入院患者の重症度を評価するCCPマトリックス、糖尿病、肺炎、脳血管疾患に導入―DPC評価分科会
2015.10.26.(月)
2016年度の次期DPC制度改革では、「糖尿病」「肺炎」「脳血管疾患」の3疾患を対象として、入院患者の重症度を勘案するためのツール「CCPマトリックス」を試行導入する―。こうした方向が、26日に開かれた診療報酬調査専門組織のDPC評価分科会に報告されました。
DPC制度では、ある傷病に対して、どのような治療を行ったのか(例えば手術を行ったのかなど)、どのような副傷病があるのか、などに応じてコードが定められています。これを図示すると、1つの傷病に対していくつもの枝が伸びており、樹形図(ツリー図)などと称されます。
ところでDPCは、入院基本料や検査・薬剤などを包括評価した点数が設定されており、「患者の重症度を十分に評価しきれていないのではないか」との指摘があります。
米国などのDRG/PPSは「1入院当たりの包括支払い方式」であるため、患者の重症度によるコストのばらつきが医療機関経営を大きく左右することから、CCP(Comorbidity Complication Procedure)マトリックスという患者の重症度を評価する手法が導入されています。DPCでは、従前の調整係数が患者の重症度を評価する一定の役割を果たしていましたが、廃止に伴って「重症度を評価する別の手法」が待たれていました。
また、CCPマトリックスを導入すると、患者の重症度などに応じて異なるコストに着目し、診断群分類(膨大な分岐)を整理することも可能です。
こうした状況の下、16年度の次期診療報酬改定において、DPC制度にCCPマトリックスを試行導入する方向が固まっており、伏見清秀委員(京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科環境社会医歯学講座医療政策情報分野教授)を中心に制度設計に向けた研究が進められてきました。
今般、「糖尿病」と「肺炎」について研究結果が大筋でまとまったため、制度の概要が報告されたものです。なお「脳血管疾患」については分析途中ですが、次期改定ではこれも加えた3疾患についてCCPマトリックスが試行導入されます。
伏見委員の研究によれば、糖尿病とは肺炎では、次の項目が医療資源消費量(つまりコスト)に影響を及ぼしていることが分かりました。
▽糖尿病:医療資源病名の末梢循環合併症と多発合併症(ICD10コード4桁目が5または7)、手術の有無、インスリン使用の有無、定義副傷病の有無、年齢85歳以上など
▽肺炎:予定・救急医療入院など、手術の有無、人工呼吸器など、定義副傷病の有無、年齢・重症度など
これらの項目に加えて、臨床的類似性を勘案すると、糖尿病については96の分岐を5区分に、肺炎については96の分岐を11区分にまとめることができます。この5区分、11区分のそれぞれについて点数設定が行われます。
もちろん、更なる精緻化を行うため、具体的な区分などは今後変更される可能性があります。
ところで14日の前回会合では、II群要件のうち「高度な医療技術」に、内保連(内科系学会社会保険連合)の提唱する「特定内科診療」の診療実績を加える方向が了承されました(関連記事はこちら)。
ただし福岡敏雄委員(公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構倉敷中央病院総合診療科主任部長)から「特定内科診療に該当するか否かの1要素として、特定の薬剤使用などが含まれているが、これが『過剰な投薬』などを誘発するのではないか」との懸念もだされていました。
この点について内保連はさらなる調整を行い、主に次のような点を見直した、言わば「特定内科診療DPC版」をII群の基準として用いてはどうかと再提案されました。
(1)髄膜炎・脳炎について、条件とされていた「γグロブリン」を削除し、新たに「入院時JSC100以上」を条件に加える
(2)間質性肺炎について、条件とされていた「シベレスタットナトリウム」を削除
(3)急性呼吸窮(促)迫症候群、ARDSについて、条件とされていた「PGI2が注射薬に限定」との記述を削除
この見直し案に対して異論は出されず、DPC分科会として了承されました。今後、親組織である中央社会保険医療協議会の診療報酬基本問題小委員会の了承を経て、正式に導入が決定となります。
なお、II群要件の1つである「高度な医療技術」については、現在、外保連手術指数に基づく3項目があり、今回の特定内科診療を加えると6項目となります。このうち何項目を満たせばよいのか(厚労省では、4-5項目でよいのではないかとの考えも示唆、関連記事はこちら)については、今後、具体的なシミュレーションをした後に決定となる見込みです。
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