2015年度の退院患者調査結果を公表、分析方法などで再検討の余地も―DPC評価分科会(2)
2017.2.10.(金)
9日に開催された診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会で、2015年度のDPC導入の影響評価に係る調査「退院患者調査」の結果報告が行われました(関連記事はこちら)(厚労省のサイトはこちら)。
分科会の委員からは「短期滞在手術基本料等3の影響などを考慮すれば、平均在院日数は数字よりも短縮していると考えられる」などの意見が出ており、今後、調査項目の再整理などの可能性もあります。
平均在院日数は全医療機関群で短縮しているが、II群で病床利用率が低下傾向
DPCのような包括支払い方式では、診療の標準化・効率化が期待できる一方で、粗診粗療が生じはしないかという懸念が常に付きまといます。そこで厚生労働省は、DPC対象病院・準備病院に対して詳細な診療データの提出を求めるとともに、これを集計・分析し毎年度公表しています(退院患者調査)。
膨大な調査結果の中から、平均在院日数と病床利用率をピックアップして見てみましょう。2015年度の平均在院日数はI群で13.36日(前年度から0.31日短縮)、II群で11.95日(同0.28日短縮)、III群で12.53日(同0.53日短縮)となっており、すべての医療機関群で短縮傾向が継続しています。また病床利用率を見ると、I群で82.5%(同0.8ポイント上昇)、II群で86.1%(同0.1ポイント低下)、III群で80.7%(同0.1ポイント上昇)となっており、I群では改善、II群・III群では横ばいという状況です。
また経年変化を見ると、平均在院日数はすべての医療機関群で短縮傾向にあるものの、病床利用率については▼I群で増加傾向▼II群で減少傾向▼III群で横ばい―となっています。II群の実績要件である「診療密度」を上げるためには、在院日数の短縮を進める必要があり、これは空床増の要因にもなりかねません。II群病院ではさらなる空床対策(重症患者の増患や病床再編、さらにはダウンサイジングなど)を検討する必要がありそうです。
この結果について9日の分科会では川瀬弘一委員(聖マリアンナ医科大学小児科教授)から「2014年度診療報酬改定で短期滞在手術等基本料3が創設された。直近の在院日数データからはこの分が除外されているが、従前の在院日数データには短期滞在手術等基本料3に該当する患者が含まれている。すると数字よりもはるかに在院日数が短縮していると考えられるのではないか」と指摘。また池田俊也委員(国際医療福祉大学薬学部教授)は「在院日数のバラつきが縮小しているのか否かなど、診療の標準化も見ていくべきではないか」との見解を示しています。
こうした指摘を受け、厚生労働省保険局医療課の迫井正深課長は「DPC導入から時間たち、制度変更や社会的な状況の変化などもある。項目の再整理などが可能か考えたい」とコメントしています。
なおグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)では、間もなく、このデータを次世代型病院経営支援ツール「病院ダッシュボード」に反映させます。ご期待ください。
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