医療法上の臨床研究中核病院、DPCの機能評価係数IIでの評価を了承―DPC評価分科会
2015.11.30.(月)
2016年度の次期診療報酬改定に向け、DPC制度改革の概要が分科会レベルで了承されました。
改革の内容は、II群の要件に特定内科診療(高度な医療技術が必要な内科系疾患)の診療実績を加える、精神病床を持たないI群・II群病院の保険診療指数(機能評価係数II)を減額する、重症度の高い患者の受け入れを新たに重症度指数(機能評価係数II)として評価する、医療法上の臨床研究中核病院を地域医療指数の体制評価指数(機能評価係数II)で評価する―ことなど。
近く中央社会保険医療協議会の総会と診療報酬基本問題小委員会に報告され、ここでの了承を待って、厚生労働省で細部を詰めることになります。詳細な内容は、年明けの「短冊」の中で示される見込みです。
医療法上の臨床研究中核病院を、DPCの機能評価係数IIで評価すべきか。このテーマが30日のDPC評価分科会でも議題となりました。
厚労省は、臨床研究中核病院は医療法で「他の病院よりも高機能である」ことが担保されており、▽保険診療を受ける入院患者に地域のおける機能においてもメリットがある▽機能評価係数IIの考え方の1つである「高度・先進的な医療の提供機能」にも合致する―ため、機能評価係数IIで評価することが妥当と考えています。
これに対し、一部の委員からは「臨床研究や治験を保険の中で評価するのはいかが」という反論が、16日に開かれた前回の分科会で出されました(関連記事はこちら)。
30日の分科会でも、やはり次のような反対意見が出されています。
●臨床研究中核病院では病院長のガバナンスが発揮され、より安全に新薬・新医療機器が使用されるというが、他の医療機関でも同様なガバナンス体制が敷かれ、より優れているところもある。臨床研究中核病院だけを評価するのは好ましくない(美原盤委員:公益財団法人脳血管研究所附属美原記念病院長)
●出来高の入院基本料等加算の中で臨床研究中核病院を評価し、これを機能評価係数Iで評価すればよい(池田俊也委員:国際医療福祉大学薬区部薬学科教授)
●4つの臨床研究中核病院が、機能面で他のI群・II群病院よりもどれだけ優れているのかというエビデンスが弱い(瀬戸泰之委員:東京大学大学院医学系研究科消化管外科教授)
これ対して、厚労省保険局医療課の眞鍋馨企画官らは、「臨床研究中核病院は、医療法で『高機能である』ことが担保されており、機能評価係数IIの考え方に馴染む。保険診療の範囲内で、高機能な病院を評価するべきと考える」ことを丁寧に説明。
また山本修一委員(千葉大学医学部附属病院長)や小林弘祐委員(北里大学学長)、は、厚労省の説明に理解を示しました。
さらに井原裕宣委員(社会保険診療報酬支払基金医科専門役)は、「現在、地域医療指数のうち体制評価指数については、I群・II群病院では12項目のうち10項目を満たせば満点の評価を受ける。ここに臨床研究中核病院の評価が入り13項目となったとして、既に10項目を満たしていれば、それ以上評価が上がることはない」点も指摘した上で、厚労省案に賛同しています。
これらの意見を踏まえて小山信彌分科会長(東邦大学医学部特任教授)は「さまざまな意見があるが、臨床研究中核病院を評価することを分科会として了承したい」と宣言。特段の反論は出ず、DPC分科会として「臨床研究中核病院を機能評価係数IIで評価する」との結論がまとめられました。
もっとも中医協で更なる検討が行われるため、臨床研究中核病院の機能評価係数IIでの評価導入には、もうしばらく茨の道が続きそうです。
30日のDPC分科会では、DPC制度改革に向けた最終とりまとめも行われました。既にお伝えしている内容から大きな変更はありません。
まず医療機関群・基礎係数について、「II群の要件に『特定内科診療』の診療実績」が追加されます。II群要件の1つである「高度な医療技術の実施」要件が、現在の高難度の手術実績3項目に、内保連の提唱する特定内科診療(重症脳卒中や髄膜炎など25疾患)の診療実績3項目が加えられ、都合6項目となります。6項目のいくつをクリア(I群の最低値を上回る)すればよいかは、今後、中医協で議論されます(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
