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GemMed塾 看護モニタリング

【2018年度診療報酬改定総点検2】ICTの利活用を推進、オンライン診察等の要件はどうなる

2018.1.1.(月)

 明けましておめでとうございます。2018年度の次期診療報酬改定に向けた議論が間もなく佳境を迎えますが、2018年度改定では、「これまでにない大きな改革」がいくつか行われる見込みです。

 メディ・ウォッチではこの「これまでにない大きな改革」に着目し、これまで行われた中央社会保険医療協議会の論議をおさらいしています。前回は「入院料の再編・統合」を取り上げましたが、今回は「ICTを利活用した診療」に焦点を合わせてみます。

オンライン診察・医学管理を診療報酬で評価

ICT技術が進展は目覚ましく、少し前には考えも付かなかったようなことが、一般家庭でも普通に利用されるようになってきています。例えばテレビ電話、かつては空想世界の技術でしたが、テレビ電話・会議システムは多くの会社で採用され、さらにスマートフォンを活用して誰でもテレビ電話を使える時代になってきました。

こうした技術は医療現場にも大きな影響を与えることでしょう。塩崎恭久前厚生労働大臣は、一昨年(2016年)12月の未来投資会議・構造改革徹底推進会合で、「遠隔診療のエビデンスを収集したうえで2018年度改定での対応を検討していく」「AIを用いた診療支援技術を確立し2020年度までの実装を目指す。2018年度改定でエビデンスをもとにインセンティブ付けの検討を行う」ことを明言。これを受け、中医協でも「ICTを活用した医療行為の診療報酬上の評価」が大きな論点となりました。

当初、推進派の診療側と慎重派の支払側という構図で議論が対立していたかに見えましたが、両側の主張をきちんと吟味すれば「診療の基本は対面であり、ICTを活用した診療はそれを補助するものである」という認識には違いがなく、メディ・ウォッチでは当初より「建設的な妥協点を見出すことは難しくない」と考えていました(関連記事はこちらこちら)。

厚生労働省もこの基本認識に立って、制度設計を検討。オンラインで行う診察(再診、訪問診療など)や医学管理について、新たな診療報酬を設定する考えが提示しました(関連記事はこちら)。

まず、オンライン診察があくまで「対面診療の補助である」という点などを踏まえて、これを報酬で評価する、つまり医療保険の適用対象とする前提は、(1)特定された疾患・患者である(2)一定期間継続的に対面診療を行っており、受診間隔が長すぎない(3)急変時に円滑に対面診療できる体制がある(4)安全性や有効性のエビデンスが確認されている(個別事例から判断)(5)事前に治療計画を作成している(6)医師と患者の両者の合意がある(7)(1)から(6)のような内容を含む一定のルールに沿った診療が行われている—ことと整理されました。

 
ここから「慢性疾患に罹患し、外来治療や在宅医療が継続的に行われている患者について、再診や訪問診療の一部を『オンライン診察』に置き換える」といった形式での評価が念頭に置かれていることが分かります。オンライン診察は「外来」と「訪問診療」との中間というイメージで、報酬水準は「対面診察」>「オンライン診察」>「電話再診」と設定されることになるでしょう。

厚労省は、さらに進めて「オンライン医学管理」を診療報酬で評価する考えも示しています。

例えば高血圧や糖尿病の患者について、外来での再診に加えて、患者の同意の下に治療計画を策定し、この計画に基づいた生活習慣に関する総合的な治療管理を行った場合には生活習慣病管理料を算定できます。高血圧で毎月1回外来を受診し、生活習慣病管理料を算定している患者Aについて、状態が安定してきたため「毎月1回の外来通院(再診)を、『2か月に一度の外来通院(再診)と、2か月の一度のオンライン診察』に切り替えよう」と医師が判断したとします。その場合、2か月に一度の外来通院に際しては「再診料と生活習慣病管理料を算定」し、2か月に一度のオンライン診察に際しては「オンライン診察料とオンライン生活習慣病管理料を算定」できる、といった形が検討されます。

外来でのオンライン診察・医学管理の想定ケース例(1)

外来でのオンライン診察・医学管理の想定ケース例(1)

 
また慢性疾患で在宅療養をしている患者について、毎月1回以上の訪問診療を行うとともに、個別の患者ごとに総合的な在宅療養計画を作成し、総合的な医学管理を行った場合には在宅時医学総合管理料(いわゆる在総管)を算定できます。毎月2回の訪問診療を受けている患者Bについて、状態が安定してきたため「毎月2回の在宅医療(訪問診療)を、『1か月に一度の在宅医療(訪問診療)と、1か月の一度のオンライン診察』に切り替えよう」と医師が判断したとします。その場合、1か月に一度の在宅医療に際しては「在宅患者訪問診療料と在総管を算定」し、1か月に一度のオンライン診察に際しては「オンライン診察料を算定」(このケースでは、在総管を算定しているので、オンライン在総管は算定不可)できる、といった形が検討されます。
在宅でのオンライン診察・医学管理の想定ケース例(2)

在宅でのオンライン診察・医学管理の想定ケース例(2)

  
また、オンライン診察、オンライン医学管理の評価は初の試みとなるため、まず「1か月に1回まで」という算定上限が設けられます。これは不適切な報酬算定の予防にもつながります。なおオンライン診察で医薬品を処方する場合、「処方箋の原本を患者に郵送する」などの要件を満たせば、処方箋料の算定が可能となる見込みです。

今後の「診察環境や使用機器の基準設定」「具体的な算定要件設定」などの議論に要注目です。

退院支援加算で求められる「面会」の一部をオンライン会議に置き換え可能

このほかICT利活用に関して、次のような論点が注目されます。医療・介護連携の推進、働き方改革にも関連する事項で、今後の技術革新に伴い、さらなる診療報酬上の評価拡大が検討されることになるでしょう(関連記事はこちらこちら)。

▼A246【退院支援加算1】などの要件となっている「対面での面会」について、一部を「ICTを用いた会議」などに置き換えることなどが可能とする

▼医療資源の少ない地域で、法医学研修などを受けた看護師が遠隔地の医師と連携して「ICT用いた遠隔死亡診断ガイドライン」に沿って死亡診断を行った場合、▽死亡患者に訪問診療などを行っている主治医は【死亡診断加算】(往診料、訪問診療料の加算)▽看護師は【訪問看護ターミナルケア療養費】の加算(新設)―を算定可能とする

▼在宅酸素療法患者に対し、医師の対面での診察の「間」に、重症化を防ぐために、在宅療養計画に基づき「患者のバイタルサインなどを遠隔モニタリングし、必要時に療養生活の相談・支援などを行う」ことを評価する

▼プレパラートを用いた病理診断と精度の同等性が確保された検査については「デジタル病理画像のみ」によって病理診断を行う場合も、病理診断料などを算定可能とする

 
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