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DPCのI群、II群病院、精神疾患患者の医療保護入院なければ機能評価係数IIを減算―DPC評価分科会

2015.10.26.(月)

 2016年度の次期診療報酬改定では、DPCのI群病院とII群病院について「精神病床の有無」に加えて、「医療保護入院の有無」を勘案し、医療保護入院がない場合には機能評価係数IIの保険診療指数を減算する―。このような方向が、26日に開かれた診療報酬調査専門組織のDPC評価分科会で固まりました。

 中央社会保険医療協議会の了承を経た後に、具体的な減算幅などが検討されます。

 また機能評価係数Iについては、現行の評価方法を踏襲する方向も固まりました。

10月26日に開催された、「平成27年度 第6回 診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会」

10月26日に開催された、「平成27年度 第6回 診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会」

医療保護入院、受け入れなければI群、II群では係数を減算

 DPC制度では、急性期入院医療のうち入院基本料や検査・薬剤料などを包括した点数が設定されます。この包括点数に医療機関別係数を掛けて1日当たりの包括収入が計算されますが、医療機関別係数の中には、言わば「病院がどれだけ頑張っているか」を評価する機能評価係数IIが含まれます。

 機能評価係数IIは、現在(1)保険診療(2)効率性(3)複雑性(4)カバー率(5)救急医療(6)地域医療(7)後発医薬品―の7つの係数(指数)の合計となっています。14日に開かれた前回の分科会では、新たに▽重症患者への対応機能▽病院の診療実績の公開―に着目した係数を追加することや、各係数についていくつかの修正を行うことが固められました。

(1)の保険診療指数については、次の3つのいずれかに該当する場合、減算される見込みです。

(a)II群の実績要件 4 項目(診療密度や高度な医療の実施など)のうち、一定項目以上が大学病院本院よりも機能が高い大学病院分院(DPC 対象病院)を持つ大学病院本院

(b)II群の選定要件決定の際に外れ値に該当した大学病院本院

(c)精神病床を備えていない大学病院本院(I群病院)とII群病院

 これらは、「機能の一部を分院に移し、本院と分院の両方で高い基礎係数を取得するのは好ましくないのではないか」との批判に応えた見直し内容と言えます。

 26日の分科会では、(c)の「精神病床の有無」に加えて、「医療保護入院の有無」にも着目すべきか否かが議題に上がりました。14日の分科会で一部委員から「精神病床の有無だけでなく、精神疾患患者への対応という実績を見るべきである」との指摘を受けたものです。ちなみに、精神病床の有無はII群の要件とは関係なく、II群となった後の話である点には留意が必要です。

 医療保護入院とは、「家族の同意」を条件に、精神疾患患者に対して必要な治療を提供するために行われる入院で、自傷他害の恐れがある精神疾患患者を強制的に入院させる「措置入院」とは異なります。

 厚生労働省は「大学病院本院において、医療保護入院の有無に差はない」とのデータを提示し、「医療保護入院の有無」に着目した減算には慎重姿勢でした。しかし、山本修一委員(千葉大学医学部附属病院長)や池田俊也委員(国際医療福祉大学薬区部薬学科教授)らが「意識の高いI群病院は医療保護入院を受け入れている。しかしII群病院の中に『精神病床があればよいのか』と考え、形だけ精神病床を整備するところが出てきかねない」との懸念を示し、議論の結果、「医療保護入院の有無」に応じた減算をI群、II群病院に盛り込むことが決まりました。

カバー率指数、小規模な専門病院を救済するために下限値を設定

 また、この日は(4)のカバー率指数について「30パーセンタイル値を下限とする」との見直しを行うことも了承されました。

 カバー率指数は、いわば「どれだけ多くの診療科を設置しているか」を見るもので、診療科の多い大規模な総合病院で有利になります。このため「小規模な専門病院」に配慮(救済)する必要性があります。

 厚労省が分析を行ったところ、「118床未満の小規模な専門病院(106病院)では、特にカバー率が低い」ことが明らかとなり、これを救済することが提案されました。厚労省保険局医療課の担当者は「特にカバー率が低い病院のグループでは、カバー率指数の最大値が全体の30.9パーセンタイル値であることが判明した。グループの最大値程度まで指数を引き上げてあげる必要があろう」と説明しています。

小規模の専門病院のグループでは、カバー率指数が低いことがわかった(最大値が30.9パーセンタイル値)

小規模の専門病院のグループでは、カバー率指数が低いことがわかった(最大値が30.9パーセンタイル値)

 ところで、14日の分科会では▽指定難病の治療実績▽地域医療連携推進法人(いわゆる非営利ホールディングカンパニー型法人)―を機能評価係数IIで評価してはどうかとの意見も出ましたが、いずれも現時点では困難との結論に落ち着きました。

 なお、将来的な(2018年度の次々期改定以降)機能評価係数II見直しに向けて、▽医療法上の臨床研究中核病院▽2次医療圏ごとの救急車の受け入れ状況(主に、4回以上の断り率)―などを分科会で検討していくことも了承されています。

機能評価係数Iは、現行方式を継続

 DPCの包括点数は「10対1一般病棟入院基本料」をベースに設定されています。したがって、7対1一般病棟などについては、点数の補正をする必要があります。

 この補正を行うのが、医療機関別係数の中の「機能評価係数I」です。具体的には、次のような出来高診療報酬点数に着目した補正が行われます。

▽入院基本料の調整(7対1一般病棟や、10対1特定機能病院など)

▽入院患者全員に算定できる入院基本料等加算の上乗せ(総合入院体制加算1・2や、医師事務作業補助体制加算1・2など)

▽その他(検体検査管理加算)

 26日の分科会では「機能評価係数Iは、現行の評価方法を継続する」ことが了承されました。もっとも、中央社会保険医療協議会の議論で、入院基本料等加算の新設・廃止などが決まった場合には、機能評価係数Iにも反映されます。

 年明けの2月上旬に出来高の点数設定が行われるのを待って、機能評価係数Iの数値が設定されます。

 なお、医師事務作業補助体制加算については、猪口貞樹委員(東海大学医学部付属病院長)や山本委員から「特定機能病院(大学病院本院も特定機能病院である)では医師事務作業補助体制加算の算定が認められないが、消費増税などの影響で特定機能病院の経営は厳しい。加算の算定を検討すべきである」との要望が出されており、今後、中医協総会で議論される可能性もあります。

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