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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

より高度なデータ精度向上と病床戦略で看護必要度ショックを乗り越える、GHCが病院向けセミナー開催

2017.2.23.(木)

 グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC、ホームページはこちら)は14日、「続・看護必要度ショック」と題した病院管理職に向けセミナーを開催しました。セミナーは「重症度、医療・看護必要度」のデータ精度向上(応用編)と病床戦略(同)の二部に分かれて行われ、データ精度向上をシニアマネジャーの湯浅大介、病床戦略を同じくシニアマネジャーの井口隼人が担当しました。

100床あたり1億円の減収

 第一部は「看護必要度データを活用した病院運営(応用編)」と題して、湯浅が医療・看護必要度データのデータ精度向上に向けた取り組みの注意点などについて解説しました。

GHCシニアマネジャーの湯浅

GHCシニアマネジャーの湯浅

 まず、7対1入院基本料の算定要件が16年度診療報酬改定で厳格化されたことを確認(関連記事『【動画】2分で分かる「看護必要度ショック」の乗り越え方』)。中でも、重症患者割合が重要なポイントであり、仮に7対1入院基本料を算定できなくなることで、100床あたり1億円の減収インパクトがあるとしました。

 重症患者割合の要件(7対1入院基本料は25%)を満たす上で重要なことは、医療・看護必要度データの精度を最適化することです(関連記事『看護必要度、「データ監査」に衝撃 相澤病院、教育と仕組み化で精度を大幅改善』)。重症患者割合の基準値を満たしていたとしても、その割合を測る医療・看護必要度のデータ精度に問題があれば、基準値を満たせなくなる可能性もあるためです。また、職種間連携も重症患者割合を満たすための重要な着眼点です。医療・看護必要度データは看護師が記録するものですが、データ精度の向上を重視するのであれば、医師からの指示、薬剤師による薬剤投与チェック、事務部門による請求データとの突合によるチェックなどが欠かせません(関連記事『「看護必要度改革」で7対1昇格へ、大垣市民病院の「全員参加の短期決戦」全記録』)。

 データ精度の問題は、(1)医療・看護必要度データの漏れ(2)請求漏れ―の大きく2つの視点で確認が必要です。(1)については「チェック時点の評価ではなく、0時からチェック時点までを振り返る」「電子カルテの詳細画面で実施した項目を必ず確認」「前日の評価をコピーしない」「前の勤務者の評価を『参考』にする」――の4つ。(2)については、「実施したすべての項目は必ず入力する」「医師への声がけ(「入力しているはず」はNG)も積極的に」――の2つあり、計6つのポイントを順守できれば、データ精度が向上する可能性は高いです。

「歯抜け」は係数にも影響

 医事サイドの確認も重要です。特に、継続して行われるはずの処置や検査に「歯抜け状態」の請求がある場合、それが請求漏れを示している可能性が高いと言えます。この場合、重症患者割合だけの問題ではなく、診療密度の低下を招き、当該医療機関の係数にかかわる問題にもなってくるので注意が必要です。実際、歯抜け対策をすることで診療密度が150点上がり、DPC病院のII群へ昇格したというケースも、過去のコンサルティング事例の中にはあります(関連記事『富山県立中央病院、「余裕のII群維持」までの経緯と対策』)。

 こうしたデータチェックは、医療・看護必要度データと請求データの突合によるA項目(医療的処置)とC項目(医学的状況)に限りません。B項目(患者の状態)であっても、例えば、座位保持に問題がある患者は、寝返りや起き上がりに問題がある可能性が高く、これら項目に記録がないのは不自然です。こうしたデータ上の矛盾点を確認して、データ精度をチェックすることもできます。

 他病院の取り組み事例も紹介。例えば、「院内での看護必要度セミナー“複数回”開催」「採点方法(いつ、誰が、どのように)のフローを病棟間で統一」「セロケースに入れた薬剤リストの活用」「適応薬剤を声に出した申し送り」などは検討したい参考事例です(関連記事『看護部だけでなく、医事課や手術室と連携することで看護必要度ショックを乗り越える』)。

 また、医師に協力をお願いしたいこととしては、(a)院内ルールに則った治療オーダー(b)口頭指示禁止(c)安静度もきちんとオーダー(d)ICUはモニター、輸液ポンプ、シリンジポンプだけでは基準値満たせず(e)クリニカルパス作成の推進(f)医療・看護必要度にも視点を置いた在院日数マネジメントの推進―の6つに着目すべきとしました。

市場規模3割縮小の医療圏も

 第二部は「データ活用による病院の経営戦略構築(応用編)」と題して井口が講演。病院経営を取り巻く厳しい環境分析と、その対策手法などについて解説しました。

GHCシニアマネジャーの井口

GHCシニアマネジャーの井口

 現在、高齢者人口の増加で医療費は膨張し続けていますが、病院経営は年々、厳しさを増しています。患者増で費用が上がり続ける一方、収益は頭打ち、あるいは減少という状況になっているためです。なぜでしょうか。こうした「収益頭打ち、費用増大」の要因を因数分解していくと、対策が見えてきます(関連記事『質を下げずに生産性高める増収対策とコスト削減活動の手順』)。

