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看護必要度、2018年度改定だけでなく将来を見据えた大きな見直しを行うべきか—入院医療分科会

2017.7.3.(月)

 2025年に向けて、医療ニーズは増加するものの、支え手である若人は減少していくため、質の高さとともに「効率性」を重視した医療体制の構築が不可欠となる。そうした中で、7対1、10対1病棟の評価指標である▼重症度、医療・看護必要度▼平均在院日数▼在宅復帰率(7対1のみ)―などをどう見直していくべきか—。

こういった議論が6月21日の診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」で始まりました。遅くなりましたが、分科会の模様をお伝えします(関連記事はこちらこちらこちら)。

看護必要度、厚労省は「指標の議論をしっかりと行ってほしい」と要望

診療報酬改定論議は、最終的には中医協総会で結論を得ることになりますが、入院医療については事前に「専門的な調査・分析」と「技術的な課題に関する検討」を下部組織である「入院医療等の調査・評価分科会」(以下、入院医療分科会)で行うことになっています(2014年度改定から)。

7対1入院基本料の評価指標としては、現在(1)一般病棟用の重症度、医療・看護必要度(以下、看護必要度)(2)平均在院日数(3)在宅復帰率—の3項目があり、施設基準において「看護必要度を満たす患者が25%以上」「平均在院日数が18日以内」「在宅復帰率が8割以上」という要件が定められています。

これらをどう見直していくのか、あるいは新たな指標を導入するのか、などが注目されています(関連記事はこちら)。まず(1)の看護必要度については、2017年度の前回改定で▼A項目、B項目の一部見直し▼C項目の新設▼看護必要度該当患者の定義見直し(A3点以上、C1点以上も追加)▼看護必要度該当患者割合の引き上げ(25%以上)―という極めて大きな見直しが行われました。しかし、病院団体は「内科系の技術評価が不十分ではないか」としてさらなる見直しを求める見解を示している一方、中央社会保険医療協議会総会などで診療側委員から「混乱がやっと収まってきたところであり、2018年度には見直すべきではない」との指摘が出るなど、さまざまな思惑が錯綜しています。

21日の入院医療分科会でも、島弘志委員(社会医療法人雪の聖母会聖マリア病院院長)らは「看護必要度は病院経営や、病棟における看護職員配置(傾斜配置)のためのツールなど、さまざまに利用されており、すべてを満足させるために抜本的な制度改革が必要になるのではないか」といった指摘が出される一方、石川広己委員(千葉県勤労者医療協会理事長)は「大きな見直しは経営的にも混乱を招く。今の看護必要度に齟齬があるのかという検証から始めることが重要」と述べています。また看護必要度の生みの親である筒井孝子委員(兵庫県立大学大学院経営研究科教授)は「2006年度に7対1を創設した際には患者状態などの要件がなく、それを10年かけてやっとここまで持ってきた。2018年度改定まで、入院医療分科会では半年しか議論できない。その中で例えば急性期病棟を代表するような評価指標を見出すことができるのだろうか」といった旨の指摘を行い、島委員の「抜本改革」論議を牽制しました。

この点、2018年度改定だけを見れば、石川委員や筒井委員の「現実」路線に軍配が上がりそうですが、2018年度の診療報酬・介護報酬改定は「2025年に向けて大きな舵を切れる最後の改定」と位置付けられており、将来を見据えて、少なくとも「布石」を打っておく必要もあるでしょう。厚労省保険局医療課の迫井正深課長は「混乱を避けるために経過措置なども議論していただくことになるが、評価指標の在り方はしっかりと議論してほしい」と要望しています。

そうした将来に向けた布石としては、厚労省から「複数の評価軸による複合的な指標を1つの基準値(25%以上)で設定しているため、それぞれの特性に応じてきめ細やかな分析が必要ではないか」といった論点が示されました。改定後の看護必要度を満たす患者割合は24.6%であり、うち17.9%は従前からの定義である「A2点以上かつB3点以上」の患者で、また6.9%は、2016年度に導入された新定義(A3点以上、C1点以上)による患者です。これらを全部まとめて「25%以上」としていますが、診療科によって患者構成が異なる(当然、看護必要度を満たす患者割合も異なる)ことから、よりきめ細かに考えていくべきかを考えるものです。ただし、筒井委員は「特に高齢者について、どの診療科担当として入院させるかは、実際のところ病院任せであり、診療科ごとの分析や設定は非常に難しいのではないか」との指摘を行っています。

看護必要度外来患者割合は、7対1全体では平均して24.6%(患者対象の調査)。うち17.9%は従前の定義(A2点以上かつB3点以上)に該当しており、6.9%は新定義(A3点以上、C1点以上)に該当している

