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DPCのII群要件を満たす場合でもIII群を選択できる仕組みなど、さらに検討—DPC評価分科会(1)

2017.5.24.(水)

2018年度のDPC改革では、▼3つの医療機関群を維持するが名称を見直す▼機能評価係数IIについて、「後発医薬品係数を機能評価係数Iへ置き換える」「重症度係数を別の手法で対応する」などの見直しを行うほか、I群・II群について重み付けを変えることや、II群の要件を満たす場合で、III群を選択することなどができないか検討する▼暫定調整係数の機能評価係数IIへの置き換えを完了するが、別途、新たな激変緩和措置を検討する—。

24日に開かれた診療報酬調査専門組織のDPC評価分科会では、こういった改革に向けた考え方をまとめました(中間報告)。近く、親組織である中央社会保険医療協議会に報告され、是非を問います。

5月24日に開催された、「平成29年度 第1回 診療報酬調査専門組織 DPC評価分科会」

5月24日に開催された、「平成29年度 第1回 診療報酬調査専門組織 DPC評価分科会」

III群を「標準群」、II群を「特定病院群」、I群を「大学病院本院群」などに名称変更

DPC評価分科会では、2018年度診療報酬改定に向けた改革方向を昨年(2016年)秋から議論しており、今般、(1)基礎係数・医療機関群(2)機能評価係数II(3)調整係数—の3点について改革に向けた考え方をまとめました(関連記事はこちらこちらこちら)。

まず(1)の基礎係数・医療機関群については、現在の「3つの医療機関群」を維持する方針が確認されました。各医療機関群において「包括点数に対する包括範囲出来高点数の比」(いわば医療資源投入の状況)を見ると、大きなバラつきがなく「合理的な分類である」と確認されたためです。

III群を例にとると、医療資源投入状況(包括点数に対する包括範囲出来高点数の比)は一定の範囲にまとまって分布している(I群、II群も同様)

III群を例にとると、医療資源投入状況(包括点数に対する包括範囲出来高点数の比)は一定の範囲にまとまって分布している(I群、II群も同様)

 
なお、従前は「III群の細分化」を求める強い意見もありましたが、後述するように細分化は行われません。

ただし、現在の「I群・II群・III群」という名称については、格付けのように誤解されているなどの問題点があるため、各群の機能などを示す名称に変更されます。具体的な名称は今後を待つ必要がありますが、これまでに▼III群→(DPC)標準群▼II群→(DPC)特定病院群▼I群→大学病院本院群—などとしてはどうかとの候補が浮上しています。

後発品係数は機能評価係数Iへ、重症度係数は別の評価手法へ置き換え

また(2)の機能評価係数IIについては、当初に設定された6項目▽保険診療(旧データ提出)▽効率性▽複雑性▽カバー率▽地域医療▽救急医療—に戻し、新設された▽後発医薬品▽重症度—の2項目は別の形に置き換える方針が固まりました。機能評価係数IIの基本的な考え方(6項目創設時)である「急性期の反映」「医療全体の質向上を目指す」などの趣旨に照らし、後者2項目は「観点が異なる」と判断されたためです。

機能評価係数IIを創設する際、中医協では「急性期を反映する」ことや、「医療の質向上に期待できる」ことなどを考慮した

機能評価係数IIを創設する際、中医協では「急性期を反映する」ことや、「医療の質向上に期待できる」ことなどを考慮した

 
個別項目について見てみると、次のような見直し方針が確認されています。

▼後発医薬品係数は、出来高点数の「後発医薬品使用体制加算」をベースに機能評価係数Iに置き換える

▼重症度係数は、機能評価係数IIとは別の手法による対応を検討する

▼保険診療係数は、評価指標などを再整理し、「医療の質を示す指標の測定や公表」といった本来の趣旨に見合った評価を検討する

▼地域医療係数は、医療計画の見直し方向に沿って見直す

後発医薬品係数が機能評価係数Iに置き換えられた場合、「後発医薬品の使用をダイレクトに評価する」係数そのものは減少すると予想されますが、「機能評価係数IIにおける『後発医薬品係数』該当部分は他の6項目(地域医療係数や複雑性など)に振り替えられる」ため、「はしごを外す」形にはならないと考えられます。

I・II群で機能評価係数IIの重み付け見直し、医療機関群選択についても検討

機能評価係数IIについては、改定論議の度に「重み付け」が検討テーマにあげられます。2018年度改定に向けてDPC分科会では、「I群・II群について、求められる機能や評価の現状を踏まえて、各項目への配分の重み付けを変える」ことを検討する方針を固めました。

現在のII群要件は、▼診療密度▼医師研修の実施▼高度な医療技術の実施(外保連指数や特定内科診療に着目)▼重症患者に対する診療実施(複雑性指数を補正)―のそれぞれについて、I群(大学病院本院)の最低値よりも高いこと、となっています。つまり、I群やII群には「重症症例(複雑性の高い、つまり包括点数の高い)の積極的な受け入れ」機能が求められていると考えられます。そこで、こうした機能をより発揮しているI群・II群病院をより高い係数で評価することが妥当か否かを今後、より詳しく検討していくことになったのです。厚労省保険局医療課の担当者は、例えば「複雑性」や「カバー率」などの重み付けを変える(相対的に高く評価する)ことが可能かどうかを分析していく考えを示しています。