 収益伸び悩みは、3C分析(顧客、競合、自院)で確認していきます。「顧客」については、市場規模の頭打ち、制度厳格化というキーワードに着目。市場規模は「地域医療構想」の影響を大きく受けます。例えば、広島医療圏で見ると、現在と2025年の必要病床数を比較すると、高度急性期と急性期の病床は約3割の2600床が不要になると試算されています。広島医療圏の急性期病院にとって、市場は規模縮小に向かっていることが分かります。縮小の幅こそ違うものの、この流れは全国的なトレンドと言えます。

 制度の厳格化は、調整係数の廃止などいくつかありますが、影響のインパクトと今後の戦略立案の材料にするという意味では、医療・看護必要度に着目すべきです。データを活用した病床戦略を考える上で、最初の入口は「自病院の重症患者割合が“大幅に”上回るか」が一つの目安になります。データ制度はもちろん、今後、さらに要件厳格化が予想される中で、ギリギリの要件達成では、将来に不安が残り、中長期的な病床戦略を描けないためです。

 「競合」は当該医療圏のマーケットデータを確認し、病院全体の症例数や疾患ごとの症例数や地域シェアを確認することが有効です。その際、SWOT分析などを用いて、自病院の強みと弱みを明確化します(関連記事『自病院の強みと弱みは何か、データに基づく正しいSWOT分析の要点』)。その上で、例えば、プロダクトポートフォリオマネジメントの視点から、成長率が高くシェアも大きい「花形」と呼べる領域をいかに拡大し、成長率もシェアも小さい「負け犬」の領域からの撤退や立て直しを検討することが重要になります。

職員の生産性に着目し、計測を

 「自院」の視点では、(1)重症患者割合(2)平均在院日数(3)1日単価(4)手術室稼働率・時機状況(5)紹介(逆紹介)数・入院移行率―など各種経営指標から自院の急性期度合いを探っていきます。各種指標をベンチマーク分析した結果はどうか、また機能評価係数IIの効率性指数と複雑性指数の状況も確認しておきたいです。係数の内示がこのほどありましたが、いずれの指数も高ければ急性期度は高いと言えますが、その逆で在院日数が長く複雑性症例が少ない場合は、急性期度は低い状況と言えます(関連記事『調整係数廃止にDPC病院はどう対応?今からやるべき戦略的な機能評価係数II対策とは』)。

 こうした3C分析をしっかりと踏まえれば、自院が目指す方向性が見えてくるはずです。例えば、整形外科など特定の診療科の期間II超割合の高さが問題になっていたA病院では、在院日数短縮について粘り強く診療科との交渉に当たりました。その結果、3割を超えていた期間II超割合は2割を切る状況に。また、緊急入院の症例についても、連携パス強化により徹底的に在院日数をコントロールしたことで、6割を超えていた期間II超割合を3割程度まで引き下げることができました。

 ほかのB病院では、集患のための前方連携に問題があったとの結論に達し、徹底したクリニックへの営業展開を実施。周囲の診療所からの紹介症例のデータを出し、症例別に入院あり症例や手術あり症例を洗い出して、営業すべきクリニックへ営業攻勢をかけました。そのほかにも外来単価の分布や手術室の稼働状況をデータで確認して改善策に打って出るなど、十分な外部環境と内部環境の分析の上での事例を多数紹介しました(関連記事『手術室の稼働率80%、済生会福岡総合の強さの秘密を分析―済生会学会でGHCが講演』)。

 最後に、職員一人ひとりの生産性の重要さについても訴えかけました。費用が増大し続ける中で、人件費の最適化も避けては通れない経営課題の一つだからです。GHCでは、「医療の価値」という指標を重視しています。これは医療を提供するためのコストを分母にし、提供した医療の質を分子にした方程式で導きます。つまり、コストが低ければ低いほど、質が高ければ高いほど、医療の価値は高まるというわけです。同じように、業務効率を分母、収益性を分子とする方程式で高い生産性とは何かを追求し、この指標を向上させることは、「収益頭打ち、費用増大」の状況において重要な視点であると強調しました。

解説を担当したコンサルタント 湯浅 大介(ゆあさ・たいすけ)

yuasa 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのシニアマネジャー。
早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。グループ病院の財務分析、中央診療部門の業務改善、経営戦略室立上げ支援、コスト削減、病床戦略策定支援などを得意とする。諏訪中央病院(事例紹介はこちら)など多数の医療機関のコンサルティング、日経BP社「日経ヘルスケア」(掲載報告はこちら)などへの寄稿なども手がける。
解説を担当したコンサルタント 井口 隼人(いぐち・はやと)

iguchi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのシニアマネジャー。
筑波大学生物学部卒業。日系製薬会社を経て、入社。病床戦略支援、人財育成トレーニング、DPC分析、がん分析、臨床指標分析などを得意とする。東京医科大学病院(事例紹介はこちら)、済生会宇都宮病院(事例紹介はこちら)、さいたま赤十字病院(事例紹介はこちら)、広島市立安佐市民病院(事例紹介はこちら)、相澤病院(事例紹介はこちら)、旭川赤十字病院(事例紹介はこちら)など多数の医療機関のコンサルティングを行う。「週刊ダイヤモンド」(関連記事はこちら)など雑誌、テレビ、新聞などへのコメントも多数。
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