2018年度DPC改革に向け、調整係数のあり方や重症度指数・係数など議論へ―DPC分科会
2016.5.25.(水)
2018年度の次期診療報酬改定に向けて、II群の絶対的基準、調整係数のあり方、機能評価係数IIに盛り込まれた重症度指数・係数のあり方、CCPマトリックスの精緻化と拡大、持参薬のあり方などを議論していく―。
25日に開かれた診療報酬調査専門組織のDPC評価分科会は、このような検討項目を確認しました。
当面は、来年度(2017年4月から)の機能評価係数IIの設定に向けて、「病院情報の公表」や「2016年度医科点数表改定の影響反映」について議論することになります。
目次
「病院情報の公表」や「医科点数表改定の機能評価係数IIへの反映」などをまず議論
2016年度診療報酬改定後、初めての開催となったDPC分科会では、▽2016年度改定の概要▽各病院の機能評価係数IIの内訳(厚労省サイトはこちらとこちら)・地域医療指数(体制評価指数)の内訳(厚労省サイトはこちらとこちら)―が報告されたほか、2018年度の次期改定に向けた検討項目を固めました。機能評価係数II・地域医療指数の内訳については、メディ・ウォッチでも別途、詳しくお伝えいたします。
今回は、2018年度改定に向けた検討項目を見てみましょう。厚労省が掲げた大項目は次のとおりです。
(1)基礎係数(医療機関群)のあり方:II群の全体的基準など
(2)調整係数のあり方
(3)機能評価係数II:重症度指数・係数や病表情報公表など
(4)診断群分類点数表:CCPマトリックスの精緻化・拡大やICD-10(2013年度版)への対応など
(5)請求に関するルール:持参薬のあり方など
(6)DPCデータの収集方法:オンライン提出など
(7)診断群分類の見直しやコーディングテキストの見直しなど
厚労省保険局医療課の担当者は、機能評価係数IIに関する「病院情報公表」(2017年4月予定)と「医科点数表改定(2016年度の反映)の反映」、ICD-10(2013年度版)への対応などを早急に検討する必要があるとしています。
II群の「絶対的基準」、2018年度改定に向けて改めて議論
(1)のII群要件については、2016年度改定論議の中でも「絶対的基準」が検討課題に挙げりましたが、「地域における医療機能を客観的に評価する為のデータが存在しないことから、現時点では機能の評価と絶対値の設定は困難」との結論が出ています。今後、各都道府県で地域医療構想が定められる中で、II群要件をどのように考えていくのか分科会の議論が注目されます(関連記事はこちらとこちら)。
なお、今回の2016年度改定においては、II群からIII群に移行した病院が14、III群からII群に移行した病院が54となっています。
調整係数の「重症度の違い」などみる機能、どのように考えていくべきか
(2)の調整係数については、予定通りに進めば、次期2018年度改定で完全に基礎係数・機能評価係数IIに置き換えられることになります。
しかし、調整係数の「CCPマトリックスなどを導入しても、診断群分類点数表の中で表現しきれない重症度の違い」などを調整する機能をどう考えるかという問題は残ります。
後述するように2016年度改定で重症度指数・係数を導入しましたが、激変緩和措置(改定前後で診療報酬収入が2%程度を超えて変動しないようにする措置)の対象病院は2016年度改定でも126病院あることから、問題が解決しきれていないことが分かります。
2018年度改定に向けて、こうした「重症度の違い」などをどう考えていくべきかが議論されることになります。
病院情報公表、「2016年10月時点で公表しているかどうか」が評価対象に
(3)の機能評価係数IIについては、▽病院情報の公表▽後発医薬品係数▽重症度指数・係数▽各係数の重み付け▽医科点数表改定の影響反映▽新規項目―などが具体的な検討テーマとなります。
このうち「病院情報の公表」は、以前から議論されている「自院の診療実績などの情報を公表した場合、2017年4月から保険診療指数を0.05点加点する」というものです。厚労省は「今年(2016年)10月時点での公表の有無」を評価対象にする考えで、公表すべき項目などを7月には固めたい考えです。このため、急ピッチで議論を進め、結論を得る必要があります。
重症度指数・係数、「重症患者」や「効率化」なども含めて総合的な検討へ
また「重症度指数・係数」は、今回改定で導入された新しい指数・係数で、同じ診断群分類でも医療資源投入量が多くなってしまう患者を重症患者と捉え、機能評価係数IIで評価するものです。具体的には「当該病院における[包括範囲出来高点数]÷[DPC点数表に基づく包括点数]」(ただし救急医療指数で評価されている救急入院2日目までの包括範囲出来高点数は除外)として計算します。
この指数・係数には「効率化を進めると低くなってしまう(ゼロの病院も少なくない)」という批判があり、今後、「重症患者の評価の仕方」を含めて議論が行われることになります。
その際には「効率化」について少し深く考える必要もありそうです。例えば持参薬を使えば資源投入量が減り、重症度指数は低くなります。これが果たして「効率化が進んでいる」と言えるのか?またいわゆるアップコーディングをしている病院では、その診断群分類点数に比べて資源投入量が低く、やはり重症度指数は低くなります。これも「効率化が進んだ病院」とは言えません。また、医療資源を投入した量と時期(何日目か)が正確にEFファイルに表現されていないことも考えられそうです。重症度指数・係数については、こうした点も総合的に検討していく必要があると考えるべきでしょう。
なお、「不必要な医療資源(例えば検査)を投入すれば重症度指数・係数」が高くなりますが、こうした「間違ったテクニック」は保険診療の中で決して行うべきではありません。
また2016年度の医科点数表改定では、現在の機能評価係数II(地域医療指数)にある「B005-2地域連携診療計画管理料」を廃止するなどの見直しを行っています(関連記事はこちら)。こうした医科点数表の見直しをDPCにどう反映させるのかについても、早急に検討することになります。
病院の負担怪訝に向けて「DPCデータのオンライン提出」を検討
(6)のDPCデータのオンライン提出は、2014年7月に閣議決定された「健康・医療戦略」の中で指示されている「DPCデータをレセプトと同時にオンラインで審査支払機関を経由して厚生労働省に提出できるように検討する」ことを踏まえたものです(首相官邸のサイトはこちら)。具体的な提出方法などは今後の議論に委ねられますが、厚労省は「病院の負担軽減」に資する方法とする考えです。
こうした検討項目に関連して金田道弘委員(社会医療法人緑壮会理事長兼金田病院長)は、「回復期リハビリ病棟に導入されたアウトカム評価」「地域医療連携推進法人(いわゆる非営利ホールディングカンパニー型法人)などにより地域連携を強化した場合の評価」などを検討してはどうかと提案。
藤森研司委員(東北大学大学院医学系研究科・医学部医療管理学分野教授)は「高齢化が進む中で、老衰や摂食障害などの患者も急性期病棟に入院するケースが増えているが、うまくコーディングできず、Rコードとしているケースが多い」点を指摘。「こうした患者をDPCでみるかどうか」も含めて議論される模様です。
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