激変緩和でプラス補正のDPC病院、重症患者を多く診ている可能性―DPC評価分科会
2015.6.17.(水)
2014年度の診療報酬改定で医療機関別係数の激変緩和の対象となったDPC対象病院のうち、係数が高く補正されるマイナス緩和対象病院では「医療資源投入量の多い患者」を、低く補正されるプラス緩和対象病院では「医療資源投入量の少ない患者」を見ている傾向があることが厚生労働省の調査で分かりました。
さらに、調査からは係数が高く補正される病院では「重症患者をより積極的に診ている」可能性が、逆に、係数が低く補正される病院では「軽症の患者割合が高い」可能性が示されています。
18年度で廃止される激変緩和措置の取り扱いを議論するに当たって、非常に重要なデータと言えそうです。
DPCの医療機関別係数は、「基礎係数+機能評価係数I+機能評価係数II+暫定調整係数」で計算されます。
暫定調整係数は、病院間で異なる「重症患者の受け入れ状況」を補正するために導入されたものですが、「DPC参加前の収入を保証する」機能もありました。12年度の診療報酬改定で「医療機関群」という考え方が導入されたことに伴い、「機能評価係数II」に段階的に置き換えられています(12年度に25%、14年度に50%、16年度に75%、18年度に100%置き換える予定)。
こうした係数改革によって係数が大きく変動し、収入(DPC病床の入院収入、以下同)も大きく増減する病院が出てきます。大幅な収入減は病院経営を不安定にし、地域医療にも影響が出てしまうため、報酬改定の前後で収入が2%を超えて増減する病院では、係数を補正する「激変緩和措置」が取られています。これにより、DPC病院では、改定前後の収入変動はプラスマイナス2%の幅に収まります。
ただし、激変緩和措置は暫定調整係数を財源に行われるので、18年度改定時には消滅することが予想されます。そのため、暫定調整係数消滅後の対策がDPC分科会で検討されているのです。
これまでに、「医療機関別係数が低くなってしまう病院では5疾病5事業などを積極的に行っているのではないか」などの意見が出されました。しかし、厚労省が行ったアンケート調査結果などからは「激変緩和措置でマイナス補正される病院、プラス補正される病院と、5疾病5事業などの実施状況との間には特段の関係はない」ことが分かりました。
一方、厚労省は全DPC病院を対象に、「包括範囲出来高実績点数」(医療資源投入量)と「DPC点数表の点数」(支払われる金額)の比率を分析しました。
この数値が1.00であれば、資源投入量と支払額が同じ「点数表で想定している平均的な患者」を診ていることになります。
また、1.00よりも高ければ、資源投入量の方が支払額よりも多い患者を診ていることを意味し、逆に1.00よりも低ければ、支払額の方が資源投入量よりも多い患者を診ていることになります。
この点について、厚労省の提示したグラフを読むと次のような状況になっています。
▽係数が高く補正されるマイナス緩和対象病院:平均1.06程度
▽係数が補正されない(激変緩和の対象となっていない)病院:平均1.03程度
▽係数が低く補正されるプラス緩和対象病院:平均1.00程度
つまり、係数が高く補正されるマイナス緩和対象病院では「医療資源投入量の多い患者」を、低く補正されるプラス緩和対象病院では「医療資源投入量の少ない患者」を診ている傾向があることが分かりました。
ここから、係数が高く補正される病院では「重症患者をより積極的に診ている」可能性が、逆に、係数が低く補正される病院では「軽症の患者割合が高い」可能性があることが分かります。もちろん、前者で過剰診療が行われているケースや、後者が極めて効率的な診療を展開していることも考えられるので、さらなる分析が必要でしょう。
なお、患者の重症度をより的確に評価するために、16年度改定ではCCP(「Comobidity:並存症、Complication:合併症、Procedure:手技)マトリックスが試行導入されます。
しかし、CCPマトリックスの対象はMDC01神経系疾患(脳血管疾患など)、04呼吸器系疾患(肺炎など)、05循環器系疾患(心不全、虚血性心疾患など)、06消化器系疾患、肝臓・胆道・膵臓疾患(結腸、直腸の悪性腫瘍など)、07筋骨格系疾患(リウマチなど)、10内分泌・栄養・代謝に関する疾患(糖尿病など)、12女性生殖器系疾患及び産褥期疾患・異常妊娠分娩(卵巣、子宮の悪性腫瘍など)などに限定されるため、伏見清秀委員(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科環境社会医歯学講座医療政策情報分野教授)は「CCPマトリックスによる抜本的な解決は時期尚早」との見方を示しています。
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