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退院支援加算2でも、地域連携診療計画加算の算定を可能に―中医協総会 第376回(2)

2017.12.6.(水)

 円滑な退院支援を促進するために、A246【退院支援加算2】でも【地域連携診療計画加算】などを算定できることとし、B004【退院時共同指導料1】やB005【退院時共同指導料2】の職種要件を拡大するなどの見直しを行ってはどうか。また、二次救急医療機関の負担を考慮し、B001-2-6【夜間休日救急搬送医学管理料】の評価を充実してはどうか―。

 12月6日に開催された中央社会保険医療協議会・総会では、こういった点も議題となりました。

12月6日に開催された、「第376回 中央社会保険医療協議会 総会」

12月6日に開催された、「第376回 中央社会保険医療協議会 総会」

2016年度改定後に、要件の厳格化で地域連携診療計画加算の算定が減少

 患者のQOL向上、医療費の適正化などの観点から平均在院日数の短縮が重視されており、診療報酬では「入院医療機関からの円滑な退院を支援」を評価するA246【退院支援加算】や、「入院医療機関と在宅療養を行う医療機関とが共同して退院後に必要な療養上の留意点などを説明する」ことを評価するB004【退院時共同指導料1】・B005【退院時共同指導料2】などが用意されています。

 2018年度の次期診療報酬改定では、「円滑な退院支援」をさらに促進するために、これら報酬項目の要件見直しなどが行われる見込みです。

 A246【退院支援加算】は、2016年度の前回診療報酬改定で従前の【退院調整加算】を拡充した診療報酬項目で、▼「病棟への退院支援専従看護師配置」などを要件とする「加算1」▼「退院支援部門への退院支援専従の看護師配置」などを要件とする「加算2」▼小児特定集中治療室からの退院支援を評価する「加算3」―があります。

退院支援加算1・2の施設基準・算定要件の概要。加算1を届け出るためには病棟に退院支援業務等専従の看護職員・社会福祉士の配置などが必要となる

退院支援加算1・2の施設基準・算定要件の概要。加算1を届け出るためには病棟に退院支援業務等専従の看護職員・社会福祉士の配置などが必要となる

 
このうち、「加算1」あるいは「加算3」を届け出た医療機関では、「転院先に診療情報を文書で提供する」ことを評価する【地域連携診療計画加算】を算定できます(B009【診療情報提供料(I)】でも同様の加算あり)。いわゆる「地域連携パス」を評価するものです。

ところで2016年度改定前には、退院調整加算を届け出ていれば【地域連携診療計画加算】が算定できましたが、改定後に上記の厳格化(退院支援加算1・3届け出医療機関に限定)が行われ、算定件数は大きく減少し、医療現場からは悲鳴が出ています。厚生労働省保険局医療課の迫井正深課長はこの点に鑑み、「退院支援加算2を届け出ている医療機関でも算定可能としてはどうか」と提案しています。

2016年度の前回診療報酬改定後、地域連携診療計画加算の算定件数は大きく減少している

2016年度の前回診療報酬改定後、地域連携診療計画加算の算定件数は大きく減少している

退院時共同指導料、カンファレンスへの参画要件を社会福祉士などにも広げる

 B004【退院時共同指導料1】・B005【退院時共同指導料2】は、前述のとおり「入院医療機関の職員と在宅療養を行う医療機関の職員とが共同して退院後に必要な療養上の留意点などを説明・指導する」ことを評価する診療報酬項目です。

 現在、共同指導を行う(評価対象となる)職種は、▽医師▽看護師▽理学療法士などのリハビリ専門職▽介護支援専門員(ケアマネ)―などに限定されていますが、厚労省の調べでは、「在宅療養を行う医療機関の多くで、退院前カンファレンスに『社会福祉士』が参加している」ことなどが分かっています。

退院時共同指導料を算定するためには、医師や看護師、リハビリ専門職種などが退院時共同指導(退院前カンファレンス)に参加する必要がある

退院時共同指導料を算定するためには、医師や看護師、リハビリ専門職種などが退院時共同指導(退院前カンファレンス)に参加する必要がある

社会福祉士が退院時共同指導に参加しているケースが少なくない(橙色部分)

社会福祉士が退院時共同指導に参加しているケースが少なくない(橙色部分)

