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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

質を下げずに生産性高める増収対策とコスト削減活動の手順、GHCが自治体病院向けにセミナー開催

2016.12.2.(金)

 グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)は29日、「大改定に備える!自治体病院・管理職向け実践セミナー~『収益横ばい、費用増大』への現場対策を徹底解説~」を開催しました。セミナーは大きく増収対策とコスト削減活動の二部に分かれて行われ、増収対策をマネジャーの冨吉則行、コスト削減活動を同じくマネジャーの本橋大樹が担当しました。いずれも医療の質を下げないことが大前提のもので、今後の厳しい医療費抑制時代に向けて、大きく生産性を高める具体的な手順が紹介されました。

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中長期戦略に外部・内部環境の正確な理解は必須

 第一部は「大改定に備える!『収益横ばい、費用増大』への現場対策を徹底解説」と題して、冨吉が(1)自病院の将来像を描く(中長期的戦略)、(2)人材を育成する(中長期戦略)、(3)今の収益を確保する(短期戦略)――の大きく3つのアジェンダについて解説しました。

GHCマネジャーの冨吉

GHCマネジャーの冨吉

 (1)についてまず、冨吉は自病院の機能を検討するアルゴリズムを紹介。現時点で7対1の急性期病院が、何をどのように検討することで、どのような意思決定をすべきかを示したものです。当初、「このアルゴリズムを見ただけではピンとこない人も多いはず」とした上で、直近の医療を取り巻く外部環境として、高齢者は増え続けているものの、それと比例して必ずしも入院患者が増えるわけではないことを指摘しました。

 続いて、院内のデータをしっかりと活用・検討して確認すべき内部環境の重点項目として、「医療連携」「入院医療の外来化」「入院初期の外泊(二泊三日以上)の有無」「手術室の稼働状況」「クリティカルパスの最適化」「重症度、医療・看護必要度」の具体的な精査ポイントを解説。再度、自病院の機能を検討するアルゴリズムを示し、「在院日数の短縮は可能か」「重症患者割合の基準は満たせるか」などアルゴリズムの分岐点で自病院がどの分岐に進むべきか、改めて精査すべきとしました。

医療連携を強化するための具体策とは

 人材育成については、いかにして問題解決型思考やロジカルシンキングができる人材を育成するかの事例などを紹介。その上で、そうした人材を組織横断的につなげるための一手法として、各部門から代表者を募って構成される病院経営に特化した企画・運営などを行う「経営戦略室」の役割や具体的な行動計画の立て方などについて解説しました。

 最後に、短期的に実現可能な増収対策について、「医療連携」「係数対策」「加算算定」などを紹介。例えば、医療連携では周辺のクリニックからの紹介率向上のためのアクションプランを解説しました。一例として、紹介実績があるクリニックを一定の基準で診療科別にスコアリングし、「このクリニックはこの診療科への紹介率が低い。なぜか」「このクリニックは全般的にある時期から紹介が減っている。なぜか」などとまずは課題を探り出し、課題を明確化した上で、その課題に対して定期的にクリニックへ挨拶に行く、課題がある診療科のPR資料を作成するなどの対策案をそれぞれ検討し、実行に移す手順などを説明しました。

コスト削減は院内共通言語

 第二部は「病院大変遷時代を生き抜くコスト削減戦略」と題して本橋がコスト削減をテーマに講演。本橋は、コスト削減は「節約ばかりで疲弊するもの」とのイメージを持つ人もいるかもしれませんが、必ずしもそうではない効率的かつ院内全体を巻き込め、次の改善活動につながる非常に生産性の高い改善活動であるとしました。

GHCマネジャーの本橋

GHCマネジャーの本橋

 第一に、コスト削減は生産活動をせずに利益を生み出すことができます。集患や増収に向けた業務を増やすことなく、今ある業務を見直すことによって、利益を生み出すことができる効率的な改善活動と言えます。

 次に、コスト削減の成果は、「A商品の購入単価を○円削減した」「B商品の購入数を○個削減した」「コスト削減活動で年間○万円の増益効果があった」などと分かりやすい数値にできるため、成果が目に見えやすいです。しかも誰もが文句の言いようのない共通指標なので、人や部署によって解釈にバラつきがなく、成功体験を院内全体で共有することができます。

 最後に思わぬ発見につながることもあります。例えば、検査機器のコスト削減をしていたら、他病院と検査方法に違いがあることが分かるかもしれません。つまり、コスト削減活動を通じて、予期せぬ業務上の問題点や課題が見つかり、それを改善することが、病院経営や医療の質を向上する上での重要なポイントにもなり得るのです。

 つまり、コスト削減活動は、効率的かつ院内全体を巻き込みやすく、かつ次の改善活動のヒントも眠っています。「節約ばかりで疲弊するもの」というイメージはコスト削減の本質からかけ離れているのです。

単独改善からグループ改善へ

 コスト削減は生産性の高い改善活動であるとした上で、病院単独のコスト削減事例と複数病院によるコスト削減手法を紹介しました。

 コスト削減をテーマに専門チームを組織しているある公立病院の事例です。この病院では、10領域78項目のコスト削減を検討。この中から3か月かけて優先的に取り組むべき項目を絞り込み、コスト削減活動を実施した結果、年間2000万円以上のコスト削減を実現させました。具体的には「液体酸素等の費用削減」についてで、ベンチマーク分析に基づくとともに、院内全体の協力を得ることで、大幅なコスト削減を、医療の「質」を下げずに実現させました。

 複数病院によるコスト削減手法については、医療材料のコスト削減について紹介。GPOは、医薬品、医療材料、医療機器その他のサービスを複数の病院が共同で購入する仕組みのことです。病院が単独でメーカーや卸業者と価格交渉するよりも、複数の病院で交渉した方がバイイングパワーが増し、交渉を有利に進められます。本橋は、「医療材料の卸業者は利幅が小さく、メーカーからの卸値(仕切り値)の改定がないと、病院からの値下げ要求に応えられないことが一般的だ。実効性を高めるには、メーカーとの直接価格交渉が必要で、そのためにもGPOの存在が重要」としました。

解説を担当したコンサルタント 冨吉 則行(とみよし・のりゆき)

tomiyoshi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。
早稲田大学社会科学部卒業。日系製薬会社を経て、入社。DPC分析、人財育成トレーニング、病床戦略支援、コスト削減、看護部改善支援などを得意とする。金沢赤十字病院(事例紹介はこちら)、愛媛県立中央病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う(関連記事「病院が変化の先頭に立つために今できるたった3つのこと」)。
解説を担当したコンサルタント 本橋 大樹(もとはし・だいき)

motohashi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。
米国ウィスコンシン大学経済学部卒業。外資系医療機器会社、医療系コンサルティング会社を経て、入社。医療データサイエンティストの育成や病床機能分化の策定、医療材料や委託コストの削減などコスト削減ソリューション全般を得意とする。足利赤十字病院(事例紹介はこちら)、津島市民病院(事例紹介はこちら)など多数の医療機関のコンサルティングを行うほか、コスト削減に関する社内の新規プロジェクトチームのリーダーを務める。
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