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診療報酬改定セミナー2024 新制度シミュレーションリリース

重症脳卒中や髄膜炎など「特定内科診療」の診療実績、DPCのII群要件に導入―DPC評価分科会

2015.10.14.(水)

 2016年度の診療報酬改定に向け、DPC制度改革の骨格が明らかになりました。II群要件に内保連の提唱する「特定内科診療」の診療実績を導入するほか、機能評価係数IIに「重症患者への対応機能」に着目した係数を新設することなどが、14日に開かれた診療報酬調査専門組織のDPC評価分科会で固まりました。

10月14日に開催された、「平成27年度 第5回 診療報酬調査専門組織 DPC評価分科会」

10月14日に開催された、「平成27年度 第5回 診療報酬調査専門組織 DPC評価分科会」

 見直し案は、親組織である中央社会保険医療協議会・診療報酬基本問題小委員会に報告され、そこでの了承を経て、再度、DPC分科会で具体的な制度設計が行われる見込みです。

 見直し内容は多岐にわたるため、今回は、全体を眺めてみましょう。

内科系疾患を多く診ている病院の適正評価が狙い

 医療機関群、基礎係数については次の2点が固まりました。

▽懸案となっていた「II群要件を地域における医療機能に基づく絶対値とする」点(関連記事はこちら)については、現時点では困難なため、引き続きの検討課題とする

▽II群要件に、内保連(内科系学会社会保険連合)による「特定内科診療(2014年度版」の考え方を導入する

 後者は、「内科系疾患を多く診ている病院」についても適切な評価を行うための見直しです。具体的には、▽重症脳卒中▽髄膜炎・脳炎▽重症筋無力症クリーゼーなど25疾患の診療実績を、II群要件の1つである「高度な医療技術の実施」に組み込みます。

内保連の提唱する「特定内科診療」、これらの診療は内科系の疾患の中で高度な医療技術が必要と考えられる

内保連の提唱する「特定内科診療」、これらの診療は内科系の疾患の中で高度な医療技術が必要と考えられる

 現在、「高度な医療技術の実施」要件は、(3a)手術実施症例1件当たりの外保連手術指数(3b)DPC算定病床当たりの外保連手術指数(3c)手術実施症例件数―の3項目について、それぞれ一定の基準を満たすこととされています。

 ここに、特定内科診療の(3A)月間症例数(3B)月間100床当たり症例数(3C)症例割合(特定内科診療が総入院症例に占める割合)―の3項目を加えます。

 したがって「高度な医療技術の実施」要件を評価する項目は都合6つになりますが、6項目すべてについて一定基準を満たすことが求められるかどうかは今後の議論に委ねられます。厚生労働省保険局医療課の担当者は「6項目のうち、5項目あるいは4項目が一定基準を満たせば『高度な医療技術の実施』要件をクリアしている、との考え方もあり得る」とコメントしています。

 II群要件の他の項目(診療密度、医師研修の実施、重症患者に対する診療の実施)については、細部調整以外は行われない見込みです。

 なお、美原盤委員(公益財団法人脳血管研究所附属美原記念病院長)が強く求めていた「基礎係数と機能評価係数IIの重み付けの変更」(関連記事はこちら)については、技術的な課題が多く、今回改定では見送りとなりました。

機能評価係数IIの保険診療指数、機能の低いI群病院は減算

 機能評価係数IIについては、次のような見直しが行われる見込みです。

(1)保険診療指数(旧、データ提出指数)について、▽II群の実績要件4項目のうち、一定項目以上が本院よりも機能が高いDPCの分院をもつ大学病院本院▽II群の選定要件決定の際に外れ値に該当した大学病院本院▽精神病床を有していない大学病院本院とII群病院―のそれぞれで減算を行う(複数の減算もあり得る)

(2)保険診療指数の中で、「病院の診療実績」(初発の5大がんの病気別分類や再発患者数や、診療科別主要手術の術前・術後日数など)の公表状況を評価する点について、17年度からの導入を検討する