 
一方、共同指導のための日程調査が難しく、「指導料の算定回数は伸び悩んでいる」実態も浮かんできています。ここで、上記の社会福祉士などの退院前カンファレンス参加を要件化すれば、日程調整のハードルは一定程度、下がると考えられます(●月●日は、看護師の参加は無理だが、社会福祉士であれば参加できる、など)。

迫井医療課長はこうした状況を踏まえ、退院時共同指導料の「職種、関係機関の要件」を見直す(拡大する)考えを示しています。

 
このほか円滑な退院支援に向け、次のような見直しも行われる見込みです。

▼退院支援が必要な患者で、関係機関と共同指導ができなかった場合に限り、退院後の主治医や配置医のほか、「訪問看護ステーションや介護施設など」に療養上の情報を提供することを評価する(【退院支援加算】や【診療情報提供料(I)】)

医療機関から介護老人福祉施設(特養)に退院したり、在宅に退院した場合などに、特養や訪問看護ステーションに情報提供を行っても、診療情報提供料(I)を算定できない

医療機関から介護老人福祉施設(特養)に退院したり、在宅に退院した場合などに、特養や訪問看護ステーションに情報提供を行っても、診療情報提供料(I)を算定できない

 
▼障害福祉サービスとの連携を推進するため、相談支援専門員を、介護支援専門員と同様に評価する(【退院支援加算】や【退院時共同指導料】など)

▼入院早期から関係機関と協力して支援が必要なケース(家族からの虐待、生活困窮による無保険など)についても、退院困難な要因として【退院支援加算】の対象として明確化する

退院支援加算の算定対象患者のうち、「その他」の中にもさまざまなケースが含まれている

退院支援加算の算定対象患者のうち、「その他」の中にもさまざまなケースが含まれている

 
▼【退院支援加算】の対象者、算定要件等について、小児を診療する医療機関に対応する内容に見直す(現在は、加算1・2は主に高齢者、加算3は新生児を対象としている)
退院支援加算1・2は主に高齢者を対象とし、退院支援加算3は新生児を対象としているので、「小児」の退院支援に力を入れている医療機関が十分に評価されていないという問題がある

退院支援加算1・2は主に高齢者を対象とし、退院支援加算3は新生児を対象としているので、「小児」の退院支援に力を入れている医療機関が十分に評価されていないという問題がある

 
 なお、「入院前や入院直後からの退院支援」の評価は、別途、その方向性が検討されます(外来医療の中で検討)。

二次救急医療機関の負担を考慮し、評価の拡充と夜間看護配置の救済措置を実施

 「医療の原点」とも言われる救急医療については、メリハリを利かせた上で、2018年度改定でも評価の充実が行われる見込みです。

まず二次救急医療機関の外来(救急外来)では、▼救急搬送患者の処置▼病棟との調整―という二つの役割を果たしています。一部の二次救急医療機関では、年間に1万人以上の救急搬送患者を受け入れており、その負担は多大であると予想されます。

一部の医療機関では、極めて多くの救急搬送患者を受け入れている

一部の医療機関では、極めて多くの救急搬送患者を受け入れている

 
この負担に鑑み、2012年度の前回同時改定でB001-2-5【院内トリアージ実施料】(救急搬送「以外」の患者について、状態を評価し、緊急度区分に応じた診療の優先度をつける)とB001-2-6【夜間休日救急搬送医学管理料】(救急搬送患者について、必要な医学管理を行う)が設置されました。しかし、▼前者の【院内トリアージ実施料】は救急搬送患者を対象としていない▼後者の【夜間休日救急搬送医学管理料】は患者の状態評価などを評価していない―ため、「救急搬送患者について状態評価などを行っても、診療報酬では評価されない」状態となっています。

迫井医療課長は、こうした「二次救急医療機関の負担」や「高齢化の進展による中等症・軽症の救急搬送患者が今後、ますます増加すると予想される」点などに鑑み、「看護職員による救急搬送患者への対応」を評価対象とする考えを示しています。上記点数の算定対象を広げることや、新点数を創設することなどが考えられます。

 
ところで二次救急の多くは、200床未満の中小規模病院が担っていますが、夜間の救急外来の看護職員配置について「病棟と救急業務を兼務する看護師」(救急業務に専従でない)の配置にとどまっているところが多いことが分かっています。

