短期滞在手術等基本料3、2018年度改定で4つのオペ・検査を追加へ—入院医療分科会(1)
2017.10.18.(水)
ほぼすべての診療報酬項目を包括評価している短期滞在手術等基本料3(以下、短手3)について、2018年度の次期診療報酬改定で▼D419【その他の検体採取】の5『副腎静脈サンプリング』▼K863-3【子宮鏡下子宮内膜焼灼術】▼K872-3【子宮鏡下有茎粘膜下筋腫切出術】▼K872-3【子宮内膜ポリープ切除術】―の1検査・3手術を追加してはどうか―。
10月18日に開催された診療報酬調査専門組織の「入院医療等の調査・評価分科会」(以下、入院医療分科会)でこういった議論が行われました。今後、DPCの点数設定D方式との整合性に関する検討も行われる見込みです。
短手3に在院日数や点数実績のバラつき小さい4技術を追加へ
2014年度の診療報酬改定で、水晶体再建術など「一定程度治療法が標準化し、短期間で退院可能な手術・検査」については入院5日目までに行われた原則すべての医療行為を包括して支払う仕組み(短期滞在手術等基本料3)が導入されました。
2016年度の前回改定では、「経皮的シャント拡張術」など▼在院日数のばらつきが小さい(平均+1SDが5日以内)▼診療内容のばらつきが小さい(入院5日以内の包括範囲出来高実績点数のばらつきが小さい)▼入院症例数が一定以上ある―という要件を満たした3つの技術が短手3に追加され(関連記事はこちらとこちら)、2018年度の次期改定でも同様の要件を満たす4つの技術(検査1項目、手術3項目)が追加候補として浮上しています。
(1)D419【その他の検体採取】の5『副腎静脈サンプリング』
(2)K863-3【子宮鏡下子宮内膜焼灼術】
(3)K872-3【子宮鏡下有茎粘膜下筋腫切出術】
(4)K872-3【子宮内膜ポリープ切除術】
この点、牧野憲一委員(旭川赤十字病院院長)らから「2016年度改定で新規導入された技術に比べて、包括範囲出来高実績点数の分布が大きいものがある。その要因を分析した上で、追加するかどうかを検討すべき」といった指摘が出されています。例えば「入院基本料の違い(7対1か10対1かなど)」などが考えられ、厚生労働省で精査が行われる見込みです。
短手3とDPCの点数設定D方式、どう整理するか
また厚労省は「短手3」と「DPCの点数設定D方式」との関係を整理すべきではないかとの論点も示しています。D方式は、高額な薬剤などを使用する診断群分類において生じていた「高額薬剤分の報酬を得るまで在院日数を伸ばす」といった弊害を是正するために、入院初日に入院基本料以外の包括報酬をすべて支払ってしまうもので、ほとんどの診療報酬を包括している短手3とともに「1入院当たり包括支払い方式」に近い仕組みとなっています。藤森研司委員(東北大学大学院医学系研究科公共健康医学講座医療管理学分野教授)らから「DPC制度においてはD方式、出来高では短手3とすればよいのではないか」との意見が出ており、今後の議論に注目が集まります。
救急医療管理加算、加算1・2ともに「患者の状態像」の明確化へ
入院医療分科会では「救急医療管理加算」についても、少し詳しい分析結果が示されました。10月5日の前回会合では、2014年以降、救急医療管理加算1(意識障害など状態が比較的明確な患者)と加算2(加算1に準じた状態の患者)に分けて、算定状況を見てみると、▽2014年:加算1が80.3%、加算2が19.7%▽2015年:加算1が73.5%、加算2が26.5%▽2016年:加算1が67.6%、加算2が32.4%—という具合に「加算2のシェア」が高まっていることが報告されました(関連記事はこちら)。
今回は、新たに次のような調査・分析結果が示されています。
▼加算1の内訳を見ると、「呼吸不全・心不全で重篤な状態」がもっとも多く29.1%。次いで「緊急手術、緊急カテーテル治療・検査、t-PA療法を必要とする状態」20.6%、「吐血、喀血または重篤な脱水で全身状態不良の状態」18.9%、「意識障害、昏睡」16.3%などが多い
▼「救急医療管理加算算定患者の占める加算2算定患者の割合」は30%未満の医療機関が多いが、90%以上のところも一部あるなどバラつきが大きい
▼「救急車入院患者に占める救急医療管理加算など(救命救急入院料などを含む)の算定患者の割合」は医療機関間で大きなバラつきがあり、都道府県別のバラつきも大きい
さらに厚労省は9月1日のDPC評価分科会に示した、次のような分析結果も示しています(関連記事はこちら)。
▼呼吸不全のない、比較的軽症の肺炎患者であっても救急医療管理加算を算定している医療機関が多数存在し、中には「すべての患者に加算を算定している」医療機関もある
▼救急医療管理加算を算定した患者である(重篤と判断した)にもかかわらず、入院から3日以内に退院(死亡退院を除く)するケースもあり、小規模医療機関でその割合が比較的高い
救急医療管理加算は、入院初期に濃密な検査・治療が必要となる救急搬送患者を積極的に受け入れている医療機関を評価するものと言え、適正な算定が求められます。この点、「救急搬送患者のほとんどに救急医療管理加算を算定している病院は、不適切なのではないか」とも思えますが、神野正博委員(社会医療法人財団董仙会理事長)は「病院の種類などを踏まえた詳細な分析が必要」と指摘しています。地域の重篤な患者を一手に引き受けることが期待されている病院(軽症患者は他の医療機関が引き受ける)であれば、確かに救急搬送患者のほとんどが救急医療管理加算の算定対象であってもそれほど不思議はありません。
また神野委員や石川広己委員(千葉県勤労者医療協会理事長)は「加算2のシェアが増加しているというよりも『加算1のシェアが減少している』と見るべきで、ここには加算の患者像が曖昧に規定されていることが関係しているのではないか」と指摘。この点に関連して厚労省は、「救急医療管理加算の状態像」について、「救急現場で用いられている指標」を参考に分析する考えを示しています。例えば救急医療管理加算における「吐血、喀血または重篤な脱水で全身状態不良の状態」の患者に「緊急の止血処置」が行われているかどうか、「呼吸不全、心不全で重篤な状態」の患者について「動脈酸素分圧やNYHA分類(心機能分類)」がどのようになっているのか、などを検証するイメージです。
仮に「救急医療管理加算の状態像」と「救急現場で用いられている指標」とに一定のリンクが認められるなどすれば、例えば「意識障害とはJCS(Japan Coma Scale)●以上などを指す」し「心不全で重篤な状態とはNYHA分類●度以上などを意味する」といった具体例を示すこともできそうです。神野委員らの指摘する「曖昧さ」を一定程度解消することにつながるでしょう。
2014年度・16年度の改定では「加算1と加算2の分離、適正評価」などを主眼とした見直しが行われてきましたが、2018年度の次期改定では「加算1、加算2を含めた救急医療管理加算全体における患者の状態像の明確化」などを図りたい考えのようです。
ただしは石川委員や池端幸彦委員(医療法人池慶会理事長)らは「緊急の入院が必要かどうかは最終的に医師が判断しなければならない」ことを強調し、例えば基準を数値化することにはリスクもあり慎重に検討すべきとも付言しています。
このほか入院医療分科会では「療養病棟におけるデータ提出」「給食部門の収支」なども議題に上がっており、別稿でお伝えします。
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