医療・介護等分野でのICTフル活用目指し、厚労省に推進本部を設置
2018.2.14.(水)
医療、介護、福祉などの分野でICT(情報通信技術)をフル活用するための方法を検討し、効率的な社会保障給付や、蓄積したデータの有効活用を実現させる―。
厚生労働省は2月13日、「ICT利活用推進本部」を立ち上げ、このような検討を開始しました。本部の下にICT利活用推進チームを置き、厚労省の若手職員やマイナンバー制度を担当する内閣官房職員らが課題の洗い出しや具体的な方法を検討します。
医療や介護のデータ活用策などを幅広く検討
ICT技術は目覚ましいスピードで発展しており、例えばスマートフォンなどを利用したテレビ電話は幅広く利用され、自宅での就労(テレワーク)が徐々に広まってきています。また、国民一人ひとりに割り振られたマイナンバーを活用するシステムが構築されることで、医療保険の加入手続きなどで必要となる書類の一部を省略できるようになっています。
厚労省は、▼マイナンバーを活用して、社会保障給付をより正確かつ合理的に行えないか▼医療や介護、福祉などのデータを政策立案などに活かせないか▼テレビ電話会議システムなどを使って、厚労省職員らの業務負担を減らすことができないか―と考え、今般、厚生労働大臣を本部長とするICT利活用推進本部(以下、推進本部)を立ち上げました。
推進本部では、(1)正確かつ効率的な社会保障給付の実現(2)分野横断的な業務プロセスの効率化(3)国民の利便性向上(4)関連データの有効活用―に向けた検討を行います。
具体的な検討は、▼厚労省24名▼マイナンバー制度などを担当する内閣官房6名▼総務省4名(アドバイザー)―からなるICT利活用推進チームで行います。まずICT利活用を進める上での課題を洗い出し、「週1回程度」のハイペースで議論をすすめます。2018年内には議論を収束させ、▼業務改革▼データやマイナンバーを活用してできること—をまとめ、推進本部に提出します。
2月13日には推進本部の初会合が開かれ、本部長である加藤勝信厚生労働大臣が「基本的に『紙ベースでの業務をなくす』ところから取り組んでいかなければならない。ICTをフル活用し、正確で合理的な社会保障給付を実現する。また、分野横断的な業務プロセスを連結して、効率化を図り、利用者である国民に『利便性が向上した』と実感してもらうことが重要である。さらに、さまざまなデータを蓄積して積極的に活用していく」と意欲を述べています。
また、ICT利活用推進本部の副本部長を務める高木美智代厚生労働副大臣は、「医療・介護・福祉、子育て支援などに、膨大なデータをどう活用していくか」が重要であると述べた上で、「データこそお金である。マイナンバーの活用やビッグデータ活用を考えたとき『稼げる厚労省』になる」と、「データの価値」を強調。
さらに、ICT利活用推進本部の副本部長で、注目される「働き方改革」も担当している牧原秀樹厚生労働副大臣は、「働き方改革に資するICT、業務改善の実用例」の提案にも言及しました。
なお、厚労省は昨年(2017年)1月にデータヘルス改革推進本部を設置し、健康・医療・介護データを集積・分析し、健康・医療・介護施策のパラダイムシフト(データヘルス改革)を行うためのインフラ整備などを進めています(関連記事はこちら)。推進本部では、データヘルス改革よりも幅広い視点(例えば職員の働き方の改革など)で検討が進められます。
【関連記事】
【2018年度診療報酬改定答申・速報3】かかりつけ機能持つ医療機関、初診時に80点を加算
オンライン診療のルール整備へ議論開始―厚労省検討会
【2018年度診療報酬改定総点検2】ICTの利活用を推進、オンライン診察等の要件はどうなる
審査支払機関改革やデータヘルス改革の実現に向け、データヘルス改革推進本部の体制強化―塩崎厚労相
レセプト請求前に医療機関でエラーをチェックするシステム、2020年度から導入—厚労省
混合介護のルール明確化、支払基金のレセプト審査一元化・支部の集約化を進めよ—規制改革会議
支払基金の支部を全都道府県に置く必要性は乏しい、集約化・統合化の検討進めよ—規制改革会議
審査支払改革で報告書まとまるが、支払基金の組織体制で禍根残る―質の高い医療実現に向けた有識者検討会
支払基金の都道府県支部、ICT進展する中で存在に疑問の声も―質の高い医療実現に向けた有識者検討会
レセプト審査、ルールを統一して中央本部や地域ブロック単位に集約化していくべきか―質の高い医療実現に向けた有識者検討会
支払基金の組織・体制、ICTやネット環境が発達した現代における合理性を問うべき―質の高い医療実現に向けた有識者検討会
診療報酬の審査基準を公開、医療機関自らレセプト請求前にコンピュータチェックを―質の高い医療実現に向けた有識者検討会
都道府県の支払基金と国保連、審査基準を統一し共同審査を実施すべき―質の高い医療実現に向けた有識者検討会で構成員が提案
レセプト審査基準の地域差など、具体的事例を基にした議論が必要―質の高い医療実現に向けた有識者検討会
支払基金の改革案に批判続出、「審査支払い能力に問題」の声も―質の高い医療実現に向けた有識者検討会
診療報酬審査ルールの全国統一、審査支払機関の在り方などをゼロベースで検討開始―厚労省が検討会設置
診療報酬の審査を抜本見直し、医師主導の全国統一ルールや、民間活用なども視野に―規制改革会議WG
ゲムシタビン塩酸塩の適応外使用を保険上容認-「転移ある精巣がん」などに、支払基金
医療費適正化対策は不十分、レセプト点検の充実や適正な指導・監査を実施せよ―会計検査院
レセプト病名は不適切、禁忌の薬剤投与に留意―近畿厚生局が個別指導事例を公表
16年度診療報酬改定に向け「湿布薬の保険給付上限」などを検討―健康・医療WG
団塊ジュニアが65歳となる35年を見据え、「医療の価値」を高める―厚労省、保健医療2035