しかし、例えば「病棟と救急業務を兼務する看護師が2名」のみ配置されている病院(6割近くの病院では看護補助者の配置なし)で、夜間に救急患者が来院し、1名が救急外来で業務することになった場合、「病棟の夜間看護配置は1名」となり入院基本料の施設基準(7対1・10対1・13対1では、夜勤は看護師1名を含む2名以上配置)を満たさなくなってしまいます。この場合、特別入院基本料を算定することとなり、病院経営の継続が極めて難しくなります。

病棟と救急業務を兼務する看護師が2名のみ配置されている病棟で、救急搬送患者に対応するために1名が病棟を離れた場合、入院基本料の施設基準を満たさないことになってしまう

病棟と救急業務を兼務する看護師が2名のみ配置されている病棟で、救急搬送患者に対応するために1名が病棟を離れた場合、入院基本料の施設基準を満たさないことになってしまう

 
これを厳格に運用した場合「地域の二次救急医療体制」が崩壊する恐れがあり、逆に極めて緩く運用すれば「夜間の医療安全確保」が困難になります。迫井医療課長は、両事態を勘案し、一定の要件(▼患者数の少ない病棟▼病棟の患者の容体▼看護補助者の配置―など)の下で、「夜間の看護職員配置を満たさない場合の評価」を新設する考えを示しました。「看護師夜勤72時間要件」のみを満たせない場合のように、一定の救済措置を設けることになるでしょう。

 
なお、A205【救急医療管理加算】については、「加算1算定患者の中にも比較的軽症と思われる患者がいる」ことが分かり、要件や定義の厳格化が予想されましたが(関連記事はこちら)、迫井医療課長は「現行の枠組み」を維持し、見直しはDPCデータ分析などを踏まえて、2020年度改定以降に検討する考えを示しました。医療現場への影響が大きすぎることや、DPCの救急医療係数など他制度への影響も出てしまうことなどが背景にあると思われます。

200床未満の10対1や回復期リハ、200床以上療養でもDPCデータ提出を義務化

このほか12月6日の中医協総会では、迫井医療課長から次のような提案も行われました。

(1)短期滞在手術等基本料3について、DPC対象病院では「DPC点数」(専らD方式を軸に点数設定を検討)に基づく評価とする(見直しの影響が大きく、新手術・検査項目の追加は見送りに)(平均在院日数、看護必要度への影響に配慮)(関連記事はこちら

短期滞在手術等基本料3のデータを見て、期間Iが5日以内などの疾患をD方式に移管する

短期滞在手術等基本料3のデータを見て、期間Iが5日以内などの疾患をD方式に移管する

 
(2)DPCデータの提出を、▼200床未満の10対1病院▼回復期リハビリ病棟1・2▼200床以上の回復期リハビリ病棟3▼200床以上の療養病棟1病院—にも義務付け、病床機能・特性に応じたデータ提出内容とする。また未コード化傷病名の割合が高い医療機関では減算などを行う。
200床以上の10対1や回復期リハ1・2などではデータ提出を義務化(要件化)するが、200床未満の療養・回復期リハでは要件化は行わず、データ提出促進に向けた見直しを行うにとどめる(医療機関の負担にも配慮)

200床以上の10対1や回復期リハ1・2などではデータ提出を義務化(要件化)するが、200床未満の療養・回復期リハでは要件化は行わず、データ提出促進に向けた見直しを行うにとどめる(医療機関の負担にも配慮)

 
(3)回復期リハビリ病棟1で要件となっている重症患者割合(看護必要度A項目1点以上の患者が5%以上)について、患者の状態に関するその他の指標と一部重複していることや医療機関の負担に配慮し、要件から除外する

(4)適切なリスク評価に基づいた「入院中の新たな褥瘡発生予防」のため、▼入院時に行う褥瘡に関する危険因子の評価の中に、スキン-テア(皮膚裂傷)を加える▼A236【褥瘡ハイリスク患者ケア加算】の対象者に、医療関連機器の長期使用者を加える

(5)7対1・10対1病棟の加算である【ADL維持向上等体制加算】のアウトカム評価として求めている院内褥瘡発生率の基準値(現在、1.5%未満)を見直す(現在の基準では1名に褥瘡が発生すれば加算を算定できない)

(6)療養病床における褥瘡に関す評価について、入院時から統一した評価票とし、また、褥瘡対策がより推進されるよう、【褥瘡評価実施加算】についてアウトカム視点での要件を盛り込む

 
 こうした見直し案について、一部注文は付いたものの、概ね了承されています。次期改定に向けて、年明けから、経過措置なども含めた詳細な詰めの議論が行われることになるでしょう。

 
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