DPC改革の全体像固まる、内科に配慮したII群要件設定や、新たな機能の評価など―DPC評価分科会
2015.11.17.(火)
2016年度の次期診療報酬改定では、DPCのII群要件に内科の高度診療実績を加味してはどうか、また機能評価係数IIで重症患者をより多く受け入れる病院を評価してはどうか―。こういった中間とりまとめが、16日に開かれた診療報酬調査専門組織のDPC評価分科会で行われました。
小山信彌分科会長(東邦大学医学部特任教授)が親組織である中央社会保険医療協議会の診療報酬基本問題小委員会に近く報告し、その議論を経て、DPC分科会で更に詰めの議論行います。
中間とりまとめでは、DPC制度のうち(1)基礎係数(2)機能評価係数(3)算定ルール(4)退院患者調査―の4つの大項目について見直し案が整理されました。相当のボリュームがあるのでポイントを絞ってお伝えしましょう。
(1)の基礎係数については、何と言っても「II群の実績要件に内保連(内科系学会社会保険連合)の提唱する『特定内科診療』の診療実績」を加味することになりそうです。特定内科診療の研究にはGHCも協力しています(関連記事はこちら)。
特定内科診療は、内科系の領域において高度な医療技術が必要である▽重症脳卒中▽髄膜炎・脳炎▽急性心筋梗塞▽劇症肝炎―など25の疾患をさします。この疾患について「年間症例数」「DPC対象病床100床当たりの年間症例数」「総入院症例に占める症例割合」の3つの診療実績が、I群病院(大学病院本院)と比べて劣っていないかが判断されます(当初は「月間症例数」でしたが、外科系と合わせることになりました)(関連記事はこちら)。
なお、福岡敏雄委員(公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構倉敷中央病院総合診療科主任部長)は「特定内科診療の症例割合は、総入院患者数ではなく、内科系の入院患者数をベース(分母)に考えるべきではないか」と質問。これに対し厚労省保険局医療課の担当者は、「外科と内科にまたがる患者もいる。外科系患者をKコードでピックアップし、それ以外を内科系患者とする考え方もあるが、別の問題が生じかねない」と述べ、次期改定では「総入院患者数に対する割合」を指標とする考えに理解を求めました。
ところで高度な医療の実施については、外科系の3つの診療実績(手術1件当たりの外保連手術指数など)と合わせて6つの診療実績項目が揃うことになりますが、「6項目すべてがI群の最低値より高い」ことを求めるのか、「6項目のうち4項目、5項目がI群の最低値より高い」ことで良しとするのかは、今後、議論されます。
懸案となっていた「II群病院の地域における機能に着目した絶対値評価」や「基礎係数と機能評価係数IIの重み付けの見直し」は、データ不足などの理由から、次期改定での導入は見送られます。
(2)の機能評価係数のうち、いわば病院の「頑張り度合い」を評価する機能評価係数IIについては、次のような見直しが行われます。
▽各指数(係数)の重み付けは等分を維持するが、分散が均等になるように調整する(保険診療、救急医療、カバー率は除外)
▽I群とII群の保険診療指数について、「実績要件が分院よりも低いI群」「実績要件に外れ値のあるI群」「精神病床のない、医療保護入院または措置入院の実績がないI群およびII群」での減算を導入する
▽病院情報の公開に着目した指数(係数)の2017年度(平成29年度)からの導入に向けた検討を継続する
▽カバー率指数について、専門病院に配慮し下限値(30パーセンタイル)を設ける
▽「重症患者への対応機能(重症者対応)」という観点からの新指数(係数)を導入する(包括範囲出来高実績と点数表との比を表現する)
▽後発品指数の上限値を70%に引き上げる
▽地域医療指数の地域がん登録について、2017年度から義務化されることを踏まえて、17年度から廃止する
このうち「後発品係数」については、将来的に後発品割合の目標値が80%に引き上げられる(2018-2020年度の早い時期)ことから、今後、どのような評価方法が適切かを検討していきます。川上純一委員(浜松医科大学医学部附属病院教授・薬剤部長)は「急性期であるDPC病院で後発品割合の目標値が果たして80%でよいのだろうか?置き換えが進んでいない病院を厳しく評価することも考えるべきであろう」と提案しています。
なお、機能評価係数IIで臨床研究中核病院を評価すべきか否かについては、別途お伝えしたように、厚労省と一部委員との間で意見が食い違っており、今後、さらに調整が行われます(関連記事はこちら)。
(3)の算定ルールに関しては、「期間III(平均在院日数を超えた入院期間)を延長し、点数を引き下げる」ことが予定されています(関連記事はこちら)。
ところで、例えば「7月に包括対象の疾病で入院し、8月に出来高対象となる高額薬剤を使用した」というケースでは、7月の包括支払い分に遡って出来高算定となります。この場合、7月の包括レセプトを取り下げ、改めて出来高請求することになります。一方、例えば「7月に包括対象の疾病で入院し、8月に臓器移植を受けた』というケースでは、7月の包括支払い分には遡及せず、8月分から出来高算定となります。
厚労省はこうした不整合を見直し、「DPC対象病棟における請求方法は一入院で統一する」という提案を行いました。上記の臓器移植の例では、7月に遡って出来高算定となる見込みです。
また「再入院7日ルールの見直し」や「DICにおける症状詳記添付の継続」「D方式(入院初日にほとんどの費用を設定する仕組み)の継続・拡大」なども固まっています(関連記事はこちら)。
さらに「持参薬」については、現行どおり「入院契機傷病の治療に持参薬を持ちることは原則不可」というルールが継続されるほか、EF統合ファイルにすべての持参薬使用量を記載することになります(関連記事はこちら)。
この点について、美原盤委員(公益財団法人脳血管研究所附属美原記念病院長)からは「持参薬使用量の記載は事務の手間が大きい。せっかく記載しても、『持参薬使用が多いので、包括から除外しよう』という判断が行われたのでは、現場は適正な記載をしなくなるのではないか」との懸念が示されました。しかし厚労省保険局医療課の担当者は、「DPC対象病院には退院患者調査(EF統合ファイルもこの一部)に協力する義務がある。大変かもしれないが、適正な記載をお願いしたい」と理解を求めています。
また患者の重症度を評価するCCPマトリックスが、MDC01(脳血管疾患)、同04(肺炎)、同10(糖尿病)に試行導入される見込みです(脳血管疾患については、現時点では臨床家の了承待ち)(関連記事は こちら)。
なお、地域医療指数のうち「救急医療指数」について、現在の受入数に、「受け入れを断っている状況」を加味することが可能か、省内で検討が進められていますが、導入されるかどうかは未定です。
(4)の退院患者調査については、▽治癒・軽快の定義見直し▽EF統合ファイルへの「重症度、医療・看護必要度」の記載▽指定難病患者の記載―など、大きな見直しが予定されています(関連記事はこちら)。
このうち「指定難病」については、指定難病に関する治療を行った患者を記載するものではなく、「指定難病で医療費助成を受けている患者を記載する」ことが求められます。具体的には、指定難病の患者が、骨折や肺炎など、難病とは無関係の傷病で入院治療を行った場合でも、「この患者は指定難病で医療費助成を受けている」旨を記載することになります。厚労省保険局医療課の担当者は、「肺炎の治療だが、難病患者なので大学病院へ行ってほしい」というケースが生じていないかをチェックする意味もあると説明しています。
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