手術室の稼働率80%、済生会福岡総合の強さの秘密を分析―済生会学会でGHCが講演
2015.2.17.(火)
福岡県博多市内で開催された「第67回済生会学会」のランチョンセミナーで15日、GHCは「2025年に向けた医療変革時代の戦略的病院経営―済生会福岡総合病院の事例をもとに」と題して講演しました。
入院患者のスムーズな紹介・逆紹介を実現し、手術室の効率的な運営で国内トップクラスの福岡総合病院の実データを使って、同病院の強さの秘密を解説。分析に用いたのは、「コンサル視点が瞬時に分かる」をコンセプトにGHCが開発した病院経営支援ツール「病院ダッシュボード」です。
講演した米国グローバルヘルス財団理事長のアキよしかわは、同病院の手術室の稼働率が緊急手術を含めて79.2%(2014年現在)とほぼ80%で、全国平均の48.0%(同)との間に大きな格差がある点を指摘し、「われわれコンサルタントが真っ先に着目するのは手術室の稼働率。米国では、稼働率が80%を下回る手術室は何らかの問題があると言われている」と話しました。
手術室の稼働率にアキが注目するのは、「医療の価値」(質/コスト)を向上させる上でこれが重要な指標だというだけでなく、病院間での格差が大きい可能性があるためです。
病院経営に対する手術の収益インパクトは大きく、手術室の稼働率を高めることができるかどうかは収益の増減に直結します。さらに、稼働率を高めて得意な診療科の症例数を増やすことで、現場の医療従事者の修練度が高まれば、術後合併症の発症率低下など医療の質の向上も見込めます。
稼働率の向上には、手術室の最適で効率的な運用の見極めと、周辺の医療機関との円滑な連携の構築という、院内外での対策を両輪で進めることが欠かせません。
米国と日本では病院を取り巻く環境が大きく異なるため、米国と同じように日本の病院でも、手術室の稼働率が80%を下回るなら運用の検証が必要だとは言い切れません。ただ、このラインをほぼ維持している福岡総合病院と全国平均との間に30ポイント以上の差がある点にアキは着目し、日本の多くの病院が改善すべき課題を多く抱えている可能性を示唆しました。
同病院での手術室の稼働率は、当初から80%に迫る水準だったわけではなく、11年時点では65.6%でした。全国平均に比べると高水準ですが、この3年間でさらに15ポイント近く上昇したことになります。
同病院とGHCがこの間に稼働率向上のために取り組んだことは3つです。まず、手術部のモニタリングと病院ダッシュボードによる分析を徹底し、手術室でのアクションを見直しました。次に、診療科別にヒアリングを毎月実施するなど、手術室にとどまらず病院全体への働き掛けも展開しました。この2つが院内対策です。
最後に、院外対策となる医療機関との連携の見直しです。10年に設置した医療連携室を拠点にして紹介元医療機関への返書管理を徹底したり、紹介患者の状況を紹介元の医師に直接報告する「済生会は必ず電話するプロジェクト」を推進したりしました。その結果、ほかの医療機関から紹介された入院患者の占有率は、同病院では2014年現在、78.3%と全国平均(59.5%)を20ポイント近く上回っています。
さらに、容体が安定した患者の他院への転院率も30.7%と、全国平均(15.0%)のほぼ倍で、「ギブができているため、テークができている」(アキ)ことを示唆しています。
一方でアキは、「介護支援連携指導料」など、チーム医療を推進するための診療報酬の算定率が低い項目もある点を同病院の課題に挙げました。
GHCでは、医療材料の購入価格を比較分析できる「材料ベンチ」の機能を4月1日、病院ダッシュボードに新たに搭載します。さらに、“急性期病院らしさ”を維持・向上する上で重要な指標となる「重症度、医療・看護必要度」(看護必要度)のデータ精度を担保させるため、DPCデータと紐付けて検証する新機能や、グループ病院の本部向けの分析ツールのリリースを予定しています。
アキは、同病院のさらなるチャレンジを支えるため、これらの新機能を駆使してGHCでも一層の進化を遂げると宣言しました。
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