DPC病院の収入を最も左右するのは「暫定調整係数」―DPC評価分科会
2015.6.17.(水)
DPC対象病院の収入の変化に最も大きな影響を及ぼしているのは「暫定調整係数の変化」(機能評価係数IIへの置き換え)で、機能評価係数IIや基礎係数の影響は、両者を合わせても暫定調整係数の変化の60%程度にとどまる―。このような分析結果が、17日の診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会に報告されました。
DPC病院の収入や機能評価係数の変化にどのような要素がどの程度影響しているのかは、これまでも分科会でたびたび議論になっています。厚生労働省の定量分析によると、収入の変化については次のような結果が出ています。
▽DPC病院の収入の変化に対し、最も大きな影響を及ぼしているのは「暫定調整係数の変化」で、「機能評価係数IIの変化」と「基礎係数の変化」を合計しても、その6割程度の影響度合いしかない
・暫定調整係数の変化が与える影響(標準化係数):0.885
・機能評価係数IIの変化が与える影響(標準化係数):0.242
・基礎係数の変化が与える影響(標準化係数):0.295
標準化係数とは、「ある変数(ここでは暫定調整係数や機能評価係数II)がほかの変数に比べてどのように影響しているかを比べるもの」で、数値が大きいほど影響度合いが大きいと言えます。
ところで、12年度の診療報酬改定以降、かつての「調整係数」を、「基礎係数」と「機能評価係数II」に置き換えていくこととなっているので、本来であれば、収入の変化に対して「暫定調整係数」「機能評価係数II」「基礎係数」の変化が、それぞれ同程度の影響を及ぼすはずです。
しかし現実にはそうなっていないことから、(1)機能評価係数IIの制度設計(2)個別病院の地域医療や複雑性・効率性向上などへの取り組み―の2点について不十分なところがあるのではないかと推測できます。
仮に(1)の「制度設計の不十分さ」の要素が大きな場合には、機能評価係数IIの設計をめぐる議論にも大きな影響を及ぼしそうです。
また、(2)については、地域医療への貢献や救急患者の受け入れなどに不十分な点があると見ることもでき、病院側にさらなる努力が求められると言えるでしょう。
また、厚労省は機能評価係数IIの変化に、個別係数がどの程度影響しているのかも分析しました。それによると、医療機関群によって若干の差はありますが、後発医薬品係数の影響度合いが大きく、カバー率係数・保険診療係数の影響は小さいことが明らかになりました。
機能評価係数IIは、▽保険診療▽カバー率▽効率性▽複雑性▽救急医療▽地域医療▽後発品―の7つの係数で構成されており、各係数の重み付けは同じ(7等分)です。
しかし、係数ごとに病院間のばらつき状況が異なっており、「後発品の使用状況は病院間でばらつきが大きく、後発品使用が多い病院と少ない病院で係数の開きが大きくなる」ために、影響の大小が出てくるのです。カバー率係数については、専門病院の多いIII群では、評価が底上げされてばらつきが小さいために、病院間の係数の開きが小さく、機能評価係数IIへの影響は小さくなります。
誤解を恐れずに言うならば、「カバー率係数を上げるための努力は、機能評価係数IIに反映されにくいが、後発品係数を上げるための努力は反映されやすい」のです。
この点については、伏見清秀委員(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科環境社会医歯学講座医療政策情報分野教授)や美原盤委員(公益財団法人脳血管研究所附属美原記念病院長)らが、「機能評価係数IIは、そもそも病院ごとの『頑張り』具合を評価するものだが、後発品はそれほど努力しなくても使用割合を上げられる。これが機能評価係数IIに大きく影響しているのはいかがか」と述べ、決して好ましい状況ではないと指摘しました。
前述のように「7等分」されている機能評価係数IIの各係数の重み付けについて、「病院の頑張り具合」をより適切に評価できるよう見直される可能性も出てきました。
これに関連して厚労省保険局医療課の担当者は、「カバー率は、病院の努力でアップすることが難しい、ストラクチャー的な指数・係数なので、地医療係数などほかのものとまとめることも可能かもしれない」と発言。伏見委員も「カバー率は別枠で議論してもよいかもしれない」と賛同しています。
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