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外来診療 経営改善のポイント 看護必要度シミュレーションリリース

DPCデータ用いた重症患者割合の測定、看護業務効率化につながる可能性—中医協・基本小委

2017.9.27.(水)

 2018年度の次期診療報酬改定に向けて、9月27日に開催された中央社会保険医療協議会の診療報酬基本問題小委員会では、下部組織の「入院医療等の調査・評価分科会」(以下、入院医療分科会)中間とりまとめの内容が報告されました(関連記事はこちら)。

 7対1病棟と10対1病棟で異なっている「重症度、医療・看護必要度該当患者割合」(以下、重症患者割合)の活用方法の在り方に関する検討を進めることや、重症患者割合の測定方法の検証、地域包括ケア病棟の機能に応じた評価、入退院支援の推進、データ提出の拡大などといった項目について、今後、さらに分析を進めていくことになります。

9月27日に開催された、「第186回 中央社会保険医療協議会 診療報酬基本問題小委員会」

9月27日に開催された、「第186回 中央社会保険医療協議会 診療報酬基本問題小委員会」

支払側が看護必要度非該当患者の再分析求めるが、診療側は実態の理解求める

診療報酬改定の内容は最終的には中医協総会で結論を得ることになりますが、入院医療については事前に「専門的な調査・分析」と「技術的な課題に関する検討」を入院医療分科会で行い、それをベースに中医協総会で議論します(2014年度改定から)。

入院医療分科会では、2016年度の前回診療報酬改定の効果・影響を、2016年度と17年度に分けて調査しており、今般、2016年度調査結果に基づく分析内容が「中間とりまとめ」として基本小委に報告されたものです。中間とりまとめの内容は既にメディ・ウォッチでもお伝えしており、例えば次のような内容が盛り込まれました。

(1)10対1病棟では重症患者割合が満遍なく分布しているが、7対1病棟では「25%以上30%未満」が飛び抜けて多く、重症患者割合の評価手法の違い(7対1では施設基準のカットオフ値として、10対1では加算の基準として活用)が影響しており、重症患者割合の「指標自体の妥当性や合理性」を十分に検証する必要がある(関連記事はこちら

7対1では、施設基準の規定されたカットオフ値である25%ギリギリの病院が圧倒的に多い(上段)が、10対1では、加算で段階的に評価されるため看護必要度該当患者割合は比較的2項分布に近くなっている(下段)

7対1では、施設基準の規定されたカットオフ値である25%ギリギリの病院が圧倒的に多い(上段)が、10対1では、加算で段階的に評価されるため看護必要度該当患者割合は比較的2項分布に近くなっている(下段)

 
(2)重症患者割合の測定方法について、現在は「重症度、医療・看護必要度」(A・B・C項目)が用いられているが、医療現場の負担を考慮して、「現在の測定結果」と「診療報酬請求区分(DPCデータ)を用いた測定結果」との検証(分布や相関など)を行う(関連記事はこちら
いくつかの診療報酬を組み合わせることで、看護必要度の項目との関連がより深くなることもあり、そういった工夫を随所で行う

いくつかの診療報酬を組み合わせることで、看護必要度の項目との関連がより深くなることもあり、そういった工夫を随所で行う

 
(3)地域包括ケア病棟の入棟患者について、「急性期病棟からの患者」と「自宅などからの患者」とを比較すると、後者のほうが医学的状態が不安定なことが分かっており、これをどう考えるか(関連記事はこちら
自宅などからの入院患者では、急性期後の転院・転棟患者に比べて、「状態が不安定で急性期治療を行っており、退院できない」患者の割合が高い

自宅などからの入院患者では、急性期後の転院・転棟患者に比べて、「状態が不安定で急性期治療を行っており、退院できない」患者の割合が高い

 
(4)回復期リハビリ病棟の入棟患者では、退院から1か月経過するとADLが低下してしまうという研究結果があり、これをどのように考えるか(関連記事はこちら
回復期リハビリ病棟の退院時から退院後1か月にかけて、ADLが低下してしまうという研究結果がある。詳細を見ると、通所サービス利用者でADL低下があることが明らかになっている

回復期リハビリ病棟の退院時から退院後1か月にかけて、ADLが低下してしまうという研究結果がある。詳細を見ると、通所サービス利用者でADL低下があることが明らかになっている

 
(5)回復期リハビリ病棟や療養病棟でもデータ提出を行っている病棟が相当程度あるが、現在のデータ提出項目は主に「急性期病棟」を対象としたものとなっている。この点をどのように考えるか(関連記事はこちら
様式1には急性期医療を把握する項目が多く、回復期・慢性期医療の把握項目は少ない

様式1には急性期医療を把握する項目が多く、回復期・慢性期医療の把握項目は少ない

 
(6)円滑な在宅復帰のためには、より早期の退院支援(入院前から、入院直後から)が必要と考えられる(関連記事はこちら

 
 こうした点を踏まえて、例えば(6)について「入院前から退院支援(入退院支援)を行う病棟をより手厚く評価してはどうか」といった報酬設計論議が今後の中医協で行われることになります。9月27日の中医協基本小委では、「今後の議論のために、さらに、このような分析を行ってほしい」といった要望が委員からいくつか出されています。

支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、(1)に関連して「重症患者にカウントされない患者の状況をより詳しく分析してほしい」と要望。さらに「A項目ゼロ点かつB項目ゼロ点の患者が4割弱入院している病棟が急性期としてふさわしいのか」「A・B・C各項目や、重症患者割合の基準値の妥当性も総括してほしい」とも求めましたが、これは入院分科会の所掌範囲を超え、今後、中医協総会などで議論すべきテーマと言えるでしょう。

なお入院医療分科会の武藤正樹分科会長(国際医療福祉大学大学院教授)や松本純一委員(日本医師会常任理事)は「A項目ゼロ点かつB項目ゼロ点の患者には、(予定)入院直後の患者、退院直前の患者、検査入院の患者などが該当すると考えられる。急性期病棟にもさまざまな状態の患者が入院している状況を理解してほしい」と説き、重症患者(現在であればA項目2点以上かつB項目3点以上、A項目3点以上、C項目1点以上)以外は、すべて「いわゆる社会的入院」(急性期医療の必要性がなく、ただちに退院できる患者)などというわけではないという点に理解を求めています。

 
また菊池令子専門委員(日本看護協会副会長)は、(2)の重症患者割合の測定方法について、「診療報酬請求区分による測定によって、看護職員の『業務負担軽減』につながる可能性がある」とし、検証の必要性・重要性を訴えました。ただし、現場の混乱なども考慮し「拙速な改変は避け、中長期的に見直していくべき」との見解も示しています。

グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンの調査分析によれば、多くの病院において「重症度、医療・看護必要度」の評価結果に相当程度のミスがあることが分かっています(関連記事はこちらこちらこちら)。入院医療分科会では、「重症度、医療・看護必要度」の生みの親とも言える委員から「重症度、医療・看護必要度は、日々の患者の状態を測定し、看護配置などに結びつける重要なデータである」との指摘があります。それほど重要なデータであれば精度を高める必要があり、そのためにも積極的に「診療報酬請求区分による測定結果」との比較検証を行う必要があると言えます。また現場の看護職員などからは「重症度、医療・看護必要度の測定、確認が大きな負担になっている」との切実な声も数多く寄せられており、「働き方改革」も踏まえた、業務負担軽減方策を早急に打ち立て、実施していく必要がありそうです。

  
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