調整係数廃止にDPC病院はどう対応?今からやるべき戦略的な機能評価係数II対策とは―GHCシニアマネジャー井口
2017.2.22.(水)
DPC病院には、来年度(2017年度)の機能評価係数IIについて内示が行われています。2018年度には調整係数(暫定調整係数)が廃止され、機能評価係数IIの重要性がさらに高まりますが、どのような戦略を立てればよいのか―。グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)の井口隼人シニアマネジャーが解説しました(関連記事はこちらとこちら)。
機能評価係数IIや各指数のロジックを理解した上での対策が必要
DPC病院には来年度(2017年度)の機能評価係数IIが内示されています。GHCでは、全国の病院に対してアンケート調査を実施。これまでに約200病院からご回答をいただき、係数の状況を分析しています。
診療報酬改定の中間年ということもあり、全体では目を見張るような大きな変化はありません。ただし、個別病院について見てみると、係数がプラス0.5%以上上昇している病院もあれば、逆にマイナス0.5%を超えて低下している病院もあります。
DPCの機能評価係数IIは、前々年(今回であれば2015年)10月から前年(同2016年)9月までの実績をもとに設定されるので、0.5%以上係数がアップしている病院では「該当期間における戦略的な対策や努力が実を結んでいる」と考えることができます。回答病院では1割程度が、0.5%以上の係数上昇を実現できています。
係数別に見ると、【後発医薬品係数】では大多数の病院で上限に達していることが分かりました。内示データからは後発医薬品係数の上限が「0.949」となるようですが、今年度(2016年度)は「1.058」でしたので、後発医薬品の使用をどれだけ促進しても、来年度から0.1ポイントを超えて下がる計算になります。2月9日に開かれた診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会では、厚生労働省から「後発医薬品係数はその役割を終え、2018年度以降、機能評価係数Iで評価してはどうか」との考えが示されていますが、データからは「当然の提案」と言えそうです。
また2016年度の前回改定で導入された【重症度係数】については、「本当に重症の患者を多く診ている病院が適切に評価されているのか」という疑問があります。確かに重症の患者であれば、医療資源を通常症例よりも多く投入する必要があり、在院日数も長くなりがちですので、「医療資源投入量」は患者の重症度と関係するとは思われます。しかし、そうした重症症例の占める割合の違いが、マクロで見た「医療資源投入量と包括点数の比」でどこまで現れてくるのか―。今後GHCでも分析していきますが、インパクトは必ずしも大きくはないのではないでしょうか。2018年度の次期改定に向けて、データをもとに分析を行い、適切な見直しを行うことが必要と考えます(関連記事はこちら)。
2018年度には調整係数を廃止する方針が打ち出されており(関連記事はこちら)、機能評価係数IIの比重が高まるので、個別DPC病院にとって機能評価係数IIの値も高くなります。今回、アンケートにご回答いただいた病院の内示データを見ると、来年度(2017年度)の機能評価係数IIの合計は平均0.06程度なので、調整係数から機能評価係数IIへの置き換えだけで2018年度は平均が0.075から0.08程度に上がると見込まれるのです。
つまり、2018年度には機能評価係数IIの数値が高くなるのは当然で、重要なのは「機能評価係数IIをどれだけ戦略的に上げられるか。どのような対策をとればよいか」という点です。
先ほど述べたとおり、2018年度の係数は「2016年10月から2017年9月」までの実績がベースとなり、すでに対象期間の半分近くが過ぎていますが、「まだ半年ある」と考えるべきでしょう。しかも、2018年度からは機能評価係数IIの比重が高まり、当然、個々の係数(保険診療、効率性、複雑性、カバー率、救急、地域医療)の重みが大きくなります。これからの対策であっても効果は大きなものとなります。是非、早めに対策を立て実行に移してください。
ただし、係数・指数の仕組みを理解せず、例えば「効率性を上げるために、在院日数の短縮に取り組め」と、あるいは「複雑性を高めるために、心臓血管外科の手術症例を増やせ」と闇雲に動いては、「労多くして功少なし」という状況になりかねません。係数・指数のロジックを踏まえた対策をとることが重要です。GHCでは、機能評価係数IIのロジックはもちろん、最新の制度改革情報を正しく理解したコンサルタントが支援を行っております。一度、お声かけいただければと思います。
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