機能評価係数IIについては、次のような見直しが行われます。
(1)各係数の重み付けは変更しないが(等分のまま)、分散が均等になるように効率性指数・複雑性指数・後発医薬品指数について調整を行う(地域医療指数は様々な要素が含まれており調整対象から除外する)(関連記事はこちら)
(2)I群病院やII群病院について「精神病床を備えていない」「医療保護・措置入院の実績がない」などの場合には、保険診療指数の減算を行う(関連記事はこちら)
(3)専門病院に配慮し、カバー率指数に下限値(30パーセンタイル)を設ける(関連記事はこちら)
(4)地域医療指数のうち、地域がん登録の評価を2017年度以降廃止する(がん登録推進法で義務化されるため)(関連記事はこちら)
(5)後発医薬品指数の上限値を70%に引き上げる(関連記事はこちら)
(6)DPC点数表で表現しきれない「重症度の高い患者の受け入れ」を評価するために、新たに『重症度指数・係数』を設ける(関連記事はこちら)
(7)2017年度から「保険診療指数の中で病院情報の公表状況」の評価を行うことを検討する(関連記事はこちら)
(8)臨床研究中核病院について、地域医療指数の体制評価指数の中で評価する(前述のとおり)
このうち(6)の重症度指数は、「重症患者を多く受け入れている病院ほど、激変緩和措置でプラスの補正を受けている」可能性が高いため、激変緩和措置の代替措置の1つとして提案されているものです。厚労省は、「包括範囲出来高点数とDPC点数との乖離」を病院ごとに評価するとしており、I群、II群、III群という病院群それぞれの中で相対評価をすることになります。
ところで救急医療指数について、現在の受入数だけではなく「受け入れを断っている状況」を加味した評価とできないか、厚労省内で検討が進められてきました。「受入数は多いが、救急搬送を断ることも多い」病院と、「受入数そのものは多くないが、搬送を断ることはまずない」病院とのバランスを取るためです。しかし、全国レベルでの「救急医療機関の応需」に関するデータが整備されていないため、次期改定での導入は見送られました(関連記事はこちら)。
算定ルールについては、次のような方針が決められました。
(a)入院期間IIIの期間を延長(30の整数倍とする)するとともに、点数の調整(事実上の引き下げ)を行う(関連記事はこちら)
(b)入院中にDPCの包括算定と出来高算定が混在しないよう、1入院で統一する(包括請求が終わった後に出来高算定に変更となった場合には、一度包括請求を取り下げ、改めて出来高で請求する)(関連記事はこちら)
(c)DIC(播種性血管内凝固症候群)でコーディングする際の「症状詳記」添付は継続する(同様事例がないか検討を続ける)(関連記事はこちら)
(d)再入院7日ルールは継続するとともに、いわゆる「分類不能コード」が用いられた場合も一連の入院と扱う(関連記事はこちら)
(e)持参薬については、現行の「入院契機傷病名治療には用いることができない」という取り扱いを継続し、「やむを得ない場合」のみ使えることをより明確にする(関連記事はこちら)
(f)退院患者調査の内容を見直す(EF統合ファイルに重症度、医療・看護必要度データの記載を求めるなど)(関連記事はこちら)
次期改定では、診断群分類についての見直しも行われます。MDC作業班の検討は既に終了しており、厚労省は次のような「見直し例」を示しました。
▽ICD10コードと傷病名(DPCコードの上6桁)の対応を整理する(例えば、頭頸部の悪性腫瘍と悪性黒色腫の整理を行う)
▽薬剤による分岐について、レジメン別の分岐を増やさず、「主となる薬剤」で対応する
▽出来高算定となっていた高額薬剤の一部について、手術・処置等2へ追加し、分岐を新設する
▽患者の重症度を評価する「CCPマトリックス」を、MDC01(脳血管疾患)、04(肺炎)、10(糖尿病)に試行導入する(関連記事はこちら)
▽点数設定方式D(入院期間の不要な延長を防止するために、入院初日にほとんどの費用を支払う方式)を追加する傷病を検討する
このうちCCPマトリックスについて、MDC01(脳血管疾患)に関しても臨床家の検討が終了し、次期改定で試行導入することが固まっています(関連記事はこちら)。
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