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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

自病院の強みと弱みは何か、データに基づく正しいSWOT分析の要点―DBユーザー会2015秋(2)

2015.10.20.(火)

 「改善ポイントが瞬時に分かる」をコンセプトにGHCが開発した次世代型病院経営支援ツール「病院ダッシュボード」のユーザー会が9月30日、東京都内で開催されました(関連記事『年間1.4億円のコスト削減を実現した諏訪中央・経営戦略室の軌跡』)。

 この日はユーザー事例の発表のほか、病院ダッシュボードの初級編と中級編も実施。中級編ではGHCの井口隼人マネジャーが登壇し、病院が「病院大再編時代」を生き残るため、病院ダッシュボードを活用し、データを用いて自病院の強みと弱みを正確に把握する「SWOT分析」を実施するためのポイントなどを解説しました。

GHCの井口隼人マネジャー

GHCの井口隼人マネジャー

急性期病院が生き残るための3つのポイント

 団塊世代が75歳以上に達し、社会保障財源が急増すると予測される2025年。国は社会保障財源を抑制する対策の1つとして、診療報酬改定や地域医療構想などによる病床機能の分化・連携を計画しています。14年7月時点で77.2万床あるとされる高度急性期および急性期病床数は、25年に53.1万床が必要とされるに過ぎず、と現在の病床数の約3分の1に相当する24.2万床が過剰になる見通しです(関連記事『高度急性期は13万、急性期は40万、回復期は37.5万床―社会保障制度改革推進本部』)=図表=

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 こうした病院大再編時代の中で、急性期病院はいかにして生き残ればいいのか―。井口は、(1)あらためて自病院のことを知る(2)現状の自病院と求められている姿を比較する(3)医療・経営の質の両面から改善を図る―の3つが現時点で手を打つべきポイントだとします。

 これら3つを実践する上で、他病院の改善事例を参考にしながら実践のポイントと手順を確認しました。(1)の「あらためて自病院のことを知る」では、「重症度、医療・看護必要度(看護必要度)」を全病棟で15%以上にする取り組みを行っているある病院の事例を紹介しました。

経営戦略の致命傷になるデータ精度

 急性期病院にとって、7対1入院基本料を算定できるかどうかかは、重要な経営課題です。例えば、300床の病院で7対1入院基本料と10対1入院基本料とを比較すると、年に約3億円の収益格差があります。GHCでは近年、7対1算定の重要なポイントとして看護必要度に着目しており、全病棟で看護必要度の基準値15%をクリアするための取り組みなどを支援しています(関連記事『「300床台で年に3億円規模」大幅減収を回避せよ 病院ダッシュボード体験会でデータ活用法を指南』)。

 看護必要度は、経営に与えるインパクが大きいことに加えて、データの正確性を担保できているかどうかが重要なポイントです。この病院では、全病棟平均の看護必要度が19.5%とみていましたが、GHCがDPCデータと看護必要度データを紐付けて正確な状況を確認したところ、実際の看護必要度は平均16.6%と約3ポイントの差があり、3病棟が15%の基準値に満たないことが精査によって分かりました=図表=

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 病院大再編時代における経営戦略の策定にあたって、データの正確性は極めて重要です。そのことは、自病院の内部環境に関するデータだけではなく、他病院や地域の医療ニーズなどの外部環境におけるデータでも同じことが言えます。

大再編時代も2.5億円の増収、マスタープランの威力

 400床規模のある病院では、「PEST」(政治:Politic、経済:Economy、社会:Social、技術:Technology)や「SWOT」(強み:Strength、弱み:Weakness、機会:Opportunity、脅威:Threat)などの分析フレームワークに則り、正確なデータで詳細かつ緻密な分析を実施し=図表=、今後5年間の経営戦略の軸となる「5年マスタープラン」の作成を支援しました。周辺病院や地域の医療ニーズなどを加味し、一般病床を削減する一方、回復期病床を新設するなどの内容で、これにより着実な増収とコスト削減を実現。その効果は年間2.5億円の増収インパクトがあると試算しています。

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 外部要因をしっかりと分析することで、(2)の「現状の自病院と求められている姿」を比較することができます。外部要因の分析は、主に病院ダッシュボードの「マーケット分析」の機能を用いて行いました。マーケット分析は厚生労働省が公表するデータを活用したもので、医療圏ごとに症例数やマーケットシェアなどを瞬時に確認することができます。

 この日のユーザー会では、マスタープラン作成に必要なマーケット分析の基本的な知識や操作方法、病院ダッシュボードで確認したデータの加工方法などについて解説。自病院の医療圏のデータを用いて、参加者がそれぞれ実際に自病院のマスタープラン作成につながる最初の分析を実施しました。

 GHCは10月14日、「マーケット分析」の中に「SWOT分析」を実装し、病院ダッシュボードのユーザーは医療圏ごとに疾患別の症例数やマーケットシェアを瞬時に確認できるようになりました。

 初級編では、病院ダッシュボードの1つひとつの機能の解説を聞きながら操作方法を参加者が体験。(3)の「医療・経営の質の両面から改善を図る」を実践するための活用方法として、病院ダッシュボードの「手術分析」を用いることで、病院の心臓部で高コストの手術室の稼働率を高める具体的な分析の視点や操作方法などを学びました(ユーザー会参加をご希望の方はこちら)。

初級編を担当したGHCコンサルタントの澤田優香

初級編を担当したGHCコンサルタントの澤田優香

連載◆DBユーザー会2015秋
(1)年間1.4億円のコスト削減を実現した諏訪中央・経営戦略室の軌跡
(2)自病院の強みと弱みは何か、データに基づく正しいSWOT分析の要点

解説を担当したコンサルタント 井口 隼人(いぐち・はやと)

iguchi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。
筑波大学生物学部卒業。日系製薬会社を経て、入社。病床戦略支援、人財育成トレーニング、DPC分析、がん分析、臨床指標分析などを得意とする。東京医科大学病院(事例紹介はこちら)、済生会宇都宮病院(事例紹介はこちら)、さいたま赤十字病院(事例紹介はこちら)、相澤病院、旭川赤十字病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う。「ダイヤモンドQ」(関連記事はこちら)など雑誌、テレビ、新聞などへのコメントも多数。
解説を担当したコンサルタント 澤田 優香(さわだ・ゆうか)

sawada 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルタント。看護師、保健師。
聖路加看護大学卒業後、集中治療室の勤務を経て、入社。看護必要度分析、看護業務量調査、DPC別診療科検討、病床戦略分析、マーケット分析などを得意とする。多数の医療機関のコンサルティングを行うとともに、社内のアナリスト育成や看護関連プロジェクト(看護必要度勉強会など)などでも精力的に活動する(東京医科大学病院の事例紹介はこちら)。
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