年)1月時点でも18の医療機関(岩手4件、宮城5件、福島9件、他都道府県ではゼロ件)が利用しており、うち17の医療機関は特例の継続を希望しています。特に福島県の医療機関からは、「原発事故後、看護師確保が極めて困難である」との訴えがあります。
こうした状況を踏まえて、宮嵜医療課長は次のような対応をとることを9日の中医協総会に提案しました。
(1)現に利用している特例措置について、厚生局に届け出た上で、2016年9月30日まで利用の継続を認める
(2)「月平均夜勤時間数」「看護配置」の特例については、届け出を認めるに当たり、県・県ナースセンター・医療勤務環境改善支援センターなどに相談することを求める
(3)厚生局は、特例措置を利用する医療機関を訪問するなど、状況の把握などに丁寧に対応する
(4)今後、被災地や被災医療機関の状況に変化があり、必要がある場合には別途対応を検討する
(1)の継続利用について、これまでは「福島県では、必要があれば新規の特例措置利用も認める」こととされていましたが、今後は原則として新規利用は認められなくなります。ただし、今後、除染が進んで避難指示が解除され、被災地で診療を再開したり、新規に医療機関を開設する場合に、看護師確保などが難しいケースもあります。この場合には(4)にあるように、別途対応を検討することになります。宮嵜医療課長は「個別ケースの状況を把握して柔軟に対応する」考えを明確にしています。
また(2)の「県ナースセンターなどへの相談」は、医療機関の体制を通常に戻すことが主眼で、「事前に相談した上でなければ届け出も認めない」といった厳格な手続きを求めるものではありません。厚労省保険局医療課の担当者は「特例措置を利用している医療機関は限られており、厚生局も状況を把握している。厳格な手続きを定めるものではない」と説明しており、地域が連携して、震災前のような通常の診療体制を取り戻してほしいという厚労省の期待の表れと言えるでしょう。
なお、特例措置に関する「被災の影響で施設基準などを満たせなくなった場合の利用が原則」「被災の影響によるものでない場合や、特例措置を利用せずとも施設基準を満たせる場合には届け出は認められない」といった原則は、これまで通りです。
9月以降の取り扱いについては、今夏に中医協で改めて検討されます。
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