DPCの機能評価係数II、2018年度の次期改定で再整理―DPC評価分科会
2016.11.9.(水)
DPCの機能評価係数IIについて、2018年度の次期診療報酬改定で全体を「再整理」する―。
9日に開かれた診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会で、こういった方針が確認されました。
また医療機関群についても、要件や参加ルールとともに、名称(I群、II群、III群)の見直しも検討していくことになります。
目次
I群・II群・III群の体系は維持するが、名称や要件を見直す方向か
DPC制度については、2016年度の診療報酬改定附帯意見で、▼調整係数から機能評価係数IIへの置き換えに向けた適切な措置を講じる▼医療機関群・機能評価係数IIの在り方を検討する―こととされています。
厚生労働省は9日のDPC分科会で、当面(2016年度中)の検討課題として(1)基礎係数(医療機関群)の在り方(2)調整係数の在り方(3)機能評価係数II―を掲げ、それぞれについて次のような論点を提示しました。今年度(2016年度)内に方向を固め、来年(2017年)4月以降、個別事項について具体的な制度設計の議論が行われる予定です。
(1)基礎係数(医療機関群)の在り方
▼各医療機関群について、「基本的な診療機能に着目した群ごとの適切な基礎係数(出来高点数の平均値)を設定する」との趣旨を踏まえた現行の在り方をどう考えるか
▼医療機関群の要件設定や参加に係るルールをどう考えるか
(2)調整係数の在り方
▼置き換えとともに、激変緩和措置の対象病院についてのより詳細な分析が必要ではないか。また激変緩和対象病院への今後の対応をどう考えるか
(3)機能評価係数II
▼各係数の趣旨や導入目的に鑑み、全体の「再整理」が必要ではないか。その際、重み付けを行うことをどう考えるか
▼重症度係数について、実績や役割の検証が必要ではないか
▼医療機関間の機能分担・連携を推進するような機能評価係数IIの在り方をどう考えるか
(1)の医療機関群については、診療報酬支払のための分類というよりも、「病院の格付け」要素として受け止められている現実があります。小山信彌分科会長(東邦大学医学部特任教授)や井原裕宣委員(社会保険診療報酬支払基金医科専門役)は「折に触れて格付けではないと説明するが、なかなか受け入れられない」との現実を強調。また福岡敏雄委員(公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構倉敷中央病院総合診療科主任部長)は、「II群を目指すために、要件として評価されにくい診療科(例えば産科など)を縮小しているという話を聞くと複雑な気持ちになる」と訴えます。
この点について美原盤委員(公益財団法人脳血管研究所附属美原記念病院長)は「基礎係数の評価シェアが機能評価係数IIよりも大きいとの印象が拭えないために『II群を目指したい』との心情が働くのではないか」と分析します。
こうした意見を踏まえて、具体的な見直し方向を探っていくことになりますが、藤森研司分科会長代理(東北大学大学院医学系研究科・医学部医療管理学分野教授)は「各委員が、具体的な見直しモデルを持ち寄り、それに基づいて議論してはどうか」と提案しています。そこでは以前に検討された「絶対的な基準(現在はI群の最低値をクリアするという相対的な基準)」なども議論される可能性があります。
また「III群の細分化」なども議論される可能性がありますが、厚労省保険局医療課の担当者は「委員の意見を聞く限り、現在のI群・II群・III群の体系を維持しながら、要件などを見直していく方向になるのではないか」と分析しています。なお小山分科会長は、医療機関群が「格付け」になっている背景には「I群、II群、III群」という名称もあるのではないかとし、「名称の見直し」も検討する考えを示しました。
また(2)については論点どおり「激変緩和対象病院」の分析を進め、その結果を踏まえて議論する方向が確認されました(関連記事はこちら)。
機能評価係数II、後発品係数と重症度係数を中心に「再整理」を実施
