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外来診療 経営改善のポイント 看護必要度シミュレーションリリース

DPCの救急医療係数、評価対象が救急医療管理加算などの算定患者でよいのか―DPC評価分科会(1)

2017.9.1.(金)

 DPCの救急医療係数は、救急医療入院した患者のうちA205【救急医療管理加算】やA301【特定集中治療室管理料】の算定患者について定額報酬と出来高報酬との差を補填するものとなっているが、病院の中には「救急搬送された患者のすべてにA205【救急医療管理加算】を算定している」ところもある。今後の【救急医療管理加算】の実態調査結果などを踏まえて、評価対象などを見直す必要があるか検討してはどうか―。

9月1日に開催された診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会では、2018年度のDPC改革に向けてこのような議論が行われました。

救急搬送患者のすべてで救急医療管理加算を算定している病院もある

DPCの包括報酬(DPC点数)には、診断群分類ごとに入院料や検査、投薬などの費用が包含されています。しかし、救急患者については、救命処置が必要なこと、そもそもの傷病が明確でないため鑑別包診断が必要なことなどから、予定入院患者に比べて医療資源投入量が多くなるのが一般的です。

これを放置すれば、コスト増から病院側が救急患者の受け入れを躊躇することにつながってしまうため、DPC制度では機能評価係数IIの「救急医療係数」を設定。具体的には、救急患者について、入院2日目までの「包括範囲出来高点数」(実際の医療資源投入量)と「DPC点数」との差額の総和(1症例当たり)をもとに係数を設定しています。重篤で多くの検査・処置などが必要な患者を受け入れる病院を評価するものです。

ところで救急医療係数の対象となる「救急患者」については、現在、▼救急医療入院である▼A205【救急医療管理加算】・A300【救命救急入院料】・A301【特定集中治療室管理料】・A301-2【ハイケアユニット入院医療管理料】・A301-3【脳卒中ケアユニット入院医療管理料】・A301-4【小児特定集中治療室管理料】・A302【新生児特定集中治療室管理料】・A303【総合周産期特定集中治療室管理料】のいずれかを入院初日から算定している—という2要件で定義しています。

きわめて明解ですが、このうちA205【救急医療管理加算】について課題があると厚生労働省は考えているようです。

A205【救急医療管理加算】は、救急搬送された重篤な患者には初期に集中的かつ濃密な医療提供が必要となることから、入院から7日を限度に経済的な評価を行うものです。しかし、「救急搬送された患者のほとんどすべてに【救急医療管理加算】を算定している病院もある。重篤でない患者(例えば入院から3日以内に退院する患者など)も【救急医療管理加算】が算定している可能性がある」ことが問題視され、2014年度の診療報酬改定において、▼意識障害・心不全など重篤であることが明確な患者を対象とする加算1(1日につき900点)▼加算1に準じた重篤な状態の患者を対象とする加算2(1日につき300点)―に分割されました(2016年度改定で加算1の点数を引き上げ、加算2の点数を引き下げ)。

救急医療管理加算の概要、加算2では「加算1(意識障害や心不全、呼吸不全、広範囲熱傷など)に準ずる重篤な状態」と、やや曖昧な規定ぶりになっている

救急医療管理加算の概要、加算2では「加算1(意識障害や心不全、呼吸不全、広範囲熱傷など)に準ずる重篤な状態」と、やや曖昧な規定ぶりになっている

 
しかし厚労省がDPCデータを分析したところ、▼救急者で来院した入院患者すべてを救急医療係数の対象としている病院もある▼呼吸不全のない肺炎患者のすべてを【救急医療管理加算】を算定している病院もある▼【救急医療管理加算】算定患者の中に、3日以内に退院する患者が一定数いる—ことなどが分かりました。救急搬送患者がすべて重篤とは考えにくく、また重篤な患者の多くは比較的長期の入院治療が必要とも思われます。ここから、一部の病院において「救急医療係数が不当に高く設定されている」可能性も考えられるのです。
救急車で来院した患者の9割以上を「救急医療入院」としている(救急医療係数の対象患者としている)病院もあり、中には100%(つまりすべて)「救急医療入院」としている病院もある ※縦軸は「患者数」となっているが、「医療機関数」の誤り

救急車で来院した患者の9割以上を「救急医療入院」としている(救急医療係数の対象患者としている)病院もあり、中には100%(つまりすべて)「救急医療入院」としている病院もある ※縦軸は「患者数」となっているが、「医療機関数」の誤り

呼吸不全のない肺炎患者であっても【救急医療管理管理加算】を算定している病院が多数存在し、中には「すべて【救急医療管理加算】を算定する」病院もある。これはDPC救急医療係数として評価されている

呼吸不全のない肺炎患者であっても【救急医療管理管理加算】を算定している病院が多数存在し、中には「すべて【救急医療管理加算】を算定する」病院もある。これはDPC救急医療係数として評価されている

救急医療管理加算を算定した患者である(重篤と判断した)にもかかわらず、入院から3日以内に退院(死亡退院を除く)するケースもある

救急医療管理加算を算定した患者である(重篤と判断した)にもかかわらず、入院から3日以内に退院(死亡退院を除く)するケースもある

 
厚労省は、診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」において、2017年度に【救急医療管理加算】を含めた入院医療の実態調査を行うこととしており、この調査結果を踏まえて、DPC評価分科会において【救急医療管理加算】などをベースにした救急医療係数の評価方法の是非を検討していく考えです。

この点について福岡敏雄委員(大原記念倉敷週央医療機構倉敷中央病院総合診療科主任部長)は、「最近、重篤な救急搬送患者であっても高度急性期治療を行い、一定程度回復すれば転院を促す病院も少なくない(3日以内の退院患者が一定数いることが直ちに問題となるわけでない)」「呼吸不全がなくても、血圧や脱水の状態などから重篤と判断される肺炎患者もいる(呼吸不全のない肺炎患者で【救急医療管理加算】を算定することが直ちに問題となるわけではない)」ことなどを指摘。入院医療分科会での精緻な議論を求めました。

 
なお、このテーマについては論点が2つに分かれると考えられます。1つが【救急医療管理加算】の見直しが行われたとしてそれをDPC救急医療係数にどう適用するか、もう1つがDPC救急医療係数における対象患者(前述)をどう考えるか(【救急医療管理加算】の算定を指標として継続するか)。前者は入院医療分科会の検討を待つ必要があります。

このうち後者について井原裕宣委員(社会保険診療報酬支払基金医科専門役)は「【救急医療管理加算】の算定よりも良い指標が見つからない。加算そのものの見直しを入院医療分科会で行ってもらい、DPC救急医療係数の対象として【救急医療管理加算】の算定患者を継続することに問題ないのではないか」とコメント。一方、福岡委員は「緊急入院した後に、手術や高度な処置を行ったのか、ICUなどに入室したか、といった軸で重篤な患者を絞る方法があるのではないか」との考えを示しています。

 
ところで【救急医療管理加算】の施設基準を満たさないDPC病院(60病院前後で推移しており、2017年度は58病院)については、病院の判断で「救急医療入院」患者を抽出していますが、これでは病院ごとに対象が異なってしまうことから、今後、併せて見直しが検討されます。

 
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