糖尿病治療薬オイグルコン錠などの新生児糖尿病への使用、痛風等治療薬コルヒチン錠の心膜炎への使用を保険診療で認める—支払基金・厚労省
2025.10.1.(水)
インスリン非依存型糖尿病治療薬の「グリベンクラミド」(販売名:オイグルコン錠ほか)を「新生児糖尿病」に対して使用することを保険診療中で認める—。
痛風発作の緩解・予防、家族性地中海熱の治療薬>「コルヒチン」(販売名:コルヒチン錠0.5mg「タカタ」)を「心膜炎」に対して使用することを保険診療の中で認める—。
社会保険診療報酬支払基金(支払基金)が、9月29日に公表した「医薬品の適応外使用に関する特例ルール」において、こうした点が明らかにされました(支払基金の審査情報提供サイトはこちら(薬剤、末尾に今回の事例が追加されている))。厚生労働省も同日に、事務連絡「医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱いについて」を示しています。
薬理作用等に照らし、審査における「医薬品使用の柔軟な取扱い」を一定程度認める
保険診療において、医薬品の使用は「薬事・食品衛生審議会(薬食審)で有効性・安全性が認められた傷病」(添付文書に記載された傷病)に限定されます。添付文書に規定されていない傷病への医薬品使用(適応外使用)は原則として保険診療の中では認められず、すべてが自由診療となります(混合診療の禁止)。医薬品使用を無制限に認めたのでは医療費の高騰・医療費財源の不適切な配分にもつながってしまうことはもとより、「医療安全の確保」ができなくなってしまうためです。
ただし医療現場では「医学的・薬学的知見に照らし、薬食審で認められていない傷病にも一定の効果がある」と強く推測されるケースがあります。こうした場合には、例外的にレセプト審査において柔軟な対応(適応外使用であっても保険診療として取り扱うことを認める)がなされることがあります(いわゆる「55年通知」(旧厚生省保険局長による1980年(昭和55年)発出の通知)に基づく適応外使用など)。
もっとも、こうした例外的な取り扱いを野放図に認めれば「全国一律の診療報酬」の原則に反し、結果「混合診療の解禁」にもつながりかねません。現に、地方独自の審査ルール(都道府県ルール、例えば「山間部などでは冬期に高齢者の通院が困難になるので、薬剤の1回処方量を多くすることを認める」「地域によって、疾患別リハビリテーションを1日6単位までしか認めない(診療報酬点数上は9単位まで算定可能)」など)が存在しており、是正に向けた取り組みも進められています。また「審査の透明性」という面でも大きな問題があります(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちら)。
そこで支払基金では、こうした「例外的な取り扱い」に関する審査ルールを明確にし、適宜、医療関係者らに情報提供しています(支払基金の審査情報提供サイトはこちら(薬剤、、末尾に今回の事例が追加されている))。
今般、支払基金は薬剤について、次の2件の審査ルール(特別ルール)を明確にしました。
(1)インスリン非依存型糖尿病(ただし、食事療法・運動療法のみで十分な効果が得られない場合に限る)の治療に用いるグリベンクラミド(販売名:オイグルコン錠1.25mg、同錠2.5mg)、他後発品あり)について、「原則として、『新生児糖尿病』に対して使用した場合、当該使用事例を審査上認める」こととする
→薬理作用(膵β細胞のATP感受性カリウムチャネルに作用し、インスリン分泌を促進する)が同様で、妥当と推定される
●当該使用における留意事項
▽「新生児・乳児糖尿病の十分な治療経験がある専門医により診断がついた症例」に対して使用するべきである
▽当該使用例の用法・用量
→(小児内分泌疾患の治療(日本小児内分泌学会編)に準拠し)経口0.2mg/kg/日分2より開始し、1週おきに0.2mg/kg/日ずつ増量する
→最大2mg/kg/日経口投与する(ただし、1日最高投与量10mgは超えないこと)
(2)▼痛風発作の緩解および予防▼家族性地中海熱—の治療に用いる「コルヒチン」(販売名:コルヒチン錠0.5mg「タカタ」)について、「原則として『心膜炎』に対して使用した場合、当該使用事例を審査上認める」こととする
→薬理作用(顆粒球の遊走阻害、代謝活性および食活性の減少)が同様で、妥当と推定される
●当該使用における留意事項
▽当該使用例の用法・用量
→通常、体重70kg未満の成人にはコルヒチンとして0.5mgを1日1回経口投与する
→体重70kg以上の成人の場合は、コルヒチンとして0.5mgを1日2回経口投与する
▽高齢者
→使用上の注意において「用量ならびに投与間隔に留意するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与する」と記載があることに留意して使用されるべきである
▽腎機能障害患者および肝機能障害患者
→使用上の注意において「投与する場合には、ごく少量から開始する。本剤の血漿中濃度が上昇し、早期に重篤な副作用が現われるおそれがある」と記載があることに留意して使用されるべきである
▽当該使用例の投与期間
→再発性心膜炎においては「投与期間は概ね6か月」とされていることから、対象となる傷病名を適切に記載する
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