看護必要度外来患者割合は、7対1全体では平均して24.6%(患者対象の調査)。うち17.9%は従前の定義(A2点以上かつB3点以上)に該当しており、6.9%は新定義(A3点以上、C1点以上)に該当している

診療科別に見ると、看護必要度該当患者割合には大きなバラつきがあることが分かる

診療科別に見ると、看護必要度該当患者割合には大きなバラつきがあることが分かる

 
また委員からは、「病棟単位、病棟群単位の評価」(神野正博委員・社会医療法人財団董仙会理事長)、「患者や家族の気持ち(例えば看護必要度を満たさなくなった場合に、即、地域包括ケア病棟などに転院・棟が求められるなど)」(同)、「看護必要度を満たさないものの、次順位に該当する患者の状況」(池端幸彦委員・医療法人池慶会理事長)などの意見が出されています。今後、様々な角度での分析結果が厚労省から示されることになります。

 なお、武井純子委員(社会医療法人財団慈泉会相澤東病院看護部長)は「現場では、看護必要度を踏まえた看護師・看護補助者の配置に活用しているほか、看護の標準化、退院支援などにも用いており、重要なマネジメントツールとなっている」ことを説明した上で、「現場の労力(毎日の入力と、チェック)も勘案してほしい」と強く要望しました。

平均在院日数、委員からは「2018年度改定でこそ見直すべき」との指摘も

 (2)の平均在院日数については、筒井委員が「看護必要度は毎回の改定で見直しを行っているが、平均在院日数は2014、16年度と見直しを行わなかった。次の2018年度には見直しに向けた議論を行うべき」と強く求めています。

 また筒井委員と石川委員は、(2)の平均在院日数と(3)の在宅復帰率を組み合わせ、例えば「7対1から直接自宅に復帰した場合」(この場合は、7対1の在院日数のみを勘案すればよい)、「7対1から介護老人保健施設を経由して自宅に復帰した場合」といった具合に、経路別の「総入院・入所日数」などを考える必要があると指摘しています。現在の調査方法では限界がありますが、米国オバマケアで導入された【e-DRG】(expanded-DRG)にもつながる分析を求める意見です。【e-DRG】は、個々の医療機関だけでなく、個々の患者について一連の疾病治療に関連する複数の施設を、いわば一体としてみるもので、例えば病院で十分な治療をせずに退院させ、再入院となった場合には、再入院の費用請求を認めないなどのペナルティが課されます。今後、注目すべき指標の1つとなるかもしれません。

 なお本多委員は、「日本は先進諸国の中で飛び抜けて平均在院日数が長い。急性期のリハビリなどを積極的に行い、在院日数短縮を目指すべき」と提案しました。

入院直後から退院を見据えた「入退院支援」の推進も重要課題

21日の入院医療分科会では、退院支援改め「入退院支援」も議題となりました。入院直後(予定入院であれば、入院前)から退院を見据えた支援・調整を行うことの重要性に鑑みた新用語です。

厚労省からは、円滑な退院に向けたハードルとして、急性期では「転院先の医療機関確保」と「家族の希望」、慢性期では「家族の希望」があること、さらに外来・在宅で管理可能(つまり入院は不要)な患者において、退院後に必要となるのは「食事・排泄・移動などの介護」であること、などが紹介されました。

家族の希望が、円滑な退院に向けた最大のハードルとなっていることが分かる(その1)

家族の希望が、円滑な退院に向けた最大のハードルとなっていることが分かる(その1)

家族の希望が、円滑な退院に向けた最大のハードルとなっていることが分かる(その2)

家族の希望が、円滑な退院に向けた最大のハードルとなっていることが分かる(その2)

食事・排泄・移動などの介護が、退院のハードルを下げるための1つの視点となる

食事・排泄・移動などの介護が、退院のハードルを下げるための1つの視点となる

 
しかし「家族の希望」で退院が困難となっている患者について、急性期病院にどこまでの支援を求めるかには議論があります。筒井委員や神野委員は「病院ではどうにもできない。診療報酬で締め付けられてはかなわない」と指摘。また池端委員は「家族との十分な調整は地域包括ケア病棟や療養病棟の役目であろう。急性期治療を終えたら、できるだけ早く療養病棟などに送ってほしい」との見解を述べています。
 
なお、筒井委員は「要介護高齢者では、入院によって従前のケアマネジャーとの関係が切れてしまい、十分な情報連携を阻害している。2018年度は同時改定であり、診療報酬・介護報酬の両面から、こうした不具合を是正していく必要がある」とも指摘しました。

  
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