このように重み付けが見直された場合、「II群よりもIII群のほうが有利なので、III群でいたい」と考える病院が出てくる可能性があります。このため、DPC分科会では「II群の要件を満たす病院が、III群を選択する」仕組みについても検討する方針を固めています。ただし、医療機関別係数が内示されてから「やはりIII群を選択したい」との希望が出れば、全医療機関群の係数を計算しなおさなければならないため、「診療報酬改定の前年までに選択(II群の要件を満たしてもIII群を選択する)意向を示す」仕組みなどが求められます。

なお、機能評価係数IIの重み付けを変えない(等分のまま)場合であっても、「II群よりもIII群のほうが有利なので、III群を選択したい」と考える病院は出てくると予想されます。このため、DPC分科会では、「機能評価係数の重み付け」と「医療機関群の選択」とは切り離して検討することとしています。

 
またIII群についても、「多様な機能を評価するために、機能評価係数IIの重み付けを変えるべきではないか」との意見が出されていました。しかし厚労省が分析したところ、「機能に着目してIII群病院をグルーピングし(細分類)、その細分類ごとに機能評価係数IIを計算しなおすと、『得意で合った項目』は低く、逆に『不得意な項目』は高くなる」ことが分かりました。例えば、「クラスの中で比較的背の高い生徒Aは、『背の高いグループ』という細分類の中では、『それほど背が高いわけではない』と評価されてしまう」というケースを考えると理解しやすいのではないでしょうか。

III群の病院を機能に応じて細分類すると、「得意であった項目」が低くなり、「不得意であった項目」が高くなっている

III群の病院を機能に応じて細分類すると、「得意であった項目」が低くなり、「不得意であった項目」が高くなっている

 
このためIII群については機能評価係数IIの重み付けを変えず(現行の等分を維持)、細分類化も行わないことになります。

 
なお、後述するように「暫定調整係数から機能評価係数IIへの置き換え」が2018年度に完了するため、これまで以上に医療機関別係数に占める機能評価係数IIのシェアが高まります。単純計算では「75%→100%」、つまり33.3%増になり、機能評価係数IIの病院収益に与える影響が大きくなることを意味します。これまで以上に「機能評価係数II」対策が重要で、「正確な知識」に基づいた戦略や対策を立てることが不可欠です(関連記事はこちら)。

調整係数の機能評価係数IIへの置き換え完了、新たな激変緩和措置を検討

また(3)の調整係数(暫定調整係数)については、「2018年度改定で機能評価係数IIへの置き換えを完了する」方針が確認されています。

(暫定)調整係数から基礎係数・機能評価係数IIへの置き換えイメージ

(暫定)調整係数から基礎係数・機能評価係数IIへの置き換えイメージ

 
これまでにも調整係数から機能評価係数IIへの置き換えが順次進められていますが、病院経営への大きな影響を避けるために、「診療報酬改定の前後で、推計診療報酬変動率(出来高部分も含める)が2%を超えて変動しない」ような激変緩和措置が設けられています。これは調整係数財源の中で行われているので、理論的には、「置き換えの完了によって現在の激変緩和措置も終了する」ことになります。

また、厚労省保険局医療課の担当者が激変緩和措置の対象となった病院の状況を分析したところ、「複数回マイナス緩和(暫定調整係数を引き上げている)の対象になると、実質的に調整部分を大きく残存させる」ことなども分かりました。診療報酬改定で激変緩和措置が重ねられることで、推計診療報酬変動率がより大きくなってしまっているのです。

複数回、激変緩和措置の対象となっている病院では、改定を経る度に(措置の度に)推計診療報酬変動率が大きくなっていく

複数回、激変緩和措置の対象となっている病院では、改定を経る度に(措置の度に)推計診療報酬変動率が大きくなっていく

 
もっとも、調整係数から機能評価係数IIへの置き換えによって収益に大きな影響を受ける病院は存在することから、DPC分科会では「現在の激変緩和措置の継続」はせず、「係数変動の要因に応じた新たな対応」を検討する方針を固めました。

 
近く、親組織である中医協・診療報酬基本問題小委員会にこれらが報告され、そこでの意見も踏まえて、今後、より具体的な改革案をDPC分科会で練っていくことになります。

急性期以外にもDPCデータ提出広めるべきだが、支払方式の拡大は別問題

ところで、24日のDPC分科会では、石川広己委員(千葉県勤労者医療協会理事長)から、急性期以外の入院医療において「DPCデータの提出を拡大していくのか」「DPCの支払方式(1日当たり包括支払い方式)を導入してくのか」という質問がなされました。

これに対し厚労省保険局医療課の迫井正深課長は、前者のデータ提出について「診療内容の標準化を進めていくことは、医療従事者にとっても患者にとっても必要なことである。情報化の枠組みとしてのDPCデータ提出の拡大は考えるべき課題であり、政策的にもそうした方向が求められていると認識している」と答弁。

一方、後者の支払い方式については「すべての入院医療に同じ支払い方式を拡大できるわけではない。診療内容や特性に鑑みて、適切な支払い方式を検討していく必要がある」との考えを示しました。

DPC制度(DPC/PDPS)と一口に言いますが、DPC(Diagnosis Procedure Combination:診断群分類)はいわば「疾病名と診療行為」によって患者・症例を分類することを意味し、PDPS(Per-Diem Payment System:1日当たり包括支払い方式)は支払いの仕方を意味します。混同される危険は少ないのですが、両者は異なり、別の組み合わせ(DPCに基づかない1日当たり包括支払い方式など)も考えられる点などには留意が必要です。

  
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