(3)の機能評価係数IIについては、全体的な「再整理」をする方向が厚労省から示されました。現在の機能評価係数IIは、大きく「全DPC病院が目指すべき望ましい医療の実現」に向けた係数・指数(例えば保険診療指数や効率性指数など)と「社会や地域の実情に応じて求められている医療の実現」に向けた係数・指数(例えば地域医療指数など)に分けられており、この構造を維持しながら再整理を行うことになります。これに対する異論は出ませんでした。
ただし、当初からある6項目(保険診療、効率性、複雑制、カバー率、救急医療、地域医療)は、病院の基本的な機能を評価するものゆえ現在の体系を維持し、その後に導入された項目(後発医薬品、重症度)を中心に、基本的な考え方から見直していくことになりそうです。とくに2016年度改定で導入された重症度係数については「ゼロの病院もあるが、重症患者を受け入れていないわけではない」との批判が分科会でも出されており(福岡委員や山本委員)、どのように見直されるのか注目が集まります。
また井原委員は、「DPCの機能評価係数IIは読めば読むほどよくできていると感じるが、その分複雑で、説明に苦労する。例えば保険診療指数1つをとってもさまざまな視点が盛り込まれている」と述べ、複雑さを解消するために再整理が好ましいとの見解を表明。さらに「再整理をすることで重み付けができる可能性もある」と指摘しました。
重み付けについては、2016年度改定に向けた議論の中で「技術的に困難」と判断されましたが、厚労省保険局医療課の担当者は「要件を満たせば1ポイント、満たさなければゼロポイント」という評価体系の中で「要件の満たし方によって2ポイント、あるいは0.5ポイントといった評価」を拡大していくイメージを持っていることを述べています。
また山本修一委員(千葉大学医学部附属病院長)や金田道弘委員(社会医療法人緑壮会理事長兼金田病院長)は「地域における機能分化・連携を機能評価係数IIで評価する」ことを強く要望しています。特に金田委員は、▽地域医療連携を評価する診療報酬項目(診療情報提供料や退院調整加算など)の算定割合に応じた評価▽地域医療連携推進法人に対する評価―などの具体案も示しました。来年度(2017年度)以降、個別事項を議論する中で検討されることになります。
さらに、こうしたテーマに関連して池田俊也委員(国際医療福祉大学薬区部薬学科教授)は「医療の質の評価に関する研究が進んでおり、そうした視点からの機能評価係数IIも検討してはどうか」「例えば循環器疾患について高いパフォーマンスの病院があったとして、病院全体ではなく、病院の循環器疾患患者について評価を行うことも検討すべきではないか」と提案しています。来年度からの個別事項の中で検討される可能性があります。
ICD10(2013年版)に基づくコーディング、2017年4月以降もDPC事務局で実施
9日のDPC分科会では、ICD10(2013年版)への対応方針も固まりました。
2018年度改定以後、ICD10(2013年版)に沿ったDPCコードで請求を行うため、「現在のICD10(2003年版)に基づくコーディング」と「見直し後のICD10(2013年版)に基づくコーディング」の2つのデータが必要となります。前者は2018年度改定までの診療報酬を請求のために、後者は新DPC点数設定のために必要なのです。
この点について厚労省は、9月12日の前回会合で(1)2016年10月-2017年3月は、DPC事務局で2013年版のコーディングを行う(病院でのコーディングは2003年版のみ(2)2017年4月以降は各病院で2013年版のコーディングを行う(病院でのコーディングは2003年版と2013年版の2つ)―という提案をしていましたが、委員からは「病院の負担が重すぎる」との反対意見が出されました。
そこで今般、新たに(2)の2017年4月以降も「DPC事務局で2013年版のコーディングを行う(病院でのコーディングは2003年版のみ)」とすることが厚労省から提案され、了承されました。
ただし、2013年版のDPC事務局によるコーディング内容について各病院での確認作業は必要となります(2017年4月以降)。この点、厚労省保険局医療課の担当者は「確認が必要な部分を明示するなどし、病院の負担軽減に努める」ことを明確にしています。
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