(3)地域医療指数のうち、都道府県医療計画(5疾病・5事業+在宅医療)に基づく取り組みについて、地域での貢献度合いを評価することを検討する

(4)後発医薬品係数について、評価上限値を現在の60%から70%に引き上げる(計算にあたっては、厚労省の医薬品マスターを使用する)

(5)新たに「重症患者への対応機能」に着目した係数を導入する

(6)各係数の重み付けについては「等分」を維持するが、各係数の「分散」が均等になるように係数の調整(x乗)を行う

 このうち(1)は「大学病院本院の中にも、機能が不十分なところがあるのではないか」「本院から分院に機能を移し、本院は自動的に高いI群の基礎係数を取得し、機能を移した分院でも高いII群の基礎係数を取得するところがあるのではないか」といった指摘(関連記事はこちら)を踏まえた見直し内容です。

 「精神病床の有無という指標をII群にも持ち込むのはいかがか」(渡辺明良委員・聖路加国際大学法人事務局長)といった指摘もありましたが、厚労省保険局医療課の担当者は「II群病院は『大学病院本院並み』と考えられており、大学病院本院に精神病床の保持を求める以上、II群でも同様に必要ではないかと考えている」と述べています。

重症症例を多く診ている病院を考慮した、新係数を導入

 (5)は、激変緩和措置(改定前後で収益が2%を超えて増減しないようにする措置)の対象となった病院への調査の中で「激変緩和措置でマイナス緩和(2%を超えて収益が減少するために救済している)となった病院では、診断群分類点数表で表現しきれない重症度の差」がある、つまり「より重症の患者を多く見ている」可能性のあることが示唆された(関連記事はこちら)ために提案されたものです。

包括範囲出来高実績と点数表との比率は、DPC病院の収益変化率と逆相関の関係がある。つまり、包括範囲出来高実績の高い重症患者を多く診る病院では収益が低くなる傾向にある

包括範囲出来高実績と点数表との比率は、DPC病院の収益変化率と逆相関の関係がある。つまり、包括範囲出来高実績の高い重症患者を多く診る病院では収益が低くなる傾向にある

 具体的には、病院ごとに全診断群分類の「包括範囲出来高実績点数と診断群分類点数表との比」を計算し、これを係数化することになります。

 ここで気になるのが「調整係数の復活になるのではないか」「出来高実績を上げるために、不必要な診療行為を行った病院が係数で高く評価されるのではないか」といった点です。

 この点について厚労省保険局医療課の担当者は、「調整係数の復活にならないよう、係数に上限を設定するなどの措置を検討する」「収益に与える本係数のインパクトは小さく、不必要な診療を行うよりも、コスト削減や在院日数短縮による効率性係数の向上などへのインセンティブのほうが高いのではないかと考えている」と説明しています。

機能評価係数IIの各項目、分散の格差を調整

 (6)は、機能評価係数IIの中にも「高い評価を得やすい項目」と「評価の引き上げが難しい項目」があり、重み付けを変えてはどうかという問題意識がベースとなった見直しです(関連記事はこちら)。

 厚労省は「各係数は独立したもので軽重の設定は困難」であるとしましたが、各係数の分散には格差があることから、「分散が均等になるように調整を行う」ことで、項目ごとの格差を是正するとしています。

 例えば、14年度の各係数の分散を見ると、後発医薬品係数では0.000023ですが、効率性係数は0.000011にとどまっています。この格差を調整する(均等になるようにx乗する)ことで、「ある係数は小さな努力で引き上げられるが、別の係数の引き上げには多大な努力が必要」という状況を打開したい考えです。

機能評価係数IIにおける各項目の分散、後発品では分散が大きいが、保険診療指数では極めて小さい

機能評価係数IIにおける各項目の分散、後発品では分散が大きいが、保険診療指数では極めて小さい

機能評価係数IIの分散を均等化するための調整イメージ

機能評価係数IIの分散を均等化するための調整イメージ

 ただし、▽保険診療係数(既に均質化が進んでいる)▽救急医療係数(患者治療に要する資源投入量を評価している)―については調整を行わず、カバー率係数については評価方法の検討(現在、III群では、最小値を最大値の2分の1としている)が